健康のため会社終わりにスポーツジムに通いはじめたものの長続きしないという人や、子育て等で土日も運動する時間が取れないという人に向け、「オフィスの会議室をスポーツジムに」という新しい形の福利厚生プログラムを提供している企業が話題となっています。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』ではMBAホルダーの青山烈士さんが、革新的とも言えるその企業の戦略・戦術を紹介しています。
他社とは異なる場所でサービスを提供する
新しい形の福利厚生プログラムを提供している企業を分析します。
● スポーツイベントの企画・運営などの事業を行うブーストが展開する福利厚生プログラム「BOOSTアクティブ」
戦略ショートストーリー
社員の健康管理を重視する企業をターゲットにインストラクターのネットワークに支えられた「社員のみんなが身近にスポーツを楽しめる」等の強みで差別化しています。
様々な職場の課題に対応する多数のプログラムを用意し、「会議室がスポーツジムに」という売り文句で注目を集めています。
■分析のポイント
他社とは異なる場所でサービスを提供する
今回は「会議室がスポーツジムに」なることの価値を考えてみましょう。
ユーザーにとっての価値はまず、「気軽さ」があげられます。仕事終わりにジムに寄るのは、面倒ですからね。特に仕事で疲れていると億劫になりがちですので、いろいろと理由をつけて結局ジムへは行かないというパターンに陥りそうです。
しかし、社内にジムがあれば、ジムに行くのが億劫な方にとってはだいぶハードルが下がると思います。そして、会社の同僚も参加することになりますので、一人で通うよりも一体感が生まれやすいですしそのことは、「続けやすさ」につながりそうです。
一方で提供する企業(ブースト)にとっての価値は、通常のジムとは異なる場所でサービスを提供することで競争を避けられることがあげられます。当たり前ですが、既存の大手スポーツジムは充実した設備を用意し、ジムに来てくれた方向けにサービスを提供しています。多くの方が会員になってくれるよう集客を図り、会員になってくれた方がリピートしてくれるよう注力しているわけです。ですから、インストラクターを出張させることはできるかもしれませんが、ジムに来てくれた会員をサポートすることが優先されますので真似はしにくいと思います。
ブーストは、ジムを持っているわけではないため、会議室のスポーツジムに注力できます。このことが差別化につながり、大手がカバーできていない消費者層との接点を持つことにつながっているということです。
さらにいうとブーストが想定している利用者は、既に個人でジムに行っている方ではなく、運動したいと思っているけどジムにいくのは億劫な方ですので、そういった方はなかなか自分の財布からジムの月謝を出すには至りにくいと思われます。ですから、会社が費用を負担してくれることでよりハードルが下がるわけです。
つまり、ブーストは個人の財布でなく、会社の財布を狙ったことにより、一部の社員だけでなく「社員のみんなが身近にスポーツを楽しめる」ということを実現できるのです。
まだ、BOOSTアクティブは新規のサービスですので今後に注目していきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):福利厚生プログラム
- 競合(お客様の選択肢):福利厚生プログラムを提供している企業やスポーツジム など
- 状況:福利厚生代行業の市場規模は拡大傾向のようです。
■強み
「社員のみんなが身近にスポーツを楽しめる」
- 健康への意識が高まる
- 一流のインストラクターから様々なスポーツのレッスンを受けることができる
- 身体を動かすことが習慣になりやすい
- 社内の人間関係を活性化させる
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
- 多数のスポーツインストラクターのネットワーク
- 社内運動会などで培ったスポーツイベントの企画・運営ノウハウ
上記のような、ネットワークやノウハウが強みを支えています。
■顧客ターゲット
- 社員の健康管理を重視する企業
- 福利厚生として社員がスポーツクラブに通う費用を会社が一部負担しているものの、参加率が低く、そのことを課題と捉えている企業
◆戦術分析
■売り物
「オフィスでスポーツをする福利厚生プログラム」
- 様々な職場の課題に応じた最適なインストラクターを派遣
→デスクワークの時間が長く、腰痛持ちの人が多い職場や子育て世代の人が多く、土日に運動をする時間が取れず、運動不足になりがちな方が多い職場など - 人気のヨガやピラティスはもちろん、キックボクササイズ、ZUMBA(ダンスエクササイズ)、フットバッグなど、普段行なう機会の少ないプログラムも用意
- 週1回、2回、または月1回など、依頼企業のペースに合わせてプログラムを組みます。また、実施場所、開始時間の検討や、何度か行った後、人気のプログラムを多くする事なども可能。
■売り値
- 60分のレッスンを5万円で体験できる「初回お試しプラン」を用意
■売り方
- 「会議室がスポーツジムに」という売り文句で注目を集め、複数のメディアで取り上げられています。
■売り場
- 会社の会議室や執務スペースを活用してプログラムを提供
※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
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