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アメリカ在住のジャーナリストが感じた「安倍政権」終わりの始まり

森友学園問題で大揺れに揺れる日本の政界。首相が「同学園とは無関係」と強調すればするほど国民の怒りが増幅しているようにも見えますが、そもそもなぜここまで安倍政権への信認が揺らいでいるのでしょうか。アメリカ在住の作家でジャーナリストの冷泉彰彦さんは、自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』でその原因を探るとともに、安倍政権がこの危機を乗り越えるために真剣に取り組むべき二つのポイントを記しています。

動揺する安倍政権、カムバック策はあるのか?

籠池氏の動静とか、その周辺に見えるジャーナリスト(元しばき隊?)とか、アメリカから見ていると全く興味が湧かないのですが、政治的には色々と大変なことになっているようです。

様々な報道を総合しますと、官僚機構は首相周辺の意向忖度して動いているのでしょうし、そうなると首相としては「迷惑な話」だという感じを持っているのかもしれません。そうだとしても、十分に理解はできます。

ですが、ここへ来てどうして、世論の安倍政権への信認が揺らいでいるのか、この点に関する重心の低い見極めをする必要はあると思います。それはイデオロギーの敵味方という区別で「味方」だということになると、周囲も含めて自浄作用が働かない世論はそこに統治能力としての脆弱性を見ているからです。

例えば、10年前の第一次政権崩壊の際のことをもう一度確認しておくことにしましょう。2007年の状況としては、経済がかなり傾いていたわけです。小泉政権の好景気はどこかへ消えつつあり、国民の間には格差社会への不安や怒りがマグマのように「うごめいて」いました。

にも関わらず改憲などのイデオロギー的な動機による政策を重視していた当時の政権に対しては、世論は「優先順位が違う」という認識を持っていたのだと思います。勿論、現在もそうですが、安倍さんの周囲との関係を「お友達」云々と呼んで罵倒するやり方は、少々汚らしいと思っていますが、とにかく、世論の中に出てきた違和感がどんどん拡大する中で、政権として前へ進めなくなったということだと思います。

10年後の現在、危機ということではまだ「そこまで深刻」ではないようにも思えますが、構図としては似通っています。アベノミクスは4年近く続いているが、結局のところ「頭脳労働を含む産業の国外流出は止まりません。そして、海外で評価された日本企業の株価が「円安なら円建てで膨張する」だけのメカニズムで続けてきた株高についても、そろそろ終わりの始まりが見えてきているわけです。そんな中、改めて経済の先行きを見ると、不安が大きいわけです。

東芝が苦境に立っている、そうなると海外で損をしてそれを円に倒すと大変な数字になるわけで、アベノミクスのマイナス効果が見えてしまう、あるいはトランプに無茶を言われる、そうすると国内雇用は更に失われる…色々な動きがかなりネガティブになってきています。改めて、産業構造の「あるべき姿死守していかなくてはならないものの確認が必要な時期に入っているのではないでしょうか。

そんな中では、やはりイデオロギー的なものを動機とした運動や政策は、「今、そんなことをやっている場合なのか?という批判を浴びるのも当然だと思います。

ここを乗り切るために、安倍さんとしては、二つの点に留意していただきたいと思います。

一つは、戦後日本の「国のかたちへの反乱意図を持った思想と決別し、清和会をホンモノの保守本流に脱皮させるぐらいの覚悟を見せて頂きたいです。

もう一つは、頭脳労働高付加価値産業の空洞化は止めて頂きたいし、国内の人材の競争力を国際的な労働市場の中で高めるために、国際化と生産性向上を軸とした構造改革を、「抵抗勢力は公職追放する」ぐらいの覚悟で進めていただきたいと思います。

この二つに真剣に取り組むのであれば、籠池も加計も小さなエピソードとして、世論は許してくれるのではないでしょうか。

 

 

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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