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日本の天文観測の聖地「国立天文台三鷹キャンパス」に行ってきた

9月に入り秋めいてきて、もうすぐ秋の行楽シーズンですね。この時期おすすめしたいスポットが、東京都三鷹市にある国立三鷹天文台です。日本の天文学のナショナルセンターとして有名な場所ですが、実は一般公開されているエリアもあり、歴史ある建物や天文学のことを学べるスポットになっています。
※本記事はジモトのココロに掲載された記事です(2017年9月13日)

 

天文学が学べる!「国立天文台 三鷹キャンパス」へ

三鷹キャンパスの正面門、重厚感がありますね

9月に入り、日が傾く時間が早くなると共に、朝、夕には冷え込みを感じる日も増えてきて、日中でも過ごしやすいと思える暖かさの日も増えてきたように思えます。そんな過ごしやすい夏の終わりに、のんびりとした新緑の中で日本の天体観測の歴史を学んでみようと思い、国立天文台の本部、三鷹キャンパスに足を運んでみました。 

 

国立天文台とは、世界最先端の観測施設を擁する日本の天文学のナショナルセンターであり、大学やその他研究機関における共働研究や、国際協力のための窓口として、天文学発展のために活躍している施設です。三鷹キャンパスは、単に、“三鷹天文台”などと称され、2000年頃からは、一部施設の常時公開が開始され、日本を始めとした天体観測の歴史と最新技術の両方を気軽に学ぶ事ができるようになっているのです。

 

三鷹キャンパスの本館は、1916年(大正5年)に起工された施設で、その頃に建てられた建物や施設が現存しているのも、見所の1つですね。重厚な門を抜けて警備棟で受付を済ませると、見学用のパンフレットと、見学者用のビジターシールが貰えます。シールは見学の際、目立つところに貼っておきましょう。

見学コースの道標

 

見学可能なルートには、地面に“見学コース”という道標があり、迷う事が無いように工夫されています。見学コースの回り方については決まりはないようですが、門を抜けてから左周りに回って行くのが、見やすいルートだと思います。

見学コースには、建物の内部に入って見学できる施設と、建物入口から内部の展示品を見学できる施設などがあります。そのうち、第一赤道儀室と天文台歴史館には、係員の方がいらっしゃるので、主体とされる見学施設は、この2つなのかもしれません。

第一赤道儀室の外観。趣がありますね

第一赤道儀室の望遠鏡で投影される太陽の様子

 

左回りルートでは、最初に見えてくるのが、第一赤道儀室です。第一赤道儀室は、1921年(大正10年)に建てられたもので、三鷹キャンパスに残る最も古い建物であり、国の有形文化財として登録されています。内部に設置された屈折望遠鏡は、重錘時計駆動赤道儀という、重力により錘が落ちる力を利用して歯車を回転させ、望遠鏡の向きを変えて行く機械式の赤道儀に設置されています。

 

最初に望遠鏡を太陽の向きに合わせ、錘を巻き上げておくことで、望遠鏡は、自動で太陽の動きを追うように向きを変えていきます。一方で、赤道儀室の屋根に設けられたスリット(開口部)は、望遠鏡の動きに連動していないため、手動で動かす必要があります。直径6mの屋根が手回しのハンドルで動くというのは、見ていてなんだか不思議な感じがしました。

惑星間の距離を体験できる「太陽系ウォーク」

太陽系ウォークの説明と太陽の位置を示す看板

太陽系ウォーク。土星は、奥の建物の手前あたりになります

第一赤道儀室を出た後は、見学コースに沿って設けられた太陽系ウォークが目に止まります。太陽系の大きさを約140億分の1に縮め、約50mの距離に太陽から土星までの配置を表しています。太陽から土星までの距離を50mで換算すると、1歩が700万キロメートル以上にもなる計算となります。

実際に歩いてみた感想としては、火星から木星までの距離が思っていたよりも遠いという事を感じました。数千万キロとか、数億キロといった距離は、聞いただけではいまいちピンときませんが、縮尺であっても実際に歩いてみると、その距離感が判ったように思えます。

 

有形文化財に登録されている「天文台歴史館」

天文台歴史館の外観です。写真では、第一赤道儀室に似ていますが大きさが違います

大口径の巨大な望遠鏡は迫力があります。天井の様子は、船底の作りという事が判る木造ですね

太陽系ウォークを抜けると、三鷹キャンパスで最も大きなドームが見えてきます。天文台歴史館です。天文台歴史館は、2階建て構造となっており、内部には、口径65cmの屈折型望遠鏡が設置されています。

