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三浦半島のビーチのどこかに出現。完全予約制の「焚火カフェ」

冬のビーチは考えただけで寒々としてしまいますが、そんな寒さも吹き飛ばす暖かくてユニークな過ごし方があります。それは三浦半島のビーチで開催されるという完全予約制のカフェ「焚き火カフェ」。この言葉を聞いただけでワクワクしてしまった人におすすめです。一体どんな体験が待っているのでしょうか?

 

完全予約制&1日1組限定。三浦半島のビーチに現れる噂の「焚火カフェ」

ビーチで焚火と美味しいコーヒーを楽しむ時間を提供する「焚火カフェ」。

突然ですが、焚火好きですか? 即答で好き!と答える人けっこう多いと思います。特に女子人気は絶大なものが。

私の場合、考えてみればキャンプに行くのも焚火をしたくて行っているようなもの。もちろん美味しいアウトドア料理とか、満点の星空とか、いろいろとありますがそのすべては焚火とセットなわけで、焚火なしではキャンプの楽しさは語れません。

そんな自称焚火好きを名乗る私が「焚火カフェ」の存在を知ったのは、今から数年前のこと。なんでも三浦半島の海岸に現れる「焚火カフェ」があるんだそうな。あるときひょいと現れてはビーチを素敵な「焚火カフェ」にしてくれるのだとか。ただ、カフェといっても誰でも入れるオープンカフェではなく、予約者のみ利用可能。出張焚火カフェサービスみたいなものかな?と、ずっと気になっていました。というものの、いろいろと仕事やプライベートの用事がつまっていてなんとなくタイミングを逃しっぱなしのままになっていたので、焚火が恋しいこの季節、これはもう体験してみるしかないなと思い立ったわけです。

 

問い合わせをしてみると「焚火カフェ」は完全予約制1週間前までの予約が鉄則です。開催されるのは三浦半島のどこかの海岸。季節や天候を考慮して場所が決定されます。この時期は秋谷海岸(御用邸のある葉山、一色海岸から車で10分くらいの場所です)でやることが多いとのことで、私が予約した日も秋谷海岸での開催となりました。

 

当日は快晴のお天気。最高気温予報がちょっと低めだったので、寒さ対策をしっかりとして秋谷へと向かいました。指定された午後3時前に着くと、すでに海岸にはブランケットと小さなテーブルがセットされ、お!これが噂の!と念願の「焚火カフェ」にワクワク感が高まりました。

 

この「焚火カフェ」の案内人をつとめるのは寒川一(さんがわはじめ)さん。まずはお互いに軽く挨拶を交わすと、さっそく焚火の作業に取りかかります。真っ先に目を引くのが、砂浜の上に整然と並べられた焚火道具たち

ひとつひとつ吟味して選ばれたであろうカフェ道具。

細かな箇所が革張りになっていたりして、オッと思わせる焚火道具一式。

道具の数の多さに驚きます。というか、焚火の道具ってこんなにあるんですね! ほとんどがまったく何に使うための道具なのか用途もわからないものばかりですが、それぞれ凛とした佇まいの道具たちは思わず見惚れてしまう美しさなのです。道具セットの横には焚火のために寒川さんが隣の海岸で集めてきた薪が並び、この薪が流木であることころがまたなんともおしゃれ。海辺の焚火ならではのセレクトですね。

薪用に集められた流木。ときに燃やしてしまうのがもったいない見事な形をしたものも。

 

火口用には持参した檜の木を使います。燃えやすくするため、先を羽のようにクルクルに削ります。

道具の美しさに見とれていると、その横で寒川さんは火つけ用の木の準備を始めていました。「モーラナイフ」と呼ばれる小さなナイフを取り出して手際よく木の先をくるくると削り、麻ひもは毛羽立たせて軽くふわふわとさせます。

なんだかデコレーションケーキの仕上げの作業をしているようにも見えますが、これは着火の際に火が燃えやすくするため木やひもに空気を含ませる作業。私なんかはよく新聞紙を使ったりするのですが、それじゃぁちっとも色気がありません。さすが、という感じです。

テキパキと焚火の準備を進めながら、使っている道具の説明などもしてくれます。

焚火に火をつけるのは参加者の仕事。初めての「メタルマッチ」にドキドキです。

 

そして、その準備が整うと今度は着火の練習。ライターやマッチなんぞは使わず「メタルマッチ」という道具を使って火を起こすのです。参加者が自分の手で火を点けられるよう、寒川さんが使い方を説明してくれます。まずは火を点ける練習を何度か繰り返し、OKとなれば本番。さっき寒川さんが作ってくれた火口用の木とひもに火をつけると、勢いよく火が燃えだしました。

焚火台にはきれいに薪が組まれています。これで焚火の準備はOK!

