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安倍総理と会談、プーチンは「北朝鮮問題」をどう捉えているのか?

先日、ロシアを訪問した安倍総理。プーチン大統領との会談では、北方領土での共同経済活動の実現のために5月にも特別調査団を派遣すること、航空機を使用した元・島民の墓参りの実施などで合意したと発表されましたが、気になる「北朝鮮情勢」についての話し合いは持たれたのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんが、変化しつつある日ロ関係と、北朝鮮問題に対するプーチン大統領の立ち位置を分析しています。

安倍総理訪ロ、プーチンと何を話したの?

皆さんご存知と思いますが、安倍総理は4月27日モスクワでプーチンと会談しました。何を話したのでしょうか?

まず、日ロ関係のこれまでを、簡単に復習しておきましょう。安倍さんが総理に返り咲いたのは、2012年12月。総理は、「私が北方領土問題を解決する!」と強い意欲を持っておられる。それで、安倍さんが総理になられた途端、日ロ関係はものすごい勢いで改善されていったのです。

しかし、2014年3月の「クリミア併合」ですべてが変わってしまいます。日本は、アメリカ主導の「対ロシア制裁」に参加した。日ロ関係は、もちろん悪化しました。その後も、日ロ関係はどんどん悪化し続けていきます。なぜ?

制裁に参加した日本は、ロシアと経済協力の話ができなくなった。それでも、いろいろな次元で、日ロの閣僚や官僚が会うことがある。すると日本側は、「島いつ返してくれますか!?」と、毎回開口一番言う。ロシア側は、「日本はロシアに制裁していながら、『島返せ!』とは、どこまで自己中心なのだ!」と非常に憤っていたのです(強調しておきますが、これは、「ロシア人が憤っていた」という話です。私、北野の個人的意見ではないので、クレームしないでください)。

たとえば、メドベージェフ首相は15年8月、択捉島を訪問した。それで、日本政府が抗議した。すると、ロゴジン副首相は、ツイッターに、「(日本人は)ハラキリして落ちつけ!」と書いた。「なんという無礼な副首相…」と思いますが、ロシア政府高官の日本に対する苛立ちは、こんな感じでした。「制裁しつつ、ちゃっかり『島返してよ!』といっても、無理だよな……」。

この当たり前の事実に日本政府が気づいたのは、16年5月のこと。ソチでプーチンに会った安倍総理は、「8項目の協力計画を提案。「お! 今回は、金儲けの話を持ってきたか」。ロシア側は、日本の変化を敏感に感じ取りました

そして、プーチンが2016年12月に来日。これをきっかけに、日ロ関係は大きく好転しています。なんというか、「生活レベル」で「日ロ関係改善」を感じるのです。たとえば、カフェに座っていたら、70歳ぐらいの知らないおばあさんが、「私もうすぐ日本にいくのだけど、質問してもいいかしら?」と話しかけてくる。

娘が今年9月に入学する予定の小学校の校長先生が、突如「日本視察団」に招待される。戻ってきた校長先生は、私の妻に、「日本自慢」を一時間ぐらいしていました。「生物学博物館」で、「日本に行ってきた報告会」があり、招待される。テレビをつけると、「日本のリサイクル技術は、ロシアより少なくとも30年は進んでいる」と褒めている。

とにかく「あらゆるところで日ロ関係がよくなっているのを感じます。これも、安倍総理の「決断のおかげですね。

今回の訪ロで話し合われたこと

ここまでの大まかな流れがわかったところで、今回の話にいきましょう。まず、ロシア側がもっとも求めている「経済協力」。「派手さ」はないものの、少しずつ進んでいるようです。

日露、医療やエネルギーなど経済協力22件合意

読売新聞 4/28(金)0:47配信

 

日本とロシアの両政府は27日、日露の官民などによる製薬・医療やエネルギーなど22件の経済協力の具体化で合意した。昨年12月に両国が一致した経済協力の具体化に向け、民間企業を中心とする事業が動き出す。

22件の経済協力の具体化」だそうです。どんな内容なのでしょうか? 毎日新聞4月28日を見てみましょう。

医療分野では、三井物産がロシアの製薬会社「アールファーム」の株式約10%を今秋取得することで合意。医薬品製造を支援する。都市開発分野では南部のボロネジで、渋滞緩和に向けて自動で信号を制御する日本企業のシステム導入に向けて協力するほか、ウラジオストクで日本のICT(情報通信技術)を活用して都市環境整備を支援する。また、ロシアの産業の多様化・生産性向上の分野では、ロシアの自動車部品企業や素材産業向けの人材育成を支援する。

 

一方、エネルギー開発分野では、東京電力福島第1原発の廃炉を含む原子力分野での協力の具体化を引き続き検討することで合意した。

実に多様ですね。ロシアというと、すぐ「エネルギー」が頭に浮かびます。エネルギーもいいですが、それで儲かるのはごく一部。上のように、「ロシア国民の生活改善に貢献できる協力がいいですね。

ちなみにロシアは、中国のように、「日本からの支援で○○が建てられた」ということを隠したりしません。むしろ「自慢」する。中国や韓国と違い、「反日教育反日感情もありませんので、ずっとやりやすいことでしょう。(汚職はありますが…)。

プーチンは朝鮮半島有事を警戒する

もう一つ重要な問題があります。そう、北朝鮮。プーチンは、「北朝鮮問題をどう捉えているのでしょうか?

