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セブンイレブンが「チンしなくても美味しい弁当」を作った本当の狙い

コンビニ業界の知られざる裏側を、内情に詳しいライターの日比谷新太さんがレポートする当シリーズ。前回までの駅ナカコンビニ・ニューデイズの歴史に続き、今回取り上げるのはセブンイレブンが発売を始めた「温めなくても美味しい!シリーズ」について。コンビニ弁当はチンして食べるものという、これまでの常識とは逆を行くこれらの商品はなぜ登場したのかを、日比谷さんが詳しく解説しています。

「温めなくても美味しい!」弁当の狙いとは?

コンビニのお弁当といえば、食べる前に電子レンジでチンして温めるのが当たり前といえば当たり前。また最近ではチルド弁当など、温めないと食べられない商品も多くなっています。

そんななか、その真逆ともいえる“温めなくても美味しい”と謳う一風変わったお弁当が登場し、話題となっているのをご存知でしょうか。

セブンイレブンがこの夏から販売を始めている「温めなくても美味しい!」シリーズ。2018年8月下旬の現時点で一部地域にて発売されているのは『温めなくても美味しい!きのこごはん弁当』のみで、少し前までは『温めなくても美味しい!熟成銀鮭幕の内』『温めなくても美味しい!鶏五目ごはん弁当』といったラインナップも存在していたようです。

この「温めなくても美味しい!」シリーズですが、一体どういった思惑で登場したものなのでしょうか。

その狙いのひとつとして考えられるのが、いわゆる「置き弁需要」です。つまり、職場や学校の近くに飲食店や商店がないため、朝の通勤通学時にコンビニに寄って弁当を買い、ランチタイムまで待って食べるという方。それでいて職場などに電子レンジがないという方にとっては、これらはピッタリの商品といえます。

そのいっぽうで、客層ということで考えると、これは「シニア層」向けの商品であるとも言えます。

これまでコンビニ弁当のメイン客層といえば、ブルーワーカーや学生など圧倒的に男性客でした。ところがこの客層が少しずつ減少しはじめたため、コンビニ業界(特にセブンイレブン)は、シニア層・主婦客層を獲得するためのアクションを行っています。実際「温めなくても美味しい!」シリーズの中身を見てみると、若者向けのガッツリメニューというよりも、色とりどりのおかずが揃ったやや渋好みのメニューです。その点もそういった層を意識したものではないかと考えられます。

コンビニ業界が取り込みを狙う「買い物難民」

ここ最近の動きとして、いわゆる買い物難民対策としてのコンビニの存在が大いに見直されています。

ドラッグストアの伸長なども影響し、スーパーの店舗数が一時期と比べて減っている昨今。歩いて行ける近場のお店がなくなっていくことで、特に困るのがクルマを運転できない高齢者たちです。

変わって店舗数を増やしているドラッグストアですが、そこで購入できる食品類は「必要最低限」かつ「NB商品」です。このため結果として、夕食需要に対応できる買い物場所は減ってきている現状です。

こういった層に着目し、取り込みを図っているのが現在のコンビニ業界。現に、コンビニが40年間培ってきた「中食クオリティ」(添加物なし等)は、次第にシニア層にも認知され、受け入れられて来ています。

具体的な例を挙げるとすれば、セブンイレブンの「セブンプレミアム」などは、まさにそういったシニア層を狙った商品群。例えばレンジでチンしてすぐ食べられる「さばの味噌煮」などの魚の惣菜系は、隠れた売れ筋商品となっています。

image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

日比谷 新太(コンビニ業界ジャーナリスト)

文/日比谷 新太(ひびや・あらた)
日本のコンビニエンスストア事情に詳しいライター。お仕事の依頼はコチラ→のメールまで: u2_gnr_1025@yahoo.co.jp

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