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いざ異次元の世界へ。信州・修那羅峠で不思議な石仏に出会う旅

信州の魅力をあますところなく伝えてくださる無料メルマガ『安曇野(あづみの)通信』。今回は、知る人ぞ知るスポット、長野県青木村と筑北村の境に位置する修那羅(しょなら)峠で出会える、一風変わった不可思議な仏像たちが紹介されています。

信州・修那羅峠の異形の神々

信州・修那羅峠は、上田市から青木峠を越え旧四賀村を経て、松本市に至る国道143号線、青木村の田沢地区の集落を抜け、登り勾配がきつくなるあたりから、右手に分かれ、旧坂井村や麻績村へ抜ける道路の最高所にある。逆にたどれば、長野道の麻績インターを降り、修那羅峠、青木村へ至る道を、案内表示に従って右手の道を登って行く、駐車場までインターから20分ほどか。上田からでも1時間あまりで到達出来る。

修那羅峠の石神石仏は、約標高1,000メートル、安宮神社というお宮の境内、左手裏山に、700~800体が並んでいる。ほとんど30~40センチ程度の小さなもの。これは人の背に乗せて、ふもとから運び上げたためか。儀軌(ぎき―石仏等を刻む上での一定の規範)からはずれた特異な像異形の神が数多い。県中央の中信地区でも松本盆地・安曇野には道祖神、白馬には百体観音などが多い。それらいわゆる石仏を見慣れた目には、ここの神仏の世界はまさしく異様異次元の世界のもののようにさえ見える。

なんと言ったらいいだろうか、石仏石神というたぐいの範疇にはとても収まりきらないものばかりである。奇妙キテレツ、摩訶不思議、ユニーク。例えば、ササヤキ明神など意味するものが良くわからないもの。そうかと思えば、そのものズバリ金神、一粒万倍神や、よほど貸した金を返して貰えなかったのか催促金神なんていうユーモアやペーソスを誘うものもある。またとても日本の神仏とは思えない南洋諸島やアフリカのものをイメージしてしまうものもある。

信州石造物研究会の金子文平さんは、「素人の彫刻が多かったということも考えられるが、もう一つ儀軌を積極的に無視してやろう、という気慨もあったのではないかと思われる。従来の造形にとらわれない、また村落共同体の規制下にない自由な発想・造形が修那羅の石神仏像に投影されているように思う」と、その著書の中で述べている。

これら石像、自由な発想の産物なのであろうが、江戸時代末期のチョンマゲ姿の農民の作とはどうにも結びつかないと感じる面もある。ともあれ、修那羅には、土俗信仰のすべてがあるともいわれる。心にしみ入るよう美しい像・稚拙ながらほのぼのとした気分にさせてくれる姿、そして恐ろしさの中にもユーモラスな情緒をもつ像…。人によっていろいろな見方が出来るし自分の気にいった像を心ゆくまで鑑賞したり、同じ願いをこめ祈ることもできる。修那羅が多くの人を引きつけてやまないのはそんな理由によるのだろう。

小冊子の取材で、初めて訪ねてからもう30年近く経つ。それ以来何回となく訪れているが、その度に新しい魅力の発見があるし、こんな像今まであったかななど、新しい像を見つけることもあるなど興味尽きない。

 

『安曇野(あづみの)通信』

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発刊以来10年、みすずかる信濃はアルプスの麓、安曇野を中心に信濃の光と風、懐かしき食べものたち、 野の花、石仏、植物誌、白鳥、温泉、そしてもろもろ考現学などを、ユニークな(?)筆致でお届け!

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