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なぜAmazonは1.5兆円で高級スーパーマーケットを買収したのか?

マーケティングのプロでメルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』の著者、理央周さんの書籍『売上がぐいぐい伸びるお客様の動かし方』が2018年9月に刊行されました。「『アマゾン』が高級スーパー『ホールフーズ』を買収した理由は?」など、クイズ形式で成功している企業やお店の消費行動を促すノウハウが掴めるその内容を少し覗いてみませんか?


Appleが新製品発表の際に行う「じらし戦法」

どれだけ不景気でも街角を探せば繁盛するお店が必ず見つかる。業界を牛耳る大企業が必ず生まれる。TwitterやInstagram、YouTubeなどの登場でお客様へのリーチの仕方が変わった現代社会でも“商売の本質”は変わらない売上がぐいぐい伸びるお客様の動かし方(理央周/実務教育出版)の著者であり、Amazonジャパンやマスターカードなどでマーケティング・マネージャーを歴任した理央周さんはこう指摘する。

 『売上がぐいぐい伸びるお客様の動かし方
(理央周/実務教育出版)

マーケティングの本質は、お客様を動かすこと。どうすればお客様の心は動くのか。欲しいものは何なのか。ずっと買ってくれるようになるにはどうすればいいのか。 本書は、あの世界的大企業AppleやAmazonが実践する、お店の売上がぐいぐい伸びる現代社会に合わせたマーケティング手法を解説する1冊だ。本稿ではその中身を少しだけご紹介したい。

現代において、商品・サービスを知ってもらうプロセスに“検索”は欠かせない。情報を断片的に「チラ見せ」すると、顧客の期待感をあおり、検索数をあげて認知度を高められる方法がある。ティザー・プロモーションだ。 これは俗に「じらし戦法」とも呼ばれており、重要な情報を最初からすべて見せるのではなく、あらかじめ計画した段階に応じて情報を小出しにする方法だ。段階ごとに検索する人が増えるため拡散につながり、話題を喚起・共有できる。

この方法で話題作りに成功したのが、2016年に大ヒットした『シン・ゴジラ』だ。古くからのマニアが多く生半可なモノが出せない厳しい状況で、シン・ゴジラ制作陣がとったプロモーションが「じらし戦法」だった。 これまでのゴジラ映画は、公開までにゴジラの姿を全部見せていた。対してシン・ゴジラの予告編は、パニックに陥って逃げ惑う人々の様子と映画のタイトルだけ。その文字でようやくゴジラ映画であることが分かったほど「じらした」プロモーションで、公開前から大きな話題になった。

公開前から話題といえば、Appleも同様だろう。初めて「iPhone」を発表した2007年、経営陣は「Appleが電話を作るらしい」というウワサが流れるように仕向け、「ただの電話ではないらしい」「インターネットができるらしい」と情報を小出しにした。そして最後にスティーブ・ジョブズがイベントで全貌を発表するという流れを作った。このプロモーションの成功は言うまでもなく、今でもAppleは新製品を出す度に「じらし戦法」で大きな話題をかっさらっている。

もし会社やお店で新商品や新サービスを打ち出すときは、段階ごとに情報を小出しにするティザー・プロモーションを活用しよう。

Amazonが1.5兆円かけても欲しい顧客の購買行動

2017年、Amazonは高級スーパーチェーン「ホールフーズ・マーケット」を約1.5兆円で買収すると発表した。オーガニック食品を扱うリアル高級店舗と世界的IT企業はまるで対極な存在だ。あまりの大ニュースにちょっとした騒ぎになった。

続いて2018年、Amazonは「Amazon GO」というレジのないコンビニをシアトルでオープンした。こちらもオープン前から話題を集め、現在も連日多くのお客様が訪れているという。

しかしなぜAmazonは立て続けにネット販売事業と対極の行動に出たのか。理央さんは本書でこう考察する。 Amazonの生命線は、購買履歴など各種データを基に利用者の好みを緻密に分析し、お客様におすすめの商品を表示する「レコメンデーション機能」だ。多くのECサイトがこの機能を搭載する中、Amazonのそれは群を抜く。 このレコメンデーションに役立てるデータ、つまりお客様のリアル店舗での購買行動を収集するのが、リアル店舗展開の目的ではないか。

事実、「Amazon GO」の天井にはセンサーのようなものが設置されている。お客様がどこに向かって歩き、どの商品を見て、次にどの商品と見比べ……というように、センサーですべての行動を観察しているようだ。

ネットとリアルでの購買行動がどう違うのか、共通する点はどこかなどを解析し、よりAmazonのサイトを盤石なものにする目的があるのではないか。そのために1.5兆円もの莫大なお金を投資したのではないか。理央さんは本書でこのように考察する。私たちの購買行動は企業にとって大きな価値があるのだ。

お客様を観察して

Amazonの事例は最先端技術がからむため、どうしてもイメージがわかないかもしれない。しかしAmazonが1.5兆円かけて行ったことは“顧客の観察”だ。

同じく顧客の観察で成功したお店が愛知県にある。「おとうふ工房いしかわ」という豆腐メーカーだ。あるとき社長がこの会社の豆腐を販売するスーパーで、買い物客を観察して気づいたことがあった。それは、多くの人が買い物かごの下のほうに豆腐を入れることだ。 崩れやすい豆腐が下のほうにある。つまり「豆腐は大切にされない存在なのだ」とショックを受けたそうだ。そこで一念発起して開発したのが、厳選素材の国産大豆と国産にがりを使用した「究極のきぬ」と「究極のもめん」。値段は1丁270~280円という異例の高額商品。スーパーに卸したところ、買い物客は“かごの上のほう”に置くようになり、現在では看板商品になったという。

このように、顧客の観察はビジネスを成功させるヒントを与えてくれる。マーケティングの本質“お客様を動かすこと”につながる。Amazonもこの豆腐メーカーもそれを理解し、そして成功を収めた。

本書は、お客様がより自社の商品やサービスを利用するマーケティング手法を解説する書籍だ。大手コンビニ各社、阪急百貨店、ユニリーバ、ユニクロ、スターバックスなど、誰もが知るあの企業を例に成功したテクニックを紹介するので、商売人の誰もが今すぐ実践できる内容になっている。「売上をぐいぐい伸ばしたい!」と思い至ったときはぜひ手に取ってほしい。

また、当サイトでは理央周さんのメルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』も発行している。本書に負けないマーケティング手法を学べるので、売上に困ったとき、結果を出したいときは、ぜひ理央さんのメルマガを一読してはいかがだろうか。(文・いのうえゆきひろ)

 『売上がぐいぐい伸びるお客様の動かし方
(理央周/実務教育出版)

image by: MariaX, shutterstock.com

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