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世界的戦略家が猛批判。「極端な保守派」が日本を滅ぼす理由

日本がこれまで放置してきたと言っても過言ではない「少子化問題」ですが、解決策は未だに模索中です。有効な手立ては見つかるのでしょうか。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の中で、世界的戦略家の著作を引きながら、少子化への「政策」が日本衰退を食い止める為の最重要課題である根拠をわかりやすく解説しています。

大戦略家ルトワックは【少子化問題】をどう考える?

北野の新刊発売になりました!

この本は、90%ぐらい国内問題を扱っています。そして、「少子化問題」についても、たくさん書いている。日本の人口は2050年には1億人を切る。2100年には5,000万人を切るこれから80年で、なんと7,000万人減少する(!)という予測です。そして、約900(!)の自治体が消滅する可能性がある。

日本の生き筋 家族大切主義が日本を救う
発行・育鵬社 発売・扶桑社

「少子化問題」については、いろいろ立場があります。

1.少子化問題なんて全然問題じゃない」という立場

「人口が減っても、生産性を向上させることで、経済は成長する」とか「日本より人口が少ない国は山ほどある。一人当たりGDPを高めれば問題ない」といった主張。

2.少子化は不可避だから対応しなければならない」という立場

「高齢者にもっと働いてもらいましょう!」「女性にもっと活躍してもらいましょう!」「移民を大量に入れましょう!」「AIを活用して、人が減っても経済がまわるようにしましょう!」など。これらの「対策」はいずれも「少子化は不可避」という大前提をもとに構築されています。

3.少子化問題は解決できる政策で出生率は増やせる!」という立場

これが私の立場です。というのも、世界を見渡せばそういう例がたくさんありますから。今回の本では、出生率を1.16から1.75まで上げたロシアの秘策について書いています。

さて、皆さんは1.から3.までどの立場?実をいうと、それぞれ一理あるんですね。確かに、人口が減っていても経済成長は可能です(例、2000年~08年のロシアとか)。あるいは、日本の65歳はまだまだ若いので、どんどん活躍していただきたい。それに、女性だって、どんどん活躍していただきたい。AIだって普及が必要。「AI」とまでいかなくても、スーパーにいけば「無人レジ」が登場していますね。たくさん無人レジがあり、「指導員」が一人いるだけでまわっている。

そして、「出生率を増やすことができるのもまた事実。今日は、「世界最高の戦略家ルトワックさんは、「少子化問題」をどう考えているか、ご紹介します。

ルトワック、【愛国者】の【条件】

ルトワック氏は、最新刊『日本4.0 国家戦略の新しいリアル』の中で、「少子化問題を日本最大の問題の一つと位置づけています。少し引用しておきましょう。

日本は長年、少子化問題を議論しながら、人口減少という国家にとって真の危機を間近にしても、思い切った施策を打ち出そうとしていない。そもそも将来の納税者が減少すれば、近代国家は衰退するしかないのだ。

親日家のルトワック氏ですが、この問題については、日本政府を強く批判しています。

もうひとつ、子どもがいなければ、安全保障の議論など何の意味もないということだ。人間の人生には限りがあり、未来は子どもの中にしかない。当然、国家の未来も子どもの中にしかなく、それを守るために安全保障が必要なのである。どんなに高度な防衛システムを完成させても、国内の子供が減り続けている国が戦争に勝てるだろうか?未来の繁栄が約束されるだろうか?

そしてルトワック氏は、少子化解決のための具体的方策も提案しています。

もし日本が本当に戦略的な施策を打ち出すのであれば、最も優先されるべきは、無償のチャイルドケアだろう。スウェーデン、フランス、イスラエルは、高い水準のチャイルドケアシステムを整備し、実際に子供が増えている。

まずは不妊治療の無料化。イスラエルはこれを100%実施している。次は出産前の妊婦が必要とする諸費用、出産費用、さらに小学校に行くまでのチャイルドケアの費用を国が負担することである。

これらの施策も「社会主義的だ!」と批判する人がいるでしょう。ルトワックさんは、「極端に保守化した人たちを批判します。

高齢化が行き着くと、国内の雰囲気は保守化し、悲観的になる。未来のことを考えない近視眼的な思考がはびこるようになるのだ。私は日本の右派の人々に問いたい。あなたが真の愛国者かどうかは、チャイルドケアを支持するかどうかでわかる。民族主義は国旗を大事にするが、愛国者は国にとって最も大事なのが子どもたちであることを知っているのだ。

私は、「私は真の愛国者です!」と宣言する自信はありません。しかし、「真の愛国者になりたい」とは思います。それで、もちろん政府が、「少子化対策をします!」といえば(まともな政策であれば)支持することでしょう。

今日は、世界一の戦略家ルトワックさんも、「少子化問題は国家の最優先課題だ!と考えている」という話でした。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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