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罰則なしの「いじめ防止対策推進法」を隠れ蓑にする卑怯な私学

ものごとを前に進めるのに、法律やルールの整備は大切です。しかしそれだけでは人々の意識や行動を変えることはできません。今回の無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』では代表の井澤一明さんが、「いじめ対策に係る事例集」などいじめ撲滅に向けた前向きな取り組みと、残された課題について論じています。

もう一歩、前へ

9月25日に文科省が、「いじめ対策に係る事例集」を公開したことが報道されました。47のいじめの具体例を取り上げ、経緯や対応をまとめたもので、ネットでも公開されています。文科省の「いじめ防止対策協議会」の提言を受けて「初等中等教育局児童生徒課」が作成したもので、いじめの防止、早期発見、対処などの点で特に優れていると判断した事例や学校現場において教訓となると判断した事例をまとめ、それぞれを、

  1. いじめの定義・認知
  2. 学校のいじめ防止基本方針
  3. 学校いじめ対策組織
  4. いじめの未然防止に係る取組
  5. いじめの早期発見
  6. いじめへの対処
  7. いじめの重大事態

に分類したとのことです。「どうせ、良いことばかりで先生を褒めまくったお手盛りの事例だろう」という先入観もあったのですが、実際には、ややはしょりすぎた事例もありますが、「担任は遊びの中の出来事として報告しなかったという正直な話も掲載されておりますし、学校の対応のまずさも浮き彫りにされている事例もしっかりと記載されています。文部科学省では、「現にいじめに苦しんでいる子供たちのため、悲惨な事件を二度と繰り返さないために、事例集を効果的に活用し、いじめ対策の一層の充実に取り組んでほしい」としているとのことで、いじめに対する行政、文科省の姿勢が変化してきていることが感じられます。この機会に、教師へのいじめに対する責任があることのもう一歩の浸透とさらに踏み込んだ対応を学校には期待したいところです。

9月には、沖縄で被害者のお父さんと記者会見をしてまいりました。ご連絡をいただいたのは6月です。すでにこの段階で、連絡をいただいた後も、お父さんは何度も学校と話し合い、県の私学課にも足を運んでおりました。国会議員の方にも連絡を取り文科省に直接、訴えることもいたしました。しかしながら、学校との話し合いは遅々として進まず、お子さんの将来を考えて、結局、夏休み中に転校という方法をとることにしました。この先の展望が開けない中で、やむなく記者会見というかたちでマスコミの協力を仰いだのです。

沖縄タイムス社がとりあげてくれたのですが、沖縄の知事選の影響もあり、やや遅れて記事になりました。その結果、学校は早急に第三者委員会を設置するということを決定いたしました。

まだ、終わったわけではありませんが、この事件を通して、私たち保護者としては知っておく方が良いかなと感じることが2点あります1つは、文部科学省は思ったより冷たい」ということです。電話を受けた担当者次第のことが結構あるのです。私たちの扱った相談の中には「文科省に電話したら丁寧に対応してくれて解決できた」という相談もかなりあります。しかし、電話に出た担当者が違うと、残念なことに、「お話は伺いますが、うちには指導する権限はありません」と突っぱねられる場合も多いのです。

ただ、文科省の影響力は強いものがありますので、いじめで困ったときには文科省に相談することも頭にいれておくと良いと思います。文科省としては、保護者はどうしようもなくなって助けを求めているんだということを真摯にうけとめ、しっかりと対応するように省内を徹底していただきたいものです。

もう一点は、「私学」への対応です。公立の場合は、学校の後ろには市町村の教育委員会がありその後ろには都道府県の教育委員会が控えています。ですから、学校が対応しない場合には、教育委員会に相談することで解決されることがほとんどです。しかし、私立の場合は、学校に「対応しない」という態度を取られた場合、相談する先が殆どありません。教育委員会に相談しても「管轄外」とされてしまいますし、議員さんに間に入ってもらうこともできません。都道府県の私学課が相談にのってくれることもありますが、まれなことです。したがって、今回のように新聞等のマスコミの方の力を借りなければ話が進まない場合が多いのです。

「いじめ防止対策推進法」という法律はあるのですが、法律を遵守しない学校があるのです。つまり、罰則がないことで、いじめに対応しない学校は野放しになってしまっています。子供たちのためにも、これをそのままにしておいてはいけないと思っています。私たちは「いじめ防止対策推進法」に「違反した教師への処罰規定」の制定を求めていますが、組織としての学校に対しても明確な処罰等の規定を盛込むべきだと考えます。

学校は、文科省の「いじめ対策に係る事例集」も公開されたことですから、この沖縄の方の事例に見られる「先のばし戦略など取らないでいただきたいものです。

秋です。読書の秋、文化の秋、スポーツの秋、子供たちにも楽しい季節だと思います。いじめなんかない秋をおくらせてあげたいものです。気になることがありましたら、ご遠慮無くご相談いただければ幸いです。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明

image by: Shutterstock.com

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「いじめ」と学校の「いじめ隠ぺい」から、子供たちを救うための、父母によるネットワークです。いじめの実態やいじめ発見法、いじめ撃退法、学校との交渉法、いじめ相談などを掲載します。

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【著者】 いじめから子供を守ろう!ネットワーク 【発行周期】 週刊

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