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【書評】小野田寛郎を英雄に仕立てた黒幕の狙いとは?

終戦を知らされず、戦後30年間フィリピン・ルバング島で戦い続け、1974年に日本に帰還した際に「帝国陸軍最後の軍人」「英雄」と称えられた小野田寛郎氏ですが…。無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが紹介しているのは、そんな「英雄誕生」の裏のシナリオ、そして黒幕の存在を指摘する一冊。たしかにそう考えると様々な動きが納得できると柴田さんも記しています。

小野田寛郎は29年間、ルバング島で何をしていたのか
齋藤充功・著 学研パブリッシング

齋藤充功『小野田寛郎は29年間、ルバング島で何をしていたのか』を、図書館の棚で発見した。ストレートなタイトルには惹かれるが、あの「ムー」の学研グループである。変な予感も(笑)。なにしろ筆者は、小野田さんに「ルバング島のことで今まで、誰にも話していないことがあるんだ……」と言われたそうだが、取材は一度も成功していないのである。そこで周辺取材と、二次資料(怪しげなものもある)を用いて理論(想像)を展開している。前半でもういいやと思ったが。後半のフィリピンの金塊、GOLDWARRIORS、マル福金貨といった金貨のラビリンスは迷走か瞑想か妄想か

戦後約30年もの間、ルバング島のジャングルに潜み「残留諜者」として最後は三人の部下とも死別(一人は投降)しながらも、救出されるまでの一年余をたったひとりで闘い「命令を守り抜いた」小野田は、「帝国陸軍最後の軍人」であり「現代の英雄」と称えられた。1954年以降、捜索隊は三度もルバング島に訪れているが、小野田の発見には至らなかった。ところが、1974年2月20日、当時24歳の自称・冒険家の謎の青年・鈴木紀夫が小野田との接触に成功。3月9日、小野田に任務の「命令解除」を伝達するため救出隊が島を訪れ、日本への帰国が実現する。絵に描いたように完璧な「英雄誕生」の経過であった。

小野田救出劇、その後のフィリピンと日本政府の対応、一連のセレモニーや帰国後の小野田フィーバーには、綿密に練り上げられたシナリオがあったのではないか。鈴木という自称冒険家に密かに接触し、小野田救出のため最大限利用した黒幕が存在していたのではないか。無名の青年を利用することによって、救出劇をよりドラマティックに演出できた。鈴木の行動にまつわる謎の数々は、背後にフィリピン軍の関係者や日本政府関係者、そして黒幕の介在があったとすれば。小野田発見からあとのなにもかも、驚くべき手回しの良さは、水面下で綿密な打ち合わせがあったと考えたほうが、その多くが納得できる。

著者の結論。

小野田の任務とは何だったのか。それは「軍によって隠された軍資金」を守ることだったのではないか。そして、その軍資金とは「マル福金貨」と呼ばれるゴールド・コインだったのではないか。

小野田の実像は残留諜者としての任務を全うした、命令に忠実な、紛うことなき「帝国軍人」であった。(略)と同時に、フィリピンの金塊という「亡霊」に自らの人生を翻弄された、悲劇の軍人だったのではないかと思う。

救出+英雄化劇にディレクター(黒幕)がいた説には同意したいが、フィリピンの金塊説はナントモ。筆者の、小野田さんに対する敬意はないに等しい記述が不快でもある。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

 

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