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リタイア世代にも人気。NPO法人は「お金を稼いではいけない」の勘違い

「NPO法人」という言葉を聞いたことはあるけど、一般の法人とは何が違うのかよく知らないという方も多いのではないでしょうか。NPOといえば、「お金を稼いではいけない」「国や自治体から助成金が出る」などのイメージがありますが、果たしてそれは本当なのでしょうか。今回はイマイチよくわからないNPO法人について、詳しく解説します。

 

NPOってなんだろう? いまだに多い勘違いや誤解を解消!

NPOは「Non Profit Organization」の略語。Nonprofitは非営利、Organizationは団体や組織を意味し、日本語では「特定非営利活動団体」と呼ばれます。この「Nonprofit・非営利」という言葉のためか、お金を得るような活動をしてはいけないと思いこんでいたり、行政や自治体から活動資金が無条件で提供されると勘違いしていることが多いようです。

今回は、そんな疑問や誤解を解決します。すでにNPOではたくさんの市民やリタイア世代が活躍しています。本気で市民活動や地域活動を考える人は、有効な組織形態であるNPOを知って、自分の活動との関連性や可能性を考えてみてはいかがでしょうか。

 

お金を稼いではいけないの?

さて、「非営利」の問題です。非営利とは、一切お金をいただかないで活動する、いわゆるボランティア活動のようなものを意味していません。仲間と連絡を取れば通信費、活動場所を借りれば会場費、そこに行くには交通費、資料を配ればコピー代などなど、どんな活動にも経費がかかります。これらすべてを会員や特定の個人が負担していては長続きは難しいでしょう。

そこで、NPOは独自の活動(事業)を行い、収入を得て、そこから経費を支払います。もちろん、活動をした人にも報酬を支払います(可能な収入があればですが)。必要な場合は人を雇うこともあります。ただし、企業での社長や役員とは違い、理事長や理事という役職で報酬を得ることは原則としてありません。メンバーは平等ですので、それぞれが携わった活動に対する報酬として支払われるのです。これが自立したNPOのやり方です。

例えば、あるグループが地域でコミュニティカフェを運営したとします。参加費を一人500円とします。毎回20人ほど集まるので、収入1万円。ただし、ここから必要な経費(会場費、お茶代、お菓子代など)を引きます。1回の経費を6,000円とします。これを月に2回で年間24回開催。それなりの利益が出そうなので、担当したメンバー2名には1回につき1,200円を報酬として支払います。

すると、このグループの年間の利益は、こうなります。

売上240,000円-経費201,600円(お茶代など144,000円とメンバーへの報酬57,600円)=38,400円 

小さな活動を例に挙げて説明しましたが、この利益の出し方はNPOも企業も同じです。

 

では、経費を引いて、余ったお金(利益:この場合は38,400円)はどうするのでしょうか。企業は利益を株主、会社、社員で分配します。しかし、NPOでは分配を行わず、すべて次の事業の資金とするのです。利益の分配=営利を目的としていないこと、これが「非営利」といわれる理由です。ですから、お金は稼いでいい、むしろ稼がなければならないのです。

実績を重ねた後に支援はやってくる

次に、NPOになれば公的な資金援助が自動的にあるという勘違いです。

NPOの主な収益源は、①会費、②自前の事業収入、③企業や個人などからの寄付、④行政との協働事業、⑤助成金や補助金の5つです。⑤助成金や補助金が公的資金援助といえるかもしれませんが、NPOを作ったからといって、自動的に支給されるものではありません。

ある程度の期間、順調に活動が継続し、今後も期待されると認められた場合、助成金や補助金の制度があるので、応募してみないかとアドバイスされるのです。

 

応募するには、たくさんの資料を用意しなければなりません。結構大変です。楽してお金をもらう方法などないのです。まして、公的助成金や補助金はもともと税金ですから、実績もなく、活動も明確でないNPOに無条件でお金を出すことはありません。

もっとも重要なのは②自前の事業収入です。これを一生懸命実行し、実績を上げることで、会員が増えて会費が増え、活動に賛同する企業や個人からの寄付が増えます。そして、その活動を見ていた自治体などが、 市民と一緒に行う協働事業のパートナーとして認めてくれることになるのです。

 

実は何をしてもいい?

では、どんな活動がNPOにふさわしいのでしょうか。「特定非営利活動促進法(NPO法)」という法律があります。そこには、NPOが行っていい活動として、次の20の活動が記載されています。ざっとでいいので、見てください。

1 保健、医療、福祉
2 社会教育の増進
3 まちづくりの推進
4 観光の振興
5 農山漁村又は中山間地域の振興
6 学術、文化、芸術、スポーツの振興
7 環境の保全
8 災害救援活動
9 地域安全活動
10 人権の擁護又は平和の推進
11 国際協力の活動
12 男女共同参画社会の形成の促進
13 子どもの健全育成
14 情報化社会の発展
15 科学技術の振興
16 経済活動の活性化
17 職業能力の開発、雇用機会の拡充
18 消費者の保護
19 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
20 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

 

どれもこれも大きな括りだということに気づくのではないでしょうか。社会貢献活動というと、高齢者介護や子育てといった福祉的な活動だと思いがちですが、よくみれば、観光の振興、情報化社会の発展、経済活動の活性化などという福祉とは直接関係のない項目もあります。

誤解を恐れずに言えば、公序良俗に反することなく、反社会的行為でなく、社会貢献という観点をもって活動すれば、何をしてもいいということです。経済活動の活性化に寄与するのですから、もちろん、お金を稼いでもいいのです。

その証拠に、NPOで居酒屋を運営している人たちがいます。次回、事例として紹介する予定ですが、彼らが目的とするのは、居酒屋での儲けではなく、シニア世代が集まって気兼ねなくお酒でも飲んで交流し、そこから新しいアイデアや活動が出てくる場所がほしいということでした。その趣旨を自治体が認めて、NPOの認証を与えたのです。

 

NPOの成功の尺度は、周りの人も自分も幸せになり、社会のよりよい維持にどれだけの効果をもたらしたかということです。リタイア世代が会社という組織を出たときに、もっと緩やかで幅の広い活動の可能な組織・NPOがあるということに気づき、地域創成にも力を発揮するようになればいいなと思います。

 

image by: shutterstock

ジモトのココロ

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