日ロ首脳、北朝鮮に自制要求=プーチン氏「対話継続を」

時事通信 4/28(金)5:44配信

 

【モスクワ時事】安倍晋三首相は27日のプーチン・ロシア大統領との会談で、北朝鮮の核・ミサイル問題に対処するため国連の場も含めて協力していくことで合意した。北朝鮮に対し、国連安全保障理事会の決議を完全に順守し、さらなる挑発行為を自制するよう求める。首相は拉致問題解決に向けた日ロ連携も呼び掛けた。

 

会談後の共同記者発表で、首相は「ロシアは国連安保理や(北朝鮮問題に関する)6カ国協議の重要なパートナーだ」と強調。プーチン氏は、トランプ米政権が北朝鮮への武力攻撃も辞さない構えを示し、日本もこれを支持していることを念頭に、「落ち着いて対話を続けることが必要だ。6カ国協議の再開は共通の課題だ」と述べ、外交努力の継続を訴えた。

基本的にプーチンは、「朝戦争反対!」。そして、「6か国協議再開を主張しています。

ロシアの立場は、中国と似ています。まず第1に、ロシアは、「北朝鮮の核を『脅威』と認識していない」。なぜ? 北朝鮮のターゲットは、アメリカ、日本、韓国だからです。ロシアや中国は、「北朝鮮が攻撃してくるとは1%も考えていません。だから、「気楽」なのです。

第2に、ロシアは、「金正恩政権が倒されて、朝鮮半島がアメリカの同盟国・韓国を中心に統一されることを恐れています

トランプになっても、相変わらずロシアの「アメリカ不信は強い。ロシアは、「アメリカは、西と東で、ロシア包囲網を強化している」と考えている。「西」というのは、欧州のこと。アメリカは、着々と「反ロシア軍事ブロック」NATOを拡大してい
ます。もともとロシアの勢力圏にあった東欧を吸収し、バルト三国を加え、ついにウクライナやグルジアも飲み込もうとしている。

東を見ると、日本や韓国のMDシステムを強化することで、「ロシアの核戦力を無力化」させようとしている。ここに、日ロの認識のギャップがありますね。日本は、「MDは、対中国、対北朝鮮だ」という認識でしょう。しかし、ロシアは、日本というより、背後にいるアメリカを信じていないので、過敏な反応になります。そして、アメリカが北朝鮮を武力で打倒し、韓国を中心に統一されることに反対である。それで、「6か国協議」というのですね。これは、事実上、「現状維持で行きましょう」と言っているのと同じです。

朝鮮半島問題がどうなるかわかりませんが、ロシアの協力はあまりアテにならないようです。

日ロ関係改善は、「大戦略レベル」の話

日ロ関係が改善されている件について、日本では、

といった懸念が聞かれます。もう一度、「なぜロシアと仲良くした方がいいのか?」基本を確認しておきましょう。

2012年11月、中国は、ロシアと韓国に「反日統一共同戦線」の構築を提案しました。内容は、皆さん、暗記しておられますね?

  1. 中国、ロシア、韓国で、「反日統一共同戦線」をつくろう!
  2. 中ロ韓は、一体化して、日本の領土要求を断念させよう。
    断念させる領土とは、北方4島、竹島、そして尖閣・「沖縄】」である。(日本に【沖縄】の領有権はない!と宣言)。
  3. 「反日統一共同戦線」に、「アメリカ」を引き入れよう!

●必読絶対証拠はこちら→反日統一共同戦線を呼びかける中国

まとめると、中国は、アメリカ、ロシア、韓国で「反日統一共同戦線をつくり尖閣、「沖縄を奪おうとしている。これが、中国の戦略なのですから、日本はそれを「無力化」するために、「逆のこと」をすればいい。つまり、

韓国については、「アメリカ経由」で関係を保っていけばいいでしょう。

つまり、「アメリカとの関係強化」「ロシアとの関係強化、「日本の大戦略の二本柱」なのです(インドもいれて「三本柱」ともいえるでしょう)。実際、安倍総理の尽力により、日米関係、日ロ関係は良好です。それで、中国は昔より大人しくなっているでしょう?

日米関係、日ロ関係は、個別案件も大事ですが、大戦略レベルでみることが何万倍も大事です。そして、もちろんインド、欧州、フィリピン、ベトナム、その他東南アジア諸国などとの関係も大事。

いまからちょうど80年前の1937年、日中戦争が始まりました。中国は、アメリカ、イギリス、ソ連から支援を受けていた。つまり日本は、アメリカ、イギリス、ソ連、中国と戦争をしていたのです。こんなもん、勝てるはずがありません。

私たちは、「孤立したから負けた」という事実を決して忘れることなく、今回は「孤立せずに勝つ道」を進んでいきましょう。

image by: 首相官邸

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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