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【座間9遺体】手口を報じるマスコミが、凶悪犯罪を誘発する皮肉

座間市のアパートの一室から男女9人の遺体が見つかった事件が連日のように各メディアで報道されています。私たちは「起きた事実をすべて伝えるのがマスコミの仕事」と当たり前のように受け止めてしまいがちですが、無料メルマガ『マスコミでは言えないこと』の著者でITジャーナリストの宮脇睦(みやわき・あつし)さんは、「それは詭弁で、再犯を誘発する内容を意図的に報じている」と断言。その理由と、悪者扱いされるSNSへの誤解について詳述しています。

座間猟奇犯罪とマスコミ報道とSNSへの誤解

神奈川県座間市で起きたシリアルキラーの案件について。ここまででわかっている問題点を指摘しておきます。それは考えたくもないことですが、今後も起こり得る事案であり、かつ、今日起きても不思議ではないからです。

問題は2点。マスコミ報道とSNSへの誤解です。

まず、マスコミの問題を取りあげます。犯罪を報じることは彼らの仕事でもありますが、猟奇的な事件をその手口とともにつまびらかにすることは再発を誘発します。

ある報道では、犯行現場の階下の住民のインタビューを紹介していましたが、多少の異常な物音や、頻繁なトイレの利用は語りましたが、犯行そのものには気がついていませんでした。また、発覚当初から近隣取材で、異臭が取りあげられましたが、それを警察に通報したという話は伝わってきません。

ここからわかることは、人を殺してもそうはバレないということです。当然のことながら念のため明記しておきますが、人殺しを推奨するものでもなく、むしろそれを究極的に最小化するための一筆啓上です。

残念ながら社会には一定の異常者がいます。むしろ「普通」のほうが虚構という指摘もあり、そちらの方が正しいかも知れません。

不特定多数が参加する社会において、皆がそれなりに快適に暮らすための「妥協点」が常識であり、常識の枠を越えたものを隔離なり、排除なりをするために編み出されたのが法律とも言えます。

だから、護憲信者のような脳内お花畑が現出するなら、武力どころか法律すら要らないことでしょう。しかし、現実はそうではありません。

異常犯罪に目を戻せば、そこへの好奇心を抱えている人は少なからずいて理性と利益がそれを抑えているに過ぎません。

理性とは常識や愛情で、利益とは現実的な収入はもちろん、家族や恋人、友人知人から受ける愛情と評価も利益です。

さて、このどちらもない人物にとって、今回の執拗でいて詳細な報道は誘惑」となります。人を殺してもバレない、と。

遺体の損壊についても、「ネットで調べたとの供述を垂れ流しにします。猟奇犯罪ですら国民の知る権利かもしれませんが、小中学生でもたやすく視聴できる、朝の情報番組や夕方のニュース(事実上のワイドショー)で、詳細な手口を報じるやり口に首をひねります。

いわゆる「バラバラ殺人」と呼ばれる遺体損壊事件は、昭和時代からありましたが、身元特定を避ける為や、強度の怨恨などの理由がありました。

最近目立つのは「処理」としてです。次の殺人に備えるためや、遺体の保管場所に困ってと言うものです。そして犯行が明らかになるたびに手口も公開され、ネットに保存されていき、次の機会(犯罪)に「ネットを見た」との犯人の証言を既存マスコミが報じることにより拡大再生産されています。

これらの報道姿勢は、いまに始まったことでありません。20世紀のころから、猟奇的犯行が発生するたびに詳細な手口を、ワイドショーはつまびらかに報道し、一方で報道に対して疑問の声が挙がるのですが、冷静な検証も検討もされないまま放置されつづけてきました。こんなところにも、既存マスコミに「自浄作用がないことを確認できます。

こんな反論があるかもしれません。「起きた事実をすべて伝えるのが報道だ」。

詭弁です。起きた事実のすべてなど報じることはできません。既存マスコミお得意の社論にそぐわない事実を省略する「報道しない自由」だけではなく、ニュースバリューと紙面、放送時間のバランスで、一部を切り取る構造になっているからです。

つまり「再犯を誘発する情報を意図的に報じているのです。

ロフトの部屋にしたのは首つりをし易いから。あらかじめネットで遺体を損壊する方法を調べていた。ツイッターで自殺志願者を誘った。その後、LINEやカカオトークで会話し安心させた。などなど。

例えばこれらが、BS番組や深夜のニュース、あるいは「検証報道」と銘打っての番組企画や記事ならば、国民の知る権利に答え、社会問題として共有する意義も十分に認めますが、繰り返しになりますが、小中学生の目に気楽に触れる時間と番組での報道にそれを感じはしません。

もちろん、罪に問うことなどできませんが、マスコミが幇助」しているようにすら感じてなりません。

次に被害拡大の舞台となったとされるSNSについても誤解が広まっています。

かつて「ウェブで政治を動かす」とのたまった人物がいました。典型的な「テクノユートピア論」に過ぎません。

「テクノユートピア論」とは技術開発が進むに連れて、そこには楽園が生まれるという妄想です。古くは足尾銅山、四日市ぜんそく、最近のサイバーアタックなど、技術の進歩が地獄絵図を描く事例は枚挙に暇がないのです。

ネットの発達によるメリットもあり、私もその恩恵で禄を食む側ながら、技術には善悪の意思も区別もなくその技術を使う人間によって左右されるものに過ぎないということです。

SNSも同じ。SNSに問題があるのではなくSNSを使う側に問題がある。これだけのことであり、同時にここに立ち、啓発と警告を繰り返さない限り、同種の事件は頻発することになるでしょう。

残酷すぎる事件につき、詳細には踏み込みませんが、被害者のなかには未成年や学生もいました。時代性からみて、その多くが「スマホ」によりSNSを利用していたとみるべきでしょう。

スマホにはGPSによる追跡機能を搭載でき、保護者や関係者により居所を追跡することが可能となります。また、とりわけ学生が、夕方どころか夜が明けても帰宅せず、スマホで連絡がとれないとなれば「事件性」を疑うべきですが、ここへの対応はどうだったのか。

実際、事件が発覚したのは、妹御と連絡が取れなくなった兄の「捜索」によります。

事件が発覚してからの警察捜査で、スマホの通信記録、位置情報などが特定されています。1人2人ならばともかく、未成年だけで少なくない数の被害者が出ています。

子供が夜になっても帰ってこない状況は異常

というコンセンサスが社会で共有されていたならば、被害の拡大は防げたのではないかと考えずにいられません。

いまどきの子供は、家族は違う。無断外泊もあれば、子供にだって人権があるから好きにさせておくべきだ。そして子供だってSNSをやる時代…それは本当でしょうか。

SNSには賢者も変態もいます。だとしたときに、一定の規制」を用意してあげることも大人の責任と愛情ではないでしょうか。自動車が普及したからと、幼稚園児に運転免許は与えません。もちろん、どんな規制をかけ、手段を講じても子供は悪さをするものです。しかし、それは「野放し」の言い訳にはなりません。

まるで「SNS」を悪役にすることで、安心のラビリンスに閉じこもっていますが、それは誤解です。SNSは道具に過ぎません

image by: Shutterstock.com

宮脇 睦この著者の記事一覧

ネット番組「みやわきチャンネル(仮)」の宮脇睦が氾濫するメディア情報から社会のホントを指摘しています。マスコミは本当の「全部」を話しません。嘘つきとは言いませんが、誠実な正直者でもありません。そして「情報」はその裏に隠されている「真実」を伝えているとは限らないのです。

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【著者】 宮脇 睦 【発行周期】 ほぼ 週刊

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