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妊娠中に風邪薬はOK?授乳中の飲酒は?小児科医がお答えします

妊娠中や授乳中に薬を飲むと赤ちゃんにどう影響が出るのか、不安に思っているママも多いと思います。その不安に『何でも相談こどもクリニック~新たなスタイル~』の著者で小児科医の宮田大揮先生がしっかりとお答えします。

妊娠中は薬を飲めないの? 授乳中は?
しっかり答えます!

妊娠はとてもすばらしい出来事であり、特殊なケースを除き皆が喜ばしいこととしてとらえています。

しかし、妊婦になると途端に薬を使ってはいけないと言われ、風邪をひいても薬が飲めず辛い経験をされてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか?

確かに、妊娠中はお薬を使いにくい時期があるのは事実で、具体的には胎児がお母さんのお腹の中で心臓や脳を作り上げている器官形成期といわれる妊娠初期(12週くらいまで)は、絶対安全であるという薬が存在しないため、わからないというのが実際です。

なぜ、安全といわれる薬がないか? というと、実験ができないからなのです。人体実験をするわけにはいかないので、わからないというのが正確なところで、実際には抗生剤や漢方薬を飲んでいても胎児奇形を起こすことはなく、安全に出産されている方が多いです。そのため、万一お薬を飲んでしまったという場合でも実際にはあまり心配する必要はありません。

しかし、12週以降であれば2つの原則に従って安全にお薬を処方することができます。それは、へその緒から薬剤が胎児に移行し、それにより胎児に影響がでてしまうかどうか子宮を収縮する可能性のある薬剤でないかをチェックする、という原則さえ守れば薬は処方できるのです。例えば、喉の風邪であれば桔梗湯という漢方薬が処方できますし、副鼻腔炎や気管支炎で抗生剤が必要であればセフェムというお薬であればたいてい処方が可能です。また、頭痛がある場合もアセトアミノフェンと呼ばれる鎮痛剤であれば一部の時期を除き使用可能です。

咳止めであればメジコンという薬も安全に使えるので、そう考えるとほとんどの症状に対応できます。しかし、この時期に漢方薬で麻黄という成分が含有されているものやエフェドリンという成分が入っている薬は子宮を収縮させるため、早産のリスクを高めるために使用は控えたほうがよいと考えられています。そこで、よくご家族から吸入ステロイド薬はよいかというご質問を頂きますが、これも安全に使用することができ、使用することでお母様の体調がよくなるほうが優先されるとお考えください。

しかし、妊娠後期となると注意点が一つ増えます。それは、胎児の動脈管という血管が生きていくうえで大切なのですが、鎮痛剤などは胎児の動脈管を収縮させてしまうことがあり、胎児死亡につながる可能性があるため、妊娠後期になった場合には、安全と考えられているカロナールも当院ではできるだけ処方しないようにしています。しかし、それ以外の薬は安全に使えるものが多いので、風邪が治せなくなるわけでもなく、特にご心配いただく必要はありません

では、出産後に授乳を始めると飲めるお薬はどうなるのでしょうか? 答えとしては、実際には使用できる薬剤はむしろ増えていきます。
このときに考えるべきことは、お母様の薬の影響が母乳にでてしまうかどうかということですが、母乳中に出るからすべてだめではなくて、やはり母乳に出てくる薬の量とそれを赤ちゃんが飲んで吸収され影響が出るのかどうか? ということが大切になります。

その観点から薬剤を考えると、授乳中はほとんどすべての抗生剤が使用可能で、クロラムフェニコールという薬以外は使用できます。てんかんの薬も、フェノバールとリボトリールという薬は血中濃度をチェックする必要がありますが、それ以外は安全に使えるため心配いりません。

実際に使ってはいけない薬のほうが少ないので、そちらを覚えていただくようにしているのですが、駄目な薬は麻薬(コカイン)、免疫抑制剤、偏頭痛の薬であるエルゴタミン、陣痛促進剤くらいですので、ほとんど使用可能と考えてもらったほうがわかりやすいかもしれません。

アルコールを飲んでよいかというご質問もよく受けますが、実際には問題なくアルコールの脂溶性、蛋白結合率、分子量などから考えてお母様が泥酔して授乳できないくらいになっていなければ問題なく、機会飲酒食前酒のように飲むことはまったく問題ありません。しかし、アルコールも過度に飲みますとおっぱいの出方に影響を与えることがあるため、乳腺炎になったりすることもあり、子どもへの影響ばかりではなく、乳腺炎にならないよう気をつけることなども大切です。

image by:Shutterstock

 

『何でも相談こどもクリニック~新たなスタイル~』

著者/宮田大揮(相模大野こどもクリニック院長)
現役小児科医/救急医が今まさに流行している病気やそれにまつわる話を余すことなくライブに発信。修羅場を乗り越えてきた筆者が読者の質問にどんどん答えていく、新たなクリニックのスタイル。
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