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さらばマニュアル車。受け容れざるを得ない変化も、感じる寂しさ

近年ヨーロッパを中心に自動車の電化の流れが進んでいます。フランス・イギリスでは2040年にはガソリン車・ディーゼル車の販売禁止が決定したというニュースは日本でも大きく話題となりました。メルマガ『8人ばなし』の著者・山崎勝義さんは、自動車の電化で車がどのように変化するかについて考察。さらに自動車電化の流れを「受け容れなければならない変化」としながらも、慣れ親しんだマニュアル車が消えゆくことへの寂しさを語っています。

絶滅危惧種マニュアル車のこと

欧州では今後、自動車の電化が進む。

最初にフランス政府が2040年にはガソリン車、ディーゼル車の販売を禁止することを発表し、イギリス政府もこれに続いた。自動車業界大手のフォルクスワーゲン、BMW、ダイムラー(ベンツ)を擁するドイツは「おいそれ」とはいかないだろうが、EUの盟主的立場として「ノー」とは言えまい。

唯一興味深いのはイタリアンメーカーである。アウディ、つまりはフォルクスワーゲン傘下のランボルギーニはともかくとしても、フェラーリは一体どうするつもりなのか、その身の振り方は注目に値する。

自動車が電化するということは、パワートレインから内燃機関(エンジン)がなくなりモーターがそれに代わるということだけを意味しない。同時にトランスミッションもなくなるのである。ゼロ、即ち静止状態から最大トルク(トルク=物を回す力)を出せるモーターに多段変速機やクラッチは必要ないからである。簡単に言えば、ラジコンカーのようになってしまう訳である。

あと、感覚的に忘れてはならない変化がサウンドである。エンジンの場合は、言うまでもなくアクセルを踏めば踏むほど大きな音を出す。逆にドライバーはその音の大小で速度感覚を得る。本来、出力の結果であるエンジン音がフィードバックされ、新たな入力調整に役立つというところは、如何にも感覚というものを有する人間らしくて面白いのだが、この音がなくなるとドライバーとしては存外に恐ろしい

実際、静粛性の高い高級車を運転していると、自分でも気付かないうちについついスピードが出過ぎてしまったりすることがある。これに比べるとモーターの場合は事実上無音と言っていい。これは車の内でも外でも変わらない。あまりにも静かなものだから歩いている時に、知らないうちに背後に迫る電気自動車やハイブリッド車に驚いた経験は誰にでもあるのではないだろうか。

そういう訳もあって、安全運転のためには電化と同時に自動感知・自動運転システムの導入が必要不可欠ということになる。

それにしても、こういった変化は仕方がないこととは言え、やはり自分が慣れ親しんだ物が無くなって行くのを目の当たりにするのはどこか寂しいものである。環境面からの要請も年々厳しくなっている。テクノロジーも日々更新されている。是非もない変化である。受け容れなければならない変化である。

ただ、この古きドライバーの寂しさを感じているのは自分だけではないことは確かである。それを知ってか、メーカーもしばらく製造していなかったスリーペダル式マニュアルトランスミッション車をスポーツモデルに限ってではあるがここ数年復活させている

この先、自動車の電化がどのように進んで行くにしても、100パーセント確実に言えることがある。それは、これ以上スリーペダル式のマニュアルトランスミッションが開発されることはないということである。つまり、現行のモデルがマニュアルの最終形であるということになる。

ということは、今がマニュアル車を新車で手に入れる最後のチャンスなのかもしれない。

この機会に面倒くさい車を一台買っておくのはどうだろうか。

image by:Shutterstock

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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【著者】 山崎勝義 【月額】 ¥220/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

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