CFOの逮捕をきっかけに、米国はもとより日本を含む世界各国が一気にその製品の排除に動き出した「ファーウェイ問題」。現時点で実に世界GDPの半分以上の国から排除される状況となっています。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、「アメリカ先導による世界市場から特定の中国製品排除」という前例を作った今回の動きが新たな紛争の火種になることに懸念を示しています。
世界にひろがるファーウェイ排除の動き
スマホ世界2位ファーウェイのCFOがカナダで逮捕された問題。彼女は保釈されましたが、「ファーウェイ排除」の動きが世界に広がってきています。みてみましょう。
米国、オーストラリア、ニュージーランドの3カ国は最近、安全保障上の懸念を理由に、より高速な通信が可能となる5Gモバイルネットワークのインフラ機器調達からファーウェイを除外した。
(中略)
直近では英国のブリティッシュ・テレコム(BT)も、次世代通信規格「5G」についてファーウェイ製品は使わない方針を明らかにした。
(BBC News 12月7日)
アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドがファーウェイ排除に動きました。そして、日本も。
政府、中国通信2社製品を排除へ
共同 12/7(金)11:00配信
政府は、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の製品を政府調達から事実上、排除する方針を固めた。2社が中国情報機関との結び付きを指摘されていることを踏まえた。
そして、欧州の大国も動きました。
フランスの通信大手オレンジは14日、次世代通信規格「5G」の中核ネットワークで中国通信機器大手ファーウェイ(華為技術)の製品を使用しない方針を発表した。
(CNN.co.jp 12月15日)
オレンジのステファン・リチャード最高経営責任者(CEO)は、「5Gでファーウェイに呼び掛けることは想定していない」と表明。従来のパートナーであるエリクソンやノキアと協力していくと述べた。
(同上)
さらに、欧州最大のパワーを持つあの国も。
ドイツテレコムもファーウェイ製品の調達を見直すと表明している。
(同上)
ドイツテレコムは、中国メーカーのネットワーク製品のセキュリティーに関する議論を真剣に受け止めていると強調。これまで複数のベンダーとの取引を戦略に据え、エリクソンやノキア、シスコ、ファーウェイを主要企業としてきたが、今は調達戦略を見直していると明らかにした。
(同上)
これで、ファーウェイ排除に動きだしたのは、日本、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、欧州では、イギリス、フランス、ドイツの三大国となります。ドイツ、フランスが排除に参加するのは、とても大きいです。というのは、この二国は、EUナンバー1とナンバー2。独仏がファーウェイ排除を決めたことで、それが「EUの事実上のスタンダード」になる可能性が高い。
すると、どうなるのでしょうか?アメリカは、世界GDPの約24%を占めている。EU(イギリスも含む)は、約23%を占めている。日本は、約6%。これだけで、ファーウェイは、「世界GDPの半分以上の国から排除される」ことになります。ドイツ、フランスの方針がEU全体に広がるか、注目ですね。
ところで、なぜファーウェイは排除されるの?
これ、「安全保障上の理由」ということなのですが。
仏最大の通信会社オランジュのステファン・リシャール最高経営責任者(CEO)は13日のラジオインタビューで、「慎重さを求めるフランス当局からの要請」により同社は国内の5G通信網に華為製品を使わないと明言。「中国勢はスパイだというような幻想がある。一方で、用心するに越したことはないという原則もある」と述べた。
(ブルームバーグ 12月14日)
排除は、フランス当局の要請。「中国勢はスパイだというような『幻想』がある」とリシャールさんはいっている。つまり彼自身は、「中国=スパイ=幻想」と考えているのですね。それでも、「用心するに越したことはないという原則もある」と。
日本では、
分解したら『余計なもの』が見つかった!?日本政府も「ファーウェイ排除」へ
FNN PRIME 12/7(金)21:35配信
与党関係者「分解したところハードウェアに『余計なもの』が見つかった」
スマホの売り上げ世界2位の中国IT大手「ファーウェイ」ナンバー2の逮捕。その衝撃が冷めやらぬ中、中国製のスマホを排除する動きが広がっている。
日本政府は各府省庁や自衛隊などが使用する情報通信機器について、安全保障上の懸念から、中国通信機器大手ファーウェイとZTEの製品を事実上排除する方針を固めた。
(中略)
与党関係者によると、「政府がファーウェイの製品を分解したところ、ハードウェアに『余計なもの』が見つかった」という。
(同上)>
実は今回逮捕されたファーウェイナンバー2の孟容疑者の父で創業者の任正非CEOは中国人民解放軍の元軍人。ファーウェイとZTEは、中国政府と密接な関係が指摘されていて、日本政府の今回の措置はサイバー攻撃を防ぐ狙いがある。
(同上)
「余計なもの」とはなんでしょうか?
ちなみに、中国製であれアメリカ製であれ、あなたがスマホを近くに置いて、誰かと重要な話をしていたとしましょう。すると、「聞かれている可能性がある」というのは、ロシアで「常識」とされていました。皆さんも、大切な話、秘密の話をする時は、スマホを遠くにおいておきましょう(「電源切っても聞かれている」という人もいます)。
アメリカでは。
ファーウェイの創始者で孟氏の父親の任正非氏は、中国人民解放軍の元軍人だ。そして、ザーグマン氏が米シンクタンクのロウイー研究所に最近寄稿したように、「ファーウェイと人民解放軍の強固な関係は、今なお懸念される不透明な問題」だ。だからこそ米政府は、ファーウェイのような中国企業には用心すべしと各国に呼びかけているのだ。中国の法律では、民間企業も個人も、政府の要請があれば情報やデータを政府に提供しなくてはならないかもしれない。その可能性があるからこそ、ファーウェイとの取引には及び腰になるのだと米政府筋は言う。
まとめると、
- ファーウェイは人民解放軍との関係が強く、情報を盗むなどしている可能性がある
- 今年、米中覇権戦争がはじまり、アメリカは中国企業を狙い撃ちしている
- それで、アップルをぬいて世界2位に浮上したファーウェイが狙われた(もともと怪しいこともあるが)
- アメリカが大騒ぎしはじめたので、同盟国がファーウェイ排除に動きだした
ということでしょう。
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