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現役医師が警告。パチンコでギャンブル依存症になった人の末路

賭け事がどうしても止められず、そのために借金を重ねるなど、自らの生活を破滅にまで追い込んでしまうギャンブル依存症。現役医師の徳田安春先生によると、これはれっきとした精神疾患であるとのことで、そのオーソドックスな治療方法を自らのメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』にて紹介しています。

医師もかかるギャンブル依存症は病気である

私の先輩にA医師という優秀な内科医がいます。医学知識が豊富にあり、患者さんのケアの質もよく、病院の職員からも慕われていました。しかし、その医師にはギャンブル依存がありました。ギャンブル依存症は、現代医学で認定されている立派な疾患です。たとえ医師であっても、病気に負けることがあります。 仕事中に病院を抜け出して、パチンコやスロットなどのお店によく出かけていたのです。

ある日、重要な病院業務がある時間帯に、A医師がギャンブル店に出かけていたのが上司に見つかり、最終的には責任を取ることになって病院を辞めました。その後、配偶者とも離婚し、家族は離れていきました。ギャンブル依存症は精神を荒廃させる病気であるだけでなく、その人の社会経済的状況も破壊していきます。

A医師はその後、パチンコ中に倒れて死亡しました。遺体解剖の結果、急性大動脈解離でした。パチンコ店内での長期にわたる受動喫煙の影響で、動脈硬化が進行していました。動脈硬化でボロボロになった大動脈を解離させた直接の原因も、ギャンブルだったと思います。パチンコやギャンブルで当たりを出したり大きなハズレを出したりすると、交感神経が緊張しアドレナリンの濃度が上がります。アドレナリンは血圧を上昇させ、動脈硬化でボロボロになった大動脈を解離させるのです。

ギャンブル依存症の疫学

先進国の統計によると、100人に1人はギャンブル依存症を持っています。そして、100人に3人はギャンブル依存症の予備軍です。 ギャンブル依存症の危険因子には、遺伝的なものと環境要因があります。遺伝的要因には、脳内での神経伝達物質に対する反応性の違いなどがあります。

環境要因には、社会的孤立失業経済的困難などがあります。多額の借金を抱えている人は、ギャンブル依存症のリスクは高くなり、それによってさらに借金が増えていく悪循環をきたしている人もよく見られます。パチンコやスロットは、長期間にわたってやればやるほど負ける確率が高くなり、全財産を使い果たすケースもあるのです。

また、環境要因にはギャンブル産業の広告も含まれます。新聞や雑誌、ネット上などの広告に惹かれて、お店に足を運ぶ患者さんが多くいるのです。ギャンブル依存症の治療を専門に行っている医師や研究者たちは、ギャンブル産業の広告は禁止すべきと考えています。子どもたちへの影響も考えると、スポーツ関連のスポンサーとなることも禁止すべきと考えています。

ギャンブル依存症の治療

心療内科や精神科、総合診療科ではギャンブル依存症の治療を行っているところもあります。まず、認知行動療法は有効です。これは、主として臨床心理士が行うものですので、心理カウンセリングを提供している医療機関で受けることができます 。同じ悩みを抱える患者さんたちと共に、認知行動療法を集団で提供しているところもあります。

ギャンブル依存症には薬物療法も有効です。よく使われる薬にはナルトレクソンがあります。これは、アルコール依存症に対して使われるお薬ですが、ギャンブル依存症にも効果があります。副作用が比較的少ない薬なので、重度のギャンブル依存症の患者さんに適応となります。

重度のギャンブル依存症の患者さんに対しては、ギャンブル刺激のコントロールが必要です。具体的には、ギャンブル産業が出す広告を掲載しているメディアを見ないようにアドバイスします。さらには本人の同意の上で、また家族の協力も得て、「現金」に対するアクセスも制限してもらうケースもあります。このような治療行うことによって、4人中3人はギャンブル依存から脱出することが可能になります。ギャンブル依存症の人が周りにいたら、ぜひ医療機関を受診するように勧めると良いでしょう。

文献
Grant JE, Kim SW, Hartman BK. A double-blind, placebo-controlled study of the opiate antagonist naltrexone in the treatment of pathological gambling urges. J Clin Psychiatry. 2008 May; 69(5): 783-9.

image by: Shutterstock.com

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