衆院解散の前後から、日本の政界を取り巻く状況は日々めまぐるしく変わっています。小池都知事が「希望の党」を結党したかと思えば、前原氏率いる民進党と合流するなど、公示直前になって状況は混沌としてきました。はたして、この選挙の争点はどこにあるのでしょうか? 今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、今話題の「希望の党」の本質を検証し、組閣や9条改正など選挙後の政局までを大胆に予測しています。
どうなる、「小池劇場」選挙
小池都知事の代表就任で小池新党を希望の党と命名、民進党議員を選択し、維新の会と連携。これで大きな枠組みができたようである。全国政党の自民・公明 VS 地域政党の維新・希望である。
0. 地域対全国の戦いに
地方政党も全国政党も安全保障政策は大きな争点にならない。どちらの党も安保法制に賛成している。靖国参拝もしている。
というより、維新・希望のほうがタカ派である可能性が高い。憲法9条に自衛隊を載せるだけの全国政党に対して、維新・希望は米国との対等な相互防衛条約締結を言い出す可能性もある。このため、北朝鮮対応は、維新・希望がより優れた対応になる。そうすると、憲法9条2項の改正を主張することになる。
このように不毛なイデオロギー論争はなくなる。お友達の優遇として、加計学園や森友学園の非難は出るが、それより国内政策の論争になることが確実である。
争点は、消費税凍結の地域政党 VS 消費税増税の全国政党、地方分権の地域政党対中央集権の全国政党、この部分は憲法8章改正の議論になる。道州制の導入、大阪都構想などの議論がされることになる。
また、消費税増税のタイミング議論になるはず。バーゼル3が2019年から全面的な適用開始になる予定であるが、米国などの反対で難航している。しかし、この中で格付けA以下の国債は、基本的に年金基金などでは持てないことになるし、銀行もリスク資産になり安全資産を留保することになる。現時点で、日本国債の格付けは、ムーディーズはA1、S&PはA+であり、ギリギリの状態である。
銀行は現時点22%、年金基金8.3%、海外5.8%、生損保21%になっているが、今までは安全資産と見なしていた。これがリスク資産になるなら手放すことになり、長期金利の急激な上昇が起こり、円高になる可能性が指摘されている。
本来は、格付けを維持するために消費税増税が必要なのであるが、維新・希望の見解は、国民に痛みを負わせる前に、議員が痛みを感じるべきと議員定数の削減や議員報酬の下げを公約して、若狭さんが一院制の国会にするというのもこの文脈であろう。一院制にするには、憲法4章を改正する必要がある。
消費税増税を、国民生活が向上する給与所得の3%程度の増加などの基準を作り、その実現時に増税ということになるだろうとみる。もう1つが、特別会計や予算の見直しである。
1. 選挙結果による組閣
もし、地方政党の希望・維新が自民党より多数になると公明党はどうするのかでしょうね。自民党と組んで政権を維持するか、希望・維新・公明の連立政権になり、自民党が野党になるのか?
この時、その他野党もそれなりの数になっていた時も考える必要がある。自公で過半数に達しないときにはどうするか。その時は、希望・維新+自民の大同団結内閣になるのか。もし、そうなるなら憲法9条全面改正でしょうね。その時は公明党が野党になる。
もう1つ、小池さんが都知事を辞めて衆議院選挙に出たら、一挙に希望の党への反発が強くなることは、現時点での国民調査に出ている。このため、自民党小泉進次郎議員は小池さんの出馬を勧めるのである。
2.安倍政治の問題点
安倍首相を含めて自民党3世議員は、やさしい人が多い。敵を作らないように立ち回る。地域の人たちは、議員を子供の時から知っているから、選挙には強いが、国内政治で改革などを行う場合は、その優しさが改革を阻むことになる。
西部進などの保守系論客なども、合意形成政治を推奨して安倍首相をサポートしているが、それでは、まともな改革はできない。
小泉内閣は敵を作り、既得権益をつぶして、改革をしたのである。小泉さんが作ったのは、お飾りの首相のもとの官僚主体政治から、首相が強いリーダーシップを取り、改革ができる体制であり、官邸中心の政治システムである。大統領的な首相内閣制度である。
この政治システムで、日本の危機を乗り越える改革ができるようにしたが、残念ながら、自民党の首相は、首相としてのリーダーシップが弱すぎるのである。
外交では、しがらみがないので安倍首相も活躍できているが、国内改革は失敗である。
安倍首相など自民党3世議員の短所は、良い人すぎることである。一般的にはよいことであるが、日本の衰退を止めるためには、小泉純一郎みたいな変わった人が必要なのである。その点、小池さんは、癖のある人で、今の改革の時代にはもってこいの人のように見える。
3.改革を行うための政治の進め方
首相が、日本の将来の理想とする姿を描き、それに向かって突破していくことが重要なのだ。その目標点を明確化して、それに対して現時点は、どの程度かを国民に示すことである。
安倍政権は、問題点を上げるが、それがどこまで到達したかを評価する前に、次の目標を設定して移ってゆき、最初の目標達成が中途半端な状態になっている。
4年前、水素社会を作るといったが、現時点、水素ステーションは目標より大幅に少ないし、水素ステーションの建設費を3億円から1億円以下にしたが、できていない。
農業改革では、大規模農家の育成とJAの改革を目標にしたが、JAの会長は現在、反改革派であり、小泉進次郎議員が苦労したが、官邸サイドはサポートをしなかった。官邸はあまりにも政治力を使わな過ぎであり、敵を作らないことで自分だけよい子になっている。このようなことでは国内改革はできない。既得権益者との戦いのない改革は、中途半端になる事例を複数作ってきた。
このため、徐々に日本の国力は衰退している。日本から新しい産業が起きていない。日本は先進国から脱落する寸前なのに、危機感もない。
ここは、安全保障問題の考えは同じなので、自民党ではなく、維新・希望の党にやらせてみるのもよいと思うがどうであろうか?
さあ、どうなりますか?
image by: 希望の党公式Facebook