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家具が売れない。財務分析から垣間見る「大塚家具」の危険度

2015年に勃発した「お家騒動」で傷ついたブランドイメージの回復を図る大塚家具。しかし現状ではなかなか数字がついてこない事態となっています。復活の鍵はどこにあるのでしょうか。無料メルマガ『ビジネスマン必読!1日3分で身につけるMBA講座』では著者でMBAホルダーの安部徹也さんが、先日公表された同社の売り上げ等から現状を分析するとともに、大塚家具が打つべき手について考察しています。

財務分析から垣間見る大塚家具の危険度

6月に入り、大塚家具の2017年5月の月次売り上げが公表されました。


出典:大塚家具 月次情報

5月の前年同月比の売り上げは90.3%と、前年が53.8%と大きな落ち込みだったにもかかわらず、その低調な前年の売り上げを上回ることができないという不満の残る結果となりました。

今期はここまで前年同期比で平均90%程度の売り上げ水準で推移しており、このままのペースで6月を終えるとすると、半期決算では売上高200億円程度に留まり、営業損失は20億円に達することが予想されます。

大塚家具の今半期の予想が売上高240億円で営業利益が5億円のマイナスですから、6月に前年同月比170%といった大幅な売り上げアップを果たさなければ、8月の半期決算の報告の際には2017年度決算の下方修正は避けられない事態に陥るでしょう。

このように相変わらず業績が上向く気配の感じられない大塚家具ですが、今回は2017年第1四半期の決算書をもとに、財務面から分析を行っていくことにしましょう。

バランスシートから浮き彫りとなる大塚家具の危険度は?

まず、チェックしていきたいのはキャッシュです。企業はキャッシュが底を突いた段階で「ジ・エンド(倒産)」ですから、十分な水準のキャッシュを確保しておく必要があります。

大塚家具の2017年3月31日時点のキャッシュ残高は25億円です。昨年度末の残高が38億円なので、ここ3ヶ月で13億円も減少していることがわかります。

この25億円というキャッシュ残高は、売上高の1ヶ月分にも満たないということを踏まえれば、赤字が毎月続く現状ではやや心許ない水準といえるでしょう。

続いては借入金を見ていきましょう。銀行からの借入金があると、返済期限に一括返済が求められた時に相応のキャッシュが準備できなければ、いくら企業は黒字を計上していても「サドンデス(突然死)」となります。特に大塚家具は赤字企業なので、借入残高とその水準には注意を払う必要があります。

ただ、2017年3月31日現在では、借入残高もなく、銀行からの融資枠も30億円に設定されているということなので、資金調達面では今のところ危機的状況にはないといえるでしょう。

損益計算書から大塚家具の現状を分析する

それでは、次に損益計算書から大塚家具の現状をチェックしていきましょう。

大塚家具の2017年第1四半期の売上高は102億円となり、前年同期比8.2%の減少となりました。売上原価は売上高の減少に伴い、2億円ほど少なくなっていますが、原価率は48.38%と前年同期比2ポイント以上高くなっているのが気になります。

また、販管費もリストラを行って経費削減に努めた結果、前年同期比5億円以上少なくなっていますが、売上高比で見てみると1ポイント程度高くなっています。

経常利益は16億円の赤字に沈み、保有株式の売却で8億円の特別利益を計上した結果、税引前当期利益は8億円の赤字に留まりました。

バランスシートの投資有価証券を見ると、簿価にして15億円程度の株式を売却して利益を捻出していますが、いまだに40億円弱の投資有価証券が計上されています。

日経平均株価が2万円前後と高い水準で推移する昨今、恐らく相当の含み益がある株式を保有していることも十分に考えられますので、いざという時はこの投資有価証券を売却して一時凌ぎに充てることもできるでしょう。

以上、大塚家具の月次セールスリポートや第1四半期の決算短信を分析すれば、相変わらず業績的には非常に厳しい状況が続いていますが、資金繰り的にはまだ余裕があるため、首が回らなくなる前に次々と手を打って業績の回復に努める必要があることがわかります。

大塚家具が復活する鍵となるのは?

現状の大塚家具には様々な問題が山積していますが、まずは「骨肉の争い」で悪化したブランドイメージを回復すること、そしてターゲット顧客をしっかりと定めてマーケティング戦略を組み立てることが求められます。

最近のメディアをチェックすると、大塚家具自体の露出度が極端に減り、イメージが悪化した状態で多くの消費者の記憶の隅に追いやられていることが考えられます。このような状況では、店舗に集客して売り上げアップを図ることは難しいと言わざるを得ません。

そこで、ターゲット顧客を明確にしたうえで効果的にアプローチして売り上げにつなげていく必要があるのです。

費用対効果を考えるなら、ネットから顧客を店舗に来店させる流れが重要となってくるでしょう。そこで、大塚家具には800名を超えるスリープアドバイザーやインテリアアドバイザーが在籍しているという独自資源をフル活用して、ネット上で専門家による情報を提供したり、お悩み相談を受け付けたりして、ネット、もしくは店舗経由で売り上げを上げるという「オムニチャネル」の実現が復活の鍵を握るのではないでしょうか。

一旦、傷ついたブランドイメージを回復するのは並大抵の努力では難しいですが、真摯に顧客と向き合い、顧客のニーズに徹底的に応えるという姿勢を示すなら、マクドナルドが数々の不祥事で危機的状況に陥ったところからV字回復を成し遂げたように、大塚家具も復活を果たすことは決して不可能なことではありません。

今後の大塚家具の奮起に期待したいと思います。

 

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【著者】 安部徹也 【発行周期】 ほぼ 週刊

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