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キムタク主演映画の反応が、日本とアメリカで「真逆」すぎた理由

監督・三池崇史、主演・木村拓哉という超豪華キャストで、今年のGW映画の目玉作品として注目された映画「無限の住人」。先日、半年ほど遅れてNYでも上映されました。NY公開初日に鑑賞してきたという、メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者で米国の邦字紙「WEEKLY Biz」CEOの高橋克明さんは、本作と三池崇史監督へのニューヨーカーたちの反応が日本人とは真逆だったことに驚かされたらしいのですが……。

キムタク映画に見る日米間の違い

ブルックリンはAlamo Drafthouse Cinemaにて、木村拓哉主演無限の住人」(こっちでのタイトルは「BLADE OF THE IMMORTAL(不死身の刃?)」)が上映されました。

実は、この作品、今年の春の東京出張時、空き時間に有楽町の劇場で鑑賞済みでした。

小さな映画館でしたが、フェスティバルの一環ということもあり、超満員。 特に周りに日本人の観客が目立ったわけではありませんでした。 現地のアメリカ人だらけ

上映前、今回の主催者が挨拶する際「カンフー・アクション・ムービー!」と紹介していました。 違うと思うけど。

残念ながら「TAKUYA KIMURA!」と名前を紹介した際も拍手はまばら。 監督の「TAKESHI MIIKE!」の時は、大きな拍手に包まれました。 ここで超満員の理由がわかった気がします。 やはり三池監督は北米の映画ファンの間でも特別な存在。(巨匠、というよりはカルトな趣もあると思いますが)僕が監督にインタビューしたのは、、もう9年前!です。

上映が始まってスグに気付きました。 有楽町マリオンで鑑賞した際と、まるでまったく違う作品を流しているかのごとく、観客の反応がま逆でした。

終始、爆笑してる。日本だと、感動する(少なくとも製作陣が感動させようとしている)シーンですら、いや、そんな場面の方が、ニューヨーカーたちの笑い声は止まりません。

以前、このメルマガでも「海猿 ウミザル」ニューヨーク上映の際、日本では観客みんなが号泣するラストのクライマックスで、劇場がゆれるほどの大爆笑に包まれた、というコラムを書いたことがありました。

その際、監督の隣で鑑賞していた僕は、監督の機嫌をとるつもりで必要以上に爆笑しちゃいました。 直後、単独インタビューが控えていたため、少しでも気持ちよく取材に答えてもらう為に、でした。 だって笑わせるつもりで、監督はこのシーンを撮ったと思ったから。 事実、観客のニューヨーカーは涙を流して爆笑していたから。

あとになって、監督は泣かせるつもりで撮ったことを知りました。 僕とのインタビューでもちょっと落ち込んだように「正直、戸惑っています、、」とうなだれていました。

どんな内容で、どんなシーンだったかは前回書いたので、今回は簡潔に書きますが、海上保安庁(だっけ?)の主人公達が、決死の覚悟で最後出動します。 命がけの任務です。 主人公が恋人だけに伝える正直な気持ち、最後の告白。 それが誤って母艦全体に響き渡るマイクのスイッチをONにしたまま、しゃべってしまった。 最後の告白が、結果、自衛隊(?)全員に聞こえてしまった。 それを聴いて涙ぐむ仲間もいる。

正直言って、確実にニューヨーカーの方がセンスいいと思いました。 これ、ギャグ漫画だよね? 命がけの任務の前に、昨日今日、しかもナンパで知り合ったわっかいカップルの実は好きだったどーのこーのを、家族も待っている隊員たちが、国を背負う男たちが、感動の面持ちで聴き入るなんてことは絶対にない。

カッコいい感動的なBGMにダマされない。 ニューヨーカーはそのあたりをシビアに観る気がします。 感動的な(だけの)セリフに持っていかれない。 だから、笑っても不謹慎じゃない。 「でも、ホントのとこはどうなの?」いつだって自問自答している気がします。

木村拓哉が演じる「無限の住人」の浪人、万次は、不老不死。 死にたくても死ねない、という役です。

なので、当然ですが、相手が300人でも、結果、300人の死体が転がる。 その圧巻さ、漫画調な絵からまず爆笑をとってました。

死んだ妹に生き写しのヒロインとのやりとり。 お兄ちゃん!(Brother!)と呼ばさせるか、兄様!(Big Brother!)と呼ばせるか、延々言い合ってるシーン。 日本ではすすり泣く声も聞こえてきそうです。 死体が転がってる場所で、ほぼ初対面同士のおっさんと小娘が、なにやってんだとここでもまたニューヨーカーたち、爆笑。

それ以外でも、日本ではいわゆる「感動的」なシーンでも、ところどころ、笑い声が聞こえてきました。 中には手を叩いて喜ぶ観客もいたくらいでした。

もともと、このブルックリンの映画館自体が、日頃カルトなマニア向けの映画を上映する日本でいうところのミニシアター的な用途でもある劇場です。 日本での豪華キャスト大型時代劇!も、こっちではカルト向けのB級作品に見えるのかもしれません。 TAKASHI MIIKEも、巨匠!というより、こっちでは映画通受けするセンスの監督なのかと思います。

どうあれ、結果、ニューヨーカーは喜んで、満足した顔で劇場を後にしていました。

プロデューサー、監督、キムタクには本意ではない種類の満足かもしれないけれど。

映画『無限の住人』Blu-ray版
(2017年11月8日発売、予約受付中)

image by: 映画『無限の住人』公式HP

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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