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ソフトバンク孫社長「Wi-Fiは不要」発言、なぜ猛反論されたのか?

ソフトバンクグループの第37回定時株主総会で、訪日客向けの無料Wi-Fiサービスについて問われ、「無料WI-Fiについてはなくすべきかなと最近は思っています」との衝撃発言をした孫正義社長。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でスマホジャーナリストの石川温さんは、「孫社長の言い分はある意味合っている」としつつ、その理由について記しています。

孫社長の「Wi-Fiは不要」という暴論にWi-Fi業界団体が猛反論

7月26日、無線LAN規格の業界団体であるWi-Fi Allianceが記者会見を開催した。新しい認定プログラム「Wi-Fi CERTIFIED Vantage」や5G時代におけるWi-Fiの役割について、説明が行われた。

Wi-Fiといえば、先日、ソフトバンクの株主総会で株主から「2020年に向けてもっと無料Wi-Fiスポットを増やして欲しい」と孫社長に要望が出された。

しかし、孫社長は「やりましょう」と宣言するどころか、「無料Wi-Fiスポットは増やすべきではないセキュリティ面を考えたら無料Wi-Fiスポットよりも国際ローミング料金を安くするなどした方が得策」と一刀両断したのが話題となった。

孫社長の発言は一理あるとネット上でかなり支持されたのだが、実際、Wi-Fi Allianceとしてはどのような「反論」があるのか気になっていた。

ちなみに、ソフトバンクもWi-Fi Allianceに加盟している。つまり、加盟会社が率先して無料Wi-Fiスポットの存在価値を否定したのだから穏やかではない。

Wi-Fi Allianceのマーケティング担当ヴァイスプレジデント、ケヴィン・ロビンソン氏に「孫さんがあんなことを言っているけど、反論ある?」と率直に聞いてみた。

するとケヴィン氏は「我々が自信を持って言えるのは、Wi-Fiをこの世から排除したらセルラーネットワークは破綻する。データトラフィックをセルラーネットワークだけで支えるのは不可能だ。アメリカのモバイル事業者のなかには、アンリミテッドのプランを提供しているところもあるが、ネットワークは劣化しはじめて耐えきれなくなっている。ほかのオペレーターのなかには80%のデータトラフィックをWi-Fiに流しているところもあるくらいだ」と語った。

実際のところ、世界中のインターネットトラフィックの約半分がWi-Fiを経由したものだという。固定やセルラー経由のトラフィックと比べると、いかにWi-Fiが役立っているかがよくわかる。

ソフトバンクも振り返ってみれば、iPhoneを導入したものの、エリアは狭く、さらに3Gのネットワークが劣化し始めていたこともあり、Wi-Fiスポットを積極的に敷設した。Wi-Fiスポットにお世話になっておきながら、さすがに孫社長のあの言い方ではWi-Fi関係者も黙っていないだろう。

ただ、街中にWi-Fiスポットが大量にあっても勝手に接続しデータが流れないセキュリティ面で不安があるなど、デメリットがあるのも事実だ。

そこでWi-Fi CERTIFIED Vantageが必要不可欠となってくるのだろう。Wi-Fi CERTIFIED Vantageでは、サービス事業者がネットワークを管理し、一つのアクセスポイントに接続し続ける機器を排除したり、映像や通話などのアプリが中断せずに利用できるようになるという。

ただ、無料Wi-Fiスポットは、現状、2020年に向けて増え続けているものの、ビジネスモデルが確立しておらず「とりあえず設置して完了」という状況になっている。新しい認定プログラムが出てきても、それらに対応した機器に置き換えていくメンテナンスの費用が出にくい状態にあると言われている。

このままでは、古い規格のWi-Fiスポットが何年もメンテナンスされずに放置されていく状況になりかねない。

ビジネスモデルと安全性を両立させる意味では、やはり孫社長の主張が正しいのかもしれない。

image by: Shutterstock

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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