都内では日常的に行われている映画、ドラマ、雑誌などの撮影。「芸能人を見られてラッキー!」と思う人ばかりならいいですが、当然ながら「仕事で急いでいるのに道が塞がってて通れない」と不愉快に感じる人もいます。そんな苦情を少しでも減らすために、スタッフができる努力とは? 無料メルマガ『映画が作れるようになるメールマガジン』では映画制作団体「映画工房カルフのように」の代表を務めるオリカワシュウイチさんが、とある「実例」を取り上げつつ記しています。
ゲリラ撮影はマナーを守って
かなり矛盾したタイトルですね。今回は、撮影中のマナーについてのお話です。
先日、都内を歩いていたら、路上で某アイドルの写真撮影をしているところに出会いました。同じような格好・髪型の女の子達が並んでいました(グループ名に数字がつくどれかだと思われます)。
僕はそのとき、仕事仲間と一緒で、二人で珍しいものを見る感じで、単なる野次馬と化していました。
さて、僕が気になったのは、あるスタッフの行動です。撮影隊の端っこにいたスタッフが通行人をにらみつけていたのです。野次馬である僕らも、一挙手一投足をチェックされているのを露骨に感じました。おそらく、スマホでも取り出そうものなら、飛んできて制止しようとしていたのでしょう。
もちろん彼らは、きちんと撮影許可を取っているはずです。だから法律的には何も問題ない。そして、アイドルの写真を撮られるのがNGなのも分かります。
ただね。
僕らはその場所で働いている人間。むしろ異端者は彼らの方なのです。決して、彼らのマナーが良いとは思いません。
さて、撮影中のマナー。実は、撮影マナーはロケハンの時に準備ができるのです。ロケハン。ロケーション・ハンティングの略。撮影したい場所の事前確認ですね。
僕はロケハンの時、「そこで撮りたいかどうか」だけでなく、次の2つのこともチェックしています。
- そこで撮影していいのかどうか
- 周りに迷惑かけないかどうか
それぞれ解説します。
1. そこで撮影していいのかどうか
これは分かりやすいですね。撮影許可が必要かどうか、です。
2. 周りに迷惑かけないかどうか
僕が今回お伝えしたいのはこちらなんです。許可を取っていようと、ゲリラ撮影であろうと、撮影マナーは別に考えないといけません。撮影とは基本的に「通行人にとって邪魔」なもの。だから、マナーを守らないといけないと思うのです。
チェックしておくべきは、その場所の「生活動線」です。人々がどこをどう動いているか、ですね。事例を挙げた方が分かりやすいでしょう。
僕は昔、河川敷の土手を一部分、大勢の撮影隊で勝手に封鎖してしまったことがあります。封鎖といっても、バリケードを立てたりしたわけではありません。ただ、20人くらいで広がれば、もう、通せんぼに近い状態。サイクリングの人たち、タイムを計ってトレーニングをしていた人たちの邪魔をしてしまったのです。もう15年くらい前のこと。どうかお許しください…。
他にも、小学生の下校時間に、道路を占拠して、黄色い帽子の子供たちが道にあふれてしまったことも。
基本的に、道路で撮影するときは、通行人が通れる道を確保するのは必須でしょう。「そんなの当たり前だ」と思いましたね…(ニヤリ)。そんな当たり前のことが、結構難しいのです。
これを気を付けるのは監督ではありません。他のスタッフなんです。
撮影中は、ビデオカメラを中心にして、円錐形にスタッフが広がる傾向にあります。スタッフが多ければ多いほど、末端スタッフはどんどん散らばっていきます。つい、道路を封鎖してしまうのです。しかも、末端スタッフは、今撮影がどんな状態なのか把握できないことが多い。
それはつまり、自転車でやってきたひとに、「今はいいですよ、どうぞ!」と即答することができないということ。
監督は、末端スタッフに至るまで、気を配ることはなかなかできません。だからこういった部分は、助監督の仕事になります。助監督は、撮影そのものだけでなく、通行人の邪魔をしないように気を配る。そして迷惑をかけていることをゴメンナサイという表情と態度を示す。
これを、撮影前にしっかりと意識合わせしておく。
ロケハンの時に、生活動線を確認する。これは、どの程度の通行量があるのか、どんな人たちが行き来しているのか、どの程度なら占拠しても問題ないか、そういったことを事前にチェックしておく、ということなんです。
最後になりましたが、あくまで「撮影中のマナー」について書きました。決して、マナーを守ればゲリラ撮影していい、ということではありませんよ!!