手馴れた手つきで焚火台に流木を組み火を安定させると、さくさくと次はコーヒーの準備へととりかかります。お湯を沸かすために取り出したのは「ケリーケトル」。牛乳パック1枚で500mlの湯が沸かせる最低限の道具で湯沸かしができる秀逸ケトルです。

最低限の道具でお湯が沸かせる「ケリーケトル」はアウトドアでも非常時でも使える便利アイテム。

焚火の上にポットをかけるのかと思っていたら違うんですね。「メタルマッチ」やこの「ケリーケトル」にはじまり、焚火用の「火吹き棒」などなどとにかく見慣れない道具たちを目の前に、鮮やかに次から次へと作業を進めていく寒川さんの姿に思わず見入ってしまいます。そのお姿はまさに“焚火職人”。

コーヒーの生豆。普段は焙煎されたものを買うのでお店でしか見ることがありません。

焚火職人のこだわりは道具だけでなく、コーヒー豆やコーヒーカップ、焼きりんごやホットサンドなどのサイドメニューにもいたります。「焚火カフェ」で使っているコーヒー豆は葉山の「THE FIVE BEANS」のもので、煎れてくれたコーヒーは最初の一杯はフィンランド製のハンドメイドのククサカップと呼ばれる木のカップでいただき、二杯目はより保温力のあるチタンのカップに注いでくれました。同じコーヒーなのに、カップが変わるとこうも味にも違いがでる!という体験もさせたもらった次第です。

焚火でコーヒー豆を焙煎するというのも初めての体験。使っている味のある焙煎機も素敵です。

焙煎終了。フレッシュなコーヒーの香ばしい香りがなんともいえません。

 

実は、寒川さんの「焚火カフェ」はワークショップ形式であることも特徴で、ご自分で手を動かしながらも、道具の使い方や作業を説明してくれる形で進みます。先ほどの火おこしに加えコーヒー豆を焙煎したり、ミルで挽いたり参加者が作業を担当するパートも。次から次へと取り出される道具の数々にこちらは本当に目が釘付けで、いちいち感動したり、質問攻撃を浴びせてしまうのですが、どんな疑問にも丁寧に答えてくれる寒川さん。

 

晴れた日の冬のビーチは、空気が澄みわたり最高に気持ちがよい場所です。

聞けば、「焚火カフェ」は今年でもう12年目になるのだとか。いただいた名刺には「アウトドアライフ・アドバイザー」の肩書きの文字があり、アウトドアライフに関わる様々な活動を行われていますが、その核であり、ご自身のライフワークであるのが「焚火カフェ」だと話してくれました。

 

もともとアウトドア用品を販売するお店をやっていて、そこで販売している商品をデモンストレーション的に紹介するため焚火のワークショップのようなことをはじめたのがきっかけなのだそう。

なんとなく人から人づてに「焚火カフェ」のことが伝わり、噂を聞きつけた人たちから問い合わせが入るようになり、今に至るという経緯だそう。簡単に言えば、とにかく焚火が好きで好きをそのままライフワークにしてしまったようにも聞こえますが、実はこの「焚火カフェ」には寒川さんの哲学がたくさんつまっているんです。

焚火の中に仕込んだ小さなダッチオーブンの中身は、自家製のラムレーズンに漬けた焼きりんご。

ビーチでいただく挽きたてのコーヒーと焼きりんご。シンプルで贅沢な組み合わせです。

僕はずっと防災のことを考えているんですよ」と話す寒川さんは、防災はもっと日常生活の中にあっていいし、身近なものであるべきだと言います。

 

「アウトドアには防災の基本が全部入っています。例えばこうやって何もないところから火を起こすってこともそうだし、道具にしてもそのまま防災グッズとして使えるものばかり。別にエキスパートになる必要はないけれど、何事も体験したことがあるのとないのとでは大きく違いますよね。何か災害に見舞われたときに、少しでもアウトドアの知識があればパニックに陥ったりもしないと思うんですよ」と寒川さん。

だんだんいい感じに陽が傾いてきましたが、これからが一番のお楽しみタイムです。

日本のようないつどこで大きな地震が起きてもおかしくない“地震大国”に生きるということは、常に防災の意識が必要だということはみなさんもご存知のとおり。2011年の震災のときには、首都圏近郊でも大規模な停電があり日頃からの備えが大切だということを痛感した人も多いのではないでしょうか。

 

