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木造建築が密集する京都では、どんな火災対策をとっているのか?

全国には木造の歴史的建築物が多数存在します。希少価値の高い建造物をいかに守っていくかが問われていますが、中でも重視すべきは、防災です。今、地元の大学とある町が連携して、歴史文化遺産を防災から守るために取り組んでいます。その取り組みが行われているのが木造の建物が立ち並ぶ京都・先斗町(ぽんとちょう)です。サバイバルマニアで防災に詳しいつぼっちさんがレポ。

 

立命館大学が取り組む京都・先斗町の防災活動

立命館大学・金度源(キムドウォン)准教授

先日、立命館大学で文化遺産防災学を研究する金度源(キムドウォン)准教授による、「木蜜地区を災害から守るための地域連携の重要性」というテーマで、京都・先斗町における防災の取り組みについて報告がありました。

木蜜地区で起こった大規模火災といえば、2016年12月、新潟県糸魚川市の火災を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。あるラーメン店の店主がガスコンロの火を消し忘れたことにより、火災が発生し、計147棟が火災被害に遭いました。周辺は築80年以上の建物が密集する木蜜地区でした。木造の建物が密集していたことが、大規模な火災になってしまった大きな原因と言われています。

 

この大規模火災の少し前、2016年7月には京都・先斗町でも火災が起こっています。先斗町は細い路地に木造の古い建物が密集する木造密集地域。風情ある街並みが人気で、地元の人はもちろん多くの観光客が訪れる人気のスポットですが、火元の居酒屋から火災が発生し、5棟まで延焼しました。

金准教授によると、そもそも、木密地区の防災上の問題点は5つに分けられるそうです。

1)木造建物は燃えやすい

2)木密は延焼しやすい

3)地震で建物が崩壊する

4)消防車が侵入しにくい

5)避難路が確保しにくい

先斗町は特に道路すべての道幅が2.7メートル以下と狭いのが特徴です。昨年の火災当時は、道が狭い上に、見物人も多く、消化活動が難航したと言われています。

「消化器の設置本数が重要です」と金氏。この火災後に、木密地区では重要な「消化器の設置場所・本数」の改善に取り組みました。

「私たちの研究では、初期段階の消火成功条件は消火器15本が出火後2分以内に火点に集結するということがわかっています」。

以前は消化器集荷8.1本だったものを、9.45本に改善し、初期消火可能率を54%から63%までにあげました。

また、この火災を教訓に、火災の教訓を受けて、地域住民、消防、警察が連携を取り、防災訓練を中心に取り組みが活発化しました。

 

「一般地域の木密地区の防災活動はどうしたらいいのか?」防災マニアが金先生に質問

先斗町の取り組みについて、もう少し詳しく聞いてみたいと思い、金先生に直接質問をさせていただきました。

 

Q:先斗町は特集な場所ですが、一般地域の木密地区の防災活動はどうしたらいいのでしょうか。

A:お店の中や家の中にすぐに手に入るような場所に消化器を備えること。消化器がある店舗が増えることによって、初期消火の確率が高くなります。そのためには小規模の店舗でも必ず消化器を置くこと。初期消火の条件としては2分以内に15本の消化器を出火地点に集結させる必要があります。大切なのは地域で初期消化ができる環境づくりが大切。そのためには多くの人に広報活動をし、自発的に消化器を備えていただくことが大事ですね。

 

 

Q:一般的な住宅で、消防車が入らない場合はどうすればいいのでしょうか。

A:基本的には2分以内に消化器を15本用意する必要があります。出火を発見し1分以内に消化器を取りに行き、そこから1分で火元へ向かうことができる場所に消化器を設置します。具体的には36メートル円の中に消化器を15本備えるべき。これは日本の消火栓の配置の仕方と同じです。消化器の寿命は10年、地域によっては寿命前の消化器を訓練に使用し無駄なく消費しているケースも。消化器で素早く消火出来るようになるには訓練が必要です。消化器が噴射されつ範囲は実は狭いんです、だいたい3メートルほどですね。

 

Q:もし、実際に先斗町で火災に遭遇したらどうしたらいいのでしょうか。

A:まずは、お店の従業員がまずは消化できる規模の出火なのかを判断しましょう。例えば、台所の火災の火が天井まで登ったとしても、消化器が15本以上あれば鎮火できる確率はゼロではありません。しかし、逆に天井まで登った火を消化するには一般市民がケガをする可能性も出てきます。それらを防ぐためにも手早く、周りの店舗に知らせて迅速な避難指示が出せるような体制づくりをするべき。まとめると、従業員の指示に従って慌てず避難することがベストです。

 

Q:京都では避難経路の標識や看板が美観を損なうとして、少ないと聞きましたが?

A:そうでもなくて、東山地区、清水寺あたりは外国語も併記されて設置されていますが、一方で小さい通りや、商店街では看板条例などで撤去されるケースもあります。先斗町に関して言うなれば、看板などはほとんどありません。観光客が避難できない可能性もあるので、そういったところは今後、道路の舗装のデザインによって避難路が自然にわかるようなことも行っているが、どこまできるかまだわかりません。

 

以上、先斗町の取り組みについて紹介しました。

今回、取材させていただいた金先生は2008年2月に南大門で発生した火事を目の当たりにし、歴史のある文化遺産が跡形もなく消失したことに、大変心を痛めたのをきっかけに防災を研究しようと決心したといいます。

火事だけに限らず自然災害は私たちの日常生活を一瞬で奪う力を持っています。しかし、人間は長い歴史の中で様々な知恵と工夫を蓄え、現在まで発展してきました。時代が変化し、いかなる生活環境の中でも先人が蓄えた知恵と工夫は必ず活かされることでしょう。また私たちも、未来への人々に少しでも多く経験値を残せていけたら、今を生きる励みになるのではないでしょうか。

 

 

image by: Pack-Shot / Shutterstock.com

 

つぼっち/防災のプロを目指すサバイバルマニア。MAG2 NEWでもサバイバル関連の記事を発表。近い将来、防災アドバイザーとして、防災教室を開いたり災害対策の講演を全国で行う予定。

ジモトのココロ

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