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仕事中に職場でケンカ。ケガした場合、労災は認められるのか?

業務中や通勤中の災害や怪我などに対して保証がなされる「労災保険」ですが、それが認められるか否かはケースにより様々です。今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では、「業務中の喧嘩がもとのケガは労災として認められるのか」について、裁判事例を紹介しながらわかりやすく解説しています。

仕事中の喧嘩でケガをしたら労災になるのか

今から約5年前。私は心底悔しい思いをしました。それは社労士試験の合格発表のときのことです。

社労士試験というのは10科目あるのですが、総合得点で合格ラインを20点以上も上回っていたにもかかわらず、試験に落ちてしまったのです。なぜか?

社労士試験には2つの合格基準があります。1つは「全体の総合得点が合格ライン以上である」、そしてもう1つが「全科目がそれぞれ合格ライン以上である」です。

合格のためにはこの2つをクリアする必要があるのですが私は、10科目のうちの1科目で、合格ラインに1点足りなかったのです。この結果には本当に悔しい思いをしました(両方ダメならまだ納得もいくのですが9。

ただ、もちろん受験生すべてが同じルールでやってるわけであってどんなに総合得点が高かったと言っても「片方がオッケーだから合格」とは、当然ながらなりません。

これは労災にも同じことが言えます。労災が認められるには2つの条件があります。それは「業務起因性」と「業務遂行性」です。簡単に言うと、「仕事に関連しているか(業務起因性)」と「仕事の時間中か(業務遂行性)」の両方を満たしているかどうかです。

例えば、仕事の時間中に気分転換になわとびをして、足首を痛めたとします。これが労災になるかというとなりません。なぜなら、確かにケガをしたのは仕事の時間中ではありますがなわとびは仕事とは全く関係ないからです。

ではこれが「仕事中の喧嘩」であればどうでしょうか。

みなさんの中には「喧嘩は社員同士の個人的な問題」として、労災とは関係無いと考える人も多いかも知れません。

それについて裁判があります。ある建設会社で、部下に作業命令をしたある社員がその部下と口論になり、背中を殴られてケガをしました。これを労災として申請したところ労基署が認めなかったため裁判を起こしたのです。

では、この裁判はどうなったか?

労災と認められました。その理由は次の通りです。

つまり、「仕事に関連して暴力を受けた」と認められたわけです。

いかがでしょうか? 「仕事に関連して」と認められたということは当然に会社の責任問題にもなるということです。

ここで実務的に注意すべき点が2つあります。まず1つ目が、もし万が一、会社で喧嘩があったらそのままにしておかないことです。「喧嘩は社員同士の個人的な問題」などと考えてそのままにしておくと、場合によっては被害者側の社員から訴えられる可能性があります。詳細な状況を確認し、必要があれば会社からの謝罪や見舞金の支給なども検討すべきでしょう。

2つ目が就業規則にルールをしっかりと定め、それを社員にきっちりと周知徹底することです。みなさんの会社の就業規則には喧嘩や暴力をふるった場合の罰則が定められているでしょうか?そして、それは周知徹底されていますか? これらが欠けていると万が一の場合は、会社にも責任が発生してしまいます。

繰り返しますが、「喧嘩は社員同士の個人的な問題」では、すまされません。「会社の問題」として常に意識しておく必要があるのです。

ただし、仕事中の喧嘩がすべて労災と認められるかというとそうではありません。例えば、同じような建築現場での喧嘩に関する裁判で次のようなものもあります。

作業中に、社員AとBがちょっとしたことで口論になった

AがさらにBを挑発するようなことを言ったため、Bがヒートアップ

Aは顔や頭を殴られ、後日死亡

この裁判では労災とは認められませんでした。殴られた原因にあたる「挑発行為仕事と関連が無い」とされたためです。

image by: Shutterstock.com

特定社会保険労務士 小林一石この著者の記事一覧

【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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