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【書評】女子高生アイドルが東大生に「知力勝負」で勝てた理由

NHKのEテレ人気番組「すイエんサー」。アイドルやモデルなどからなる「すイエんサーガール」が台本も打ち合わせもない状態で、番組から出される無理難題に思考をめぐらせて答えを見つける番組なのですが、なんと、このすイエんサーガールたちが東大生に知力勝負で勝ってしまったという驚きの結果が出たそうです。無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長、柴田忠男さんが紹介する1冊に、この知力上昇の秘密が記されていました。

女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか?
村松秀・著 講談社

二人暮らしだから、夕食のカレーは四食分作って、翌日の昼に残ったカレーを食べる。これがなぜかうまい、ような気がする。九州大学で開発した味覚センサーという装置を使って一日目、二日目のカレーの、酸味、うま味、塩味、苦み、渋みの5項目を測定したら、目立つ差がなかったという。

ところが複数の被験者たちは、こぞって二日目のカレーのほうがうまいと言う。それは煮崩れなどでトロトロとした状態になっていて、コクがでているので、酸味、うま味などにあまり差がなくても、よりおいしさを感じやすくなっているということだった。味覚センサーの「コク」値も二日目の方が高かった。

では、一日で、二日目のようにうまいカレーを作れないか。トロ味のついたカレーを作ればいい。ジャガイモは乱切りではなく、すりおろす。一日目のカレーはできたてアツアツを食べたので、味覚がきちんと働かなかった。二日目のカレーは冷めたものを温め直すので、それほどアツアツにしないのが普通だ。温度を上げすぎない。こうすれば、一日目にして二日目のカレーができる。

へー、そうなんだ。このことを、村松秀『女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか?』というあざといタイトルの本で知った。ここでいう女子高生アイドルは、NHK・Eテレで2009年からレギュラー番組として放送中の「すイエんサーでリポーターを務める女の子たちだ。

モデル、アイドル、女優などで活躍する彼女らは、女子中高生たちにカリスマ的人気を誇っているそうだ。かなりゆるめの科学(?)エンターテインメント「すイエんサー」は小中高生を中心に、その親世代まで深く浸透している番組だという。著者はこの番組で7年間にわたりプロデューサーを務めた。

「すイエんサー」がテーマとするのは、日常生活の中にある素朴な疑問や気になっていることである。例えば「バースデーケーキのロウソクの火を一気に吹き消したい」「茶柱をいつでもたてたい」「ジェットコースターの恐怖を簡単に克服したい」「針の穴に糸をスーッと簡単に通したい」「ゆで卵の黄身をピッタリど真ん中にしたい!」とか、どうでもいいことを真剣に考える

すイエんサーガールたちには台本がなく打ち合わせもない。ガチンコのロケで無理難題を解かなければならない。ひたすら無駄にグルグル考える。この右往左往ともいうべき「グルグル思考」を鍛えなければならない。その結果、必ず、思考力、発想力、実践力を束ねた、生き抜く力、すなわち「知力」が身につくはずである、という。プロセスこそが科学である。

で、実際に知力がついてしまった。番組内企画で実施された「知力の格闘技!」シリーズで、すイエんサーガールたちは東大、京大など名門大学の理系学生たちとの知力バトルで、なんと5勝4敗と勝ち越す。驚愕の事実である。その実況中継の章はじつに面白く、スリリングで、感動的である。すごいぞ、女子。

ひたすら「グルグル思考」せよ。それを担うのは、疑う力、ずらす力、つなげる力、寄り道する力、あさっての方を向く力、広げる力、笑う力である。というが、いかにも無理やりこじつけっぽい感じもあって、自慢の多い文章がおいしくないが、面白かった。早乙女ケイ子のイラストが超弩級にいい!

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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