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服も「インスタ映え」アイテムの一つ。変わりゆく流行の方向性

昨年の流行語大賞にもなった「インスタ映え」。今では「インスタ映えする撮影術」などの特集を組むと、若者向けのファッション誌がバカ売れするのだとか。今回のメルマガ『j-fashion journal』では、著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、インスタグラムの流行で拡大する「ワンショット消費」と、それに伴う流行の変化について興味深い考察をしています。

ワンショット消費への対応

1.人生の目的は「インスタ映え」?

インスタ映え」という言葉が流行っている。画像を共有するSNS、インスタグラムにアップした時に、写真が美しく見えるような背景やファッションメイク料理商品等を「インスタ映え」と呼ぶ。

インスタ映えするような背景や空間を用意するだけで観光客が集まることもあるし、何気ない景色がインスタで有名になり観光名所になることもある。インスタ映えする料理があれば、遠方から客が押し寄せる。

最近では、都心のナイトプールが話題になった。夜のプールがインスタ映えするということで、女性が押し寄せ、水着の写真を自撮りしているのだ。

プールに行くのも観光地に行くのも目的は写真を撮ってインスタに上げることだ。食事もインスタに上げてしまえば、目的は達成される。

また、自撮りばかりでは、友達がいないと思われる。そこで、レンタルで友達を借り友達とのリア充ぶりを撮影しインスタにアップするという。

こうなると、人生の目的さえ、インスタなのではないかと思われる。

インスタ映えする仕事。インスタ映えする会社。インスタ映えする恋人。インスタ映えする家族。インスタは人生のアルバムなのだ。

2.インスタ映えするアパレルとは?

アパレル企業は売れる服を目指している。インスタ映えする服を目指しているわけではない。当然だが、売れる服とインスタ映えする服は異なるだろう。

売れる服ではなく、インスタ映えする服を狙ったブランド開発があっても良いのではないか。

たとえば、カラーを変える。トレンドカラー、売れるカラーではなく、インスタ映えするカラーを基本とする。

デザインがシンプルなら、色で遊んだ方が面白い。あるいは、基本的なデザインだが、プリントで遊んだもの。これらならインスタ映えするのではないか。

あるいは、3Dプリントのような視覚的なトリック。写真に撮ることを前提にするなら、デジタルプリントであらゆる素材感を表現できるだろう。

3.アパレルのワンショット消費

インスタ映えは、購買行動にも変化を与えている。顕著な事例がワンショット消費である。

一度友人に見せた服は、次回からは着ないという人がいる。同じ人に、同じ服を見せないというのだ。

これがインスタでも行われている。つまり、一度インスタに上げた服は二度と上げない。更には、一度インスタに上げた服は捨てる。あるいは、メルカリで売ってしまう。これをワンショット消費という。

ワンショット消費を基本に考えれば、服を購入する必要もない。レンタルで十分である。あるいは、試着でも良いのかもしれない。

インスタ映えする服と、売れる服とは異なる。したがって、売れる服ばかりが並んでいるショップは、インスタ映えしない。個性的なデザインの服の方がインスタ映えするだろう。

そうならば、個性的な服だけを揃えたブティックで、会員制で試着撮影を認めてはどうだろうか。

外出したいのならば、ショートタイムのレンタルでもいい。たとえば、日帰りならいくら、一泊ならいくら、という設定をする。

このコンセプトは、通常のショップにも応用できる。イベントとして試着撮影会を行うのも良いだろう。

最早、欲しいのは商品ではなく画像データなのだから。

4.フェイクなドレスで遊ぼう!

インスタ映えだけを考えるならば、服に要求される機能性や保温性は関係ない。限りなくビジュアルな服。つまり、舞台衣装に近いものになる。これは、ある意味でコスプレ衣装だ。ファッションはコスプレが主体になるのかもしれない。

ユニクロのヒートテックやエアリズムなど、機能的な肌着が普及した結果、アウターは機能よりも視覚的な意味合いが強くなっている。それが更に加速するかもしれない。

極論すれば、不織布でできた使い捨てのドレスでもいいし、後ろ身頃がなくてもいい

また、デジタルプリントを基本にするならば、発色が良くて安価なテキスタイルでいい。

通常着用するのは、安価なファストファッションかベーシックなカジュアルウェア。見栄を張るならラグジュアリーブランド。インスタの中で遊ぶのであれば、フェイクなドレスでいい

インスタ映えするフェイクなドレスならば、資本力は必要ない。個人が作ってインスタ上で勝負することが可能だ。

デザイナーのビジネスモデルも、本物の服を作って売るのではなく、まずはフェイクからスタートする。その上で、投資を集めて本物のアパレルで勝負するというのはいかがだろうか。

image by: Instagram(pecotecooo)

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