人材育成にはコミュニケーションが不可欠というのは周知のことですが、そのためには相手の話を傾聴することが重要になってきます。今回の無料メルマガ『起業教育のススメ~子供たちに起業スピリッツを!』では、長く人材育成に関わってきた石丸智信さんがたくさんの研修に参加してきた経験を活かして、積極的に傾聴していくために取り入れたい10のポイントを紹介しています。
相手の話を傾聴するには、どうしたらいいのだろう
私自身、これまでに、中小企業の経営者や管理者、管理者候補などが集う人材育成研修機関において、聴講担当、第三者評価報告担当等として、多くの研修を聴講する機会がありました。
その中で、主に職場のリーダーを対象とした研修を聴講していると、メンバーとのコミュニケーションに関する内容が、たびたび出てきました。また、受講者同士のディスカッションを聴いても、メンバーとのコミュニケーションの難しさなどについてのお話が出ていました。そして、メンバーとのコミュニケーションを考えていく上で、メンバーの話を積極的に傾聴していくことの大切さについて学ぶ講義や演習がありました。
本号では、聴講した研修内容を踏まえて、積極的に傾聴していく際のポイントについて考察していきたいと思います。
「相手の話を“きく”」と聞いて、この“きく”には、どの漢字を当てはめるでしょうか。一般的には、「聞く」という漢字を当てはめることが多いのではないでしょうか。他には、「訊く」「聴く」という漢字を当てはめる方もいらっしゃるかもしれませんね。
「相手の話を“きく”」といっても、相手の話を聞き流すことや、自分の聞きたいことだけを訊くことは、もちろん、相手の話を傾聴していることにはなりませんね。
「傾聴」を分解すると、耳と目と心を傾けて、相手の話を聴くことと解釈することができます。積極的に傾聴していくには、まず、相手が話している内容を正しく把握することが必要になります。また、相手が話している内容だけにとどまらず、相手が話している時の気持ちなども察して、共感的に理解することが大切になってきます。
ここで、相手の話を積極的に傾聴するポイントを10個挙げていきます。
- 自分の意見や考えを抑える
- 相手の言わんとする意味全体を聴くようにする
- 相手の言葉以外の表現を聴こうとする(相手の心を聴く)
- 批判的、忠告的、説教的態度は避ける
- 感情的には決してならない
- 理解のためのフィードバックを行う(相手の言ったことを繰り返す)
- 相手に充分な関心を持つ
- 相手の話に集中する
- 相手の話が理解できない時は、率直に聴き返す
- 感謝の気持ちで別れる
上記のポイントについて、何点か個別に挙げて、少し考察していきます。
自分の意見や考えを抑える
自分が話をしているのに、いつの間にか、相手が自身の意見や考えなどを述べている、という経験、または、その逆の経験があるかもしれません。
自分の意見や考えを抑える、とありますが、自分の意見や考えなどを無くして、相手の話をすべて受け入れるということではありません。
相手の話を傾聴する時には、一旦、自分の意見や考えなどを横に置いて、相手の話をありのまま受け止めることが大事だと言えます。
「相手は、…という意見、考えを持っているんだな」などというような姿勢で、相手の話を傾聴することが必要ではないでしょうか。
相手の言わんとする意味全体を聴くようにする
相手の話している内容を、ある部分の内容だけを取り上げて、相手の意見全体として捉えてしまうことはないでしょうか。ひとつひとつの言葉を捉えるのではなく、全体を通じて「相手は何を言いたいのか」という視点を持つことが大切になるのでしょうね。
また、相手の言わんとする意味全体を聴くようにするには、相手が発する言葉が意味するところを、言葉そのものの意味だけではなく、相手の立場に立って、その裏側にある考えや気持ちなども察しながら聴くことも大切になりますね。
相手の言葉以外の表現を聴こうとする(相手の心を聴く)
相手が話している時に、その内容が、その人の表情、雰囲気などから本心、本音ではないな、と感じることもありますね。
上記の「傾聴」を分解した時にも触れましたが、まさに、耳だけではなく、目や心を使って、相手の話を聴くことです。相手が発する言葉だけではなく、相手の表情や目線、態度、雰囲気などを目でしっかりと見ることが必要になります。