防災対策やそれに対して意識を持つことはとても大切だけれど、毎日毎日万が一のときに備えてという気持ちでいることはできないし、“防災”“防災”と叫んでばかりいるのも楽しくないので、それならアウトドアで遊びながら防災時に役立つ知識を身につけてはどうだろうか、ということを世の中に向けて真剣に提案されている方なんです。そして、これが寒川さんの開催する「焚火カフェ」がワークショップ形式である理由。もちろん、ワークショップといってもあくまでもテーマは「焚火カフェ」なので、学びのレッスンという雰囲気ではありあせん。参加者たちがそれぞれ自由に「焚火カフェ」での時間を過ごす中で、自然と火の起こし方だったりアウトドア用のナイフの使い方だったりを見聞きすることができるようになっているという塩梅です。

焚火で暖をとりながら、少しずつ色彩を変えていく空と海を眺めて過ごします。

「山に登るとか、キャンプに行くとか本格的なアウトドアはなかなかできないという人も多いとおもいます。東京で日々忙しく過ごされている方々にとってたまの週末にこうやって1時間くらいかけて海に遊びに来て、午後から夕暮れにかけてのひととき焚火をしながら過ごし、陽が沈んだあとも色彩を変える空を眺めのんびりとした気分になって帰る。これだけでもけっこう満足度は高いと思うんですよね。なので、そんな気軽にできるアウトドア体験の中で遊びとして色んな知識を見聞きしてもらえればいいなと思っているんです。」

 

寒川さんの言葉になるほど、と頷きました。日頃はモノが溢れかえる日本ですが、何か起きたときにはあっという間に店頭から姿を消します。アウトドアの遊びの延長で、ライフラインを確保するための道具も個人個人が揃えておけば、いざというときに必ず役立つというわけです。

焚火を囲みながら交わす会話も「焚火カフェ」の楽しみのひとつ。

災害がおきたときには物資も人手も圧倒的に足りなくなるので、それぞれがギアを持っていることはとても大切です。寒川さんの「焚火カフェ」には、海岸で焚火をしながら過ごすリラックスを楽しんでもらいながら、実はこんなメッセージが潜んでいたんですね。

ビーチから眺めるサンセットは毎回違う景色に染まり、飽きることがありません。

「と言いながら、毎日、大好きな焚火をして楽しんでいるだけですよ」と笑う寒川さん。とにもかくにも基本は“ナチュラルボーン焚火ラバー”であることは間違いありません。いつでもどこでも焚火ができるよう海外に行くときも焚火グッズを持参していくというのですから。荷物検査が厳しいこの時代、何度もセキュリティで足止めされ大変な思いをされた体験もあるそう。そんな焚火のこぼれ話にはじまり、本当に使えるアウトドアグッズの話、これまでに眺めた素晴らしい風景の話、そしてアウトドアの哲学について…などなど話題はつきずどのテーマにおいてもかなり面白い話が聞けるとおもいます。

陽が沈んだあと空に広がる余韻をたっぷり楽しむ、シンプルで贅沢な時間。

なんだかあれこれと書きましたが、「焚火カフェ」の楽しみ方は、単純に焚火がしたい!とか、ビーチで優雅なサンセットタイムを過ごしたい!とか、自分で焙煎したコーヒーを飲んでみたい!とかでいいのです。お客さんにはリピーターの方も多いそうで、毎年記念日にご夫婦で予約される方もいらっしゃるとかで素敵です。「焚火カフェ」の使い方としてはそちらのほうが王道かと。ただ、純粋に焚火タイムを楽しむという目的はもちろん、アウトドアのことをもっと知りたいとか寒川哲学に触れてみたい!とか、そんなテーマで参加するのもあり、な「焚火カフェ」だとおもいます。

ちなみに女性グループでの参加もわりと多いそう。気になった方は臆することなく、まずはコンタクトをとってみることをおすすめします。

 

 

【基本料金】
2〜3人での利用:1人当たり3500円
4人以上での利用:1人当たり2500円
(体験レクチャーつき)

メニュー
★焚火焙煎コーヒー:ポット4杯分2000円
★スウェーデンスタイル焚火コーヒー:カップ6~8杯分2000円
★焚火チョコラテ:カップ4杯分2000円
★焼きリンゴ:1000円
★ホットサンド:1000円
★焼きマシュマロ:500円
★焼きソーセージ:1000円
★焚火POPコーン:500円
★自家製ホットワイン:500円

【所要時間】日没前約2時間
【注意事項】飲食物の持ち込み不可、雨天中止(雨天時はキャンセル料なし)

公式フェイスブック(お問い合わせはフェイスブックから)

 

 

取材・文・写真 / 小林繭 

※この記事はジモトのココロで掲載されました(2018年)

 

小林繭

小林繭(こばやしまゆ) / 東京生まれ、湘南生息中のフリー編集ライター。沖縄、ハワイ、島、旅モノやロハスネタを発信中。All About沖縄ガイド。目下、踊れる編集ライター目指し趣味のフラメンコに取り組む日々。http://allabout.co.jp/gm/gt/110/

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