こちらの望遠鏡も、元々は観測用に使用されていたそうですが、建物の老朽化に伴い、スリットの開閉ができなくなってしまうのではないかといった点が危惧され、現在では展示室として利用され、建物自体は、国の有形文化財として登録されているそうです。

天文台歴史館の資料展示スペースです。雰囲気がありますね

ガリレオガリレイの望遠鏡のレプリカです。以外な事に、短い方が倍率が高いそうです

天文台歴史館の一階スペース。中央の白い台が、天文台の基台になっています

この建物のドームは、直径が15m、高さが19mもあり、1926年(大正15年)の建設当時には、このような大きなドーム型を建設する建築技術が無かったために、船底を作る造船技師の力を借りて建築されたそうです。このことからも、当時の技術の粋を集めて作られたという事がわかります。

 

さらに驚きなのは、望遠鏡を見る事ができるこのフロアの床、動くのです。

望遠鏡の鏡筒の傾きに応じて床を昇降させることで、鏡筒がどんな傾きの時であっても、無理の無い姿勢で観測を行うことができるのだそうです。建物の床ごと動かしてしまうという発想がすごいですね。ちなみに、現在は安全のため、床は固定されており、動かないそうです。

歴史を感じさせる建物も見所「旧図書庫」と「天文器資料館」

右のレンガの建物が、旧図書庫です

TMTの主鏡を構成するパネル。対角間の長さは、1.44mあるそうです

三鷹キャンパスの構内を歩いていると、時折、歴史を感じさせる建物を見ることができます。

旧図書庫もその1つで、外観上、レンガの模様や、ひさしの形状などが特徴的。内部に入って見学できる施設の1つには展示室があります。こちらはすばる望遠鏡などの光学赤外線望遠鏡や、電波望遠鏡などの模型などが展示されています。ハワイ島マウナケア山頂に建設中の世界最大級の光学赤外線望遠鏡であるTMT(Thirty Meter Telescope)望遠鏡の主鏡を構成するパネルの大きさには驚かされます。

パラボラアンテナと天文機器資料館のかまぼこ型の屋根、そして青い空のコラボが絵になります

内部に入れる見学場所は、上記の他に「天文器資料館」があります。天文器資料館は、自動光電子午環(天体の精密位置観測を行うもの)のための施設として使用されていましたが、現在は、退役した天文機器などが収蔵された施設になっています。

ゴーチェ子午環室。入口から中の様子を見学できます

この他にも、有形文化財として登録されている品を入口から見学することのできる施設などもありますので、天文学に興味がある方は、一日いても飽きない施設だと思います。また、都内としては緑も多く、さらに観測施設設置の関係で、開けた平地や窪地が多く存在していることより、いわゆるインスタスポットとしてもなかなか良いのではないかと思いました。

 

また、若い方から年配の方まで、そしてカップルで来ている方が多い印象でした。もちろん、ご家族でのんびり見学されている方もいらっしゃいましたが、一人で来られている方は見かけなかったので、ちょっとしたアウェー感を感じました…。

三鷹天文台のパンフレットに、ビジターシールを貼り付けてみました

 

その他、事前申込制になりますが、普段見学できない施設であっても、4D2Uドームシアターや、50cmの望遠鏡では、定例の見学会などをやっておりますので、そちらの見学会にも参加してみてはいかがでしょうか。

なお、各施設には二次元コード(QRコード)が示されている箇所があり、それをスマートフォンなどのカメラで読み取る事で、施設ガイダンスを聞く事ができるように工夫されています。

ガイダンス自体は、施設の説明書きと同様の事ですが、ガイダンスを聞きながらの見学は、見学気分を盛り上げてくれるものとなると思います。なお、周囲に見学者が大勢いる時は、イヤホン等、個別に音声を聞く事ができるようにした方がベターですね。

 

国立天文台 三鷹キャンパス
東京都三鷹市大沢2丁目21-1
Tel: 0422-34-3600
見学時間午前10時から午後5時(入場は午後4時30分まで)
公式サイト

 

 

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梅原 慎治

梅原慎治 
埼玉県生まれ、都内在住のツーリングライター。主に関東近郊を走り周り、美味しい物や良い景色などを見つけて楽しんでいる。趣味としてフルコンタクト系の空手も嗜んでいる。

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