そして、自分の心をオープンにして、相手の気持ちなどを心で感じることが大切になると思います。
「批判的、忠告的、説教的態度は避ける」
私たちは、相手の話を聴く時に、ここで挙げられている批判、忠告、説教的な態度、姿勢で聞いていないでしょうか。とりわけ、自分の考え、意見などとは違う話しを聴く際に、こういった態度、姿勢になりがちではないでしょうか。
批判、忠告、説教的な態度、姿勢を避けるためには、自分の固定観念などに縛られないことが重要だと言えます。相手の話を自分のモノサシだけで判断してしまうと、どうしても批判、忠告、説教的な態度、姿勢が出てしまい、相手にも伝わってしまいます。
まずは、自分の持つ経験則や知識などの固定観念などで判断せずに、「こういった考え、意見もあるんだなぁ」と、相手の話を傾聴する姿勢が大事になるでしょうね。
「感情的には決してならない」
自分の感情、とりわけ、怒りの感情に流されてしまい、相手の話が耳に入らなかった、という経験はありませんか。私自身も、こういった経験があります。
相手の話を傾聴する時に、お互いに感情的になっては、いい方向に進まないですね。感情的になりそうな時こそ、第三者的視点、客観的な視点から、相手の話を傾聴してみることも大切だと言えるのではないでしょうか。
「理解のためのフィードバックを行う(相手の言ったことを繰り返す)」
相手の話を聴いて、理解した、分かったつもりでいたけれど、実は、分かっていなかった、間違っていた、という経験はありませんか。反対に、自分の話が相手に伝わっていなくて、相手が理解していなかった、という経験もあるかもしれません。
こういったことを防ぐためにも、相手に対して「あなたの話を聴いているよ、理解しているよ」というサインを示すことが必要になりますね。例えば、「好きな食べ物は何ですか?」と訊いて、「リンゴが好きです」と相手が答えたら、「リンゴが好きなんですね」というように、相手の言葉をオウム返しで返すことも、相手の話を理解していることを示すことになります。
また、相手の発した言葉を直接返すだけでなく、相手の話す内容を要約して相手に返すことも、相手の話を理解していることを表すことになります。
「相手に充分な関心を持つ」「相手の話に集中する」
この2つのポイントは、連動しているように思います。相手に対して関心を持っていれば、相手の話を集中して聴くことができるでしょうし、逆に、関心がなければ、相手の話を集中して聴くのは難しいですね。
相手の話の内容そのものに関心を持つというよりも、「この人は、どんな考え、意見があるのだろうか、どんなことに興味、関心があるのだろうか」などと、目の前の相手自身に関心を持つことが、その人の話を集中して聴くことにもつながってくるのではないでしょうか。
「相手の話が理解できない時は、率直に聴き返す」
例えば、仕事において、上司や先輩などの相手の話に対する理解を曖昧なままで、その後、間違いやミスにつながったということはありませんか。
このポイントは、上記の「理解のためのフィードバックを行う」にも通じますが、聴き手は、理解できないところ、疑問が残るところなどは、素直に訊くことが必要ですし、話し手も、「なぜ理解できないんだ!分からないんだ!」と突き放すのではなく、その質問に対しては、真摯に答えることが重要だと言えますね。
「感謝の気持ちで別れる」
相手の話を傾聴するのに、「感謝して別れる」というのは、イメージしにくいかもしれませんね。このポイントは、相手に対して「話を聴かせてくれて、ありがとう」というような言葉をかけたり、握手するなどの態度で示すことです。
相手が話してくれることを当たり前だと思わずに、「話してくれてありがとう」という姿勢を持つことによって、相手も「また話してみよう」という気持ちになってくれると思います。
これからは、あらゆる場面において、ますますコミュニケーション力が求められてくるでしょう。
コミュニケーションというと、話すことに焦点が当たりがちだと思いますが、相手の話を聴く、傾聴することも、コミュニケーションを円滑にしていく上で、とても大切になってくるのではないでしょうか。
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