企業を取引相手とするBtoBビジネスにあって、クライアント企業から大絶賛され、導入が急増している「凍結機」があります。品質面の価値をぐんと上げることができたその戦略と戦術とは?今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』で、著者のMBAホルダー・青山烈士さんが詳細に分析・解説しています。
QCDを改善する
導入企業が増えている「凍結機」を分析します。
● 業務用食品機械メーカーである菱豊フリーズシステムズが提供する「プロトン凍結機」
戦略ショートストーリー
食材の鮮度を重視する企業をターゲットに「急速凍結技術」に支えられた「冷凍してもおいしさを保つことできる(おいしさをそのまま冷凍できる)」等の強みで差別化しています。
顧客企業の品質向上に加えて、生産の平準化による売上増や人手不足の解消、さらには廃棄ロスの低減など、様々なメリットにより顧客企業の支持を得ています。
■分析のポイント
QCDを改善する
BtoBビジネスの基本となる提供価値はクライアント企業のQCDを改善することです。
- Quality(品質)
- Cost(コスト)
- Delivery(納期)or Time(時間)
「プロトン凍結機」の場合、わかりやすいのが、品質面の価値ですね。「冷凍してもおいしさを保つことできる」という価値は、顧客企業にとっては、品質面の課題の克服につながる大きな価値だと思います。
HPで紹介されていた「生しらす」を扱う企業にとっては、鮮度の高いまま「生しらす」を顧客に届けることが課題でしたが、「プロトン凍結機」を使うことで、産地から離れた地域にも鮮度の高い「生しらす」を届けられるようになったようです。品質を維持することにより、より多くの顧客に届けられるようになれば、その先に売り上げアップも見込めるでしょう。
そして、コスト面や時間の面の価値も見逃せません。例えば、HPでも紹介されていた「しめじ」の生産・販売をしている企業にとっては、季節商品であるため、売れる時期(9月以降)と売れない時期にばらつきがあることが課題でした。「プロトン凍結機」を使うことで、夏でも生産量を減らさずに、生産を続けることができるようになったようです。
これにより、工場を無駄なく稼働することができます。つまり、時間を無駄なく使えるようになりますので、同じ生産設備でも年間の生産量が3割~4割増える見込みのようです。生産の平準化により、工場の稼働率が上がり、生産量が増えれば、実質的に製品単位当たりのコストは低減していくでしょう。
また、HPには畜産加工業者の声として、「商品の(廃棄)ロスを抑えることができました」と紹介されていましたが、生鮮食品を扱う企業にとっては、自社の商品が無駄にならないことにつながるわけですから、非常に大きなメリットだと思います。
上記のように、「菱豊フリーズシステムズ」は、品質だけでなく、クライアント企業のQCDを幅広く改善できている好事例と言えるでしょう。今後の「プロトン凍結機」に注目していきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):業務用冷凍機
- 競合(お客様の選択肢):食品機器メーカー など
- 状況:国内の食品機械市場は成長しているようです。
■強み
「冷凍してもおいしさを保つことできる(おいしさをそのまま冷凍できる)」
- 解凍してもうまみや風味、食感が保たれる
- 解凍時に出る水分の量はこれまでの3分の1以下で、魚や肉など水気の多い食材に最適
- 品質を保ちながら作り置きができる
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
- 均等磁束・電磁波・冷風をハイブリッドした急速凍結技術により、食品の細胞の破壊を防ぐ
- 国内で唯一、凍結技術と解凍技術の双方を有する
- グループ会社であるプロトンダイニングが展開しているレストランにてプロトン凍結機及び解凍機を活用しており、そこで得られたフィードバックを開発に活かしている
上記のような、技術などが強みを支えています。
■顧客ターゲット
- 水産加工業、畜産加工業、米飯加工業などの食材の鮮度を重視する企業
◆戦術分析
■売り物
「プロトン凍結機」
- 食品の鮮度を保ち、添加物を使用しない安心・安全な食品づくりを実現
- 冷凍庫付き省スペースモデルから大型冷凍庫に設置するモデルまで、多彩な商品ラインナップ。
「プロトン解凍機」
- 「低温 蒸気」により、食品の芯まで急速に解凍。
■売り方
- 様々なメディアで取り上げられている
- 多数の導入事例を紹介することで、導入メリットを訴求
→米飯加工会社の声(抜粋)
「プロトン凍結機の導入で、日本全国に季節を問わず寿司などの冷凍食品の販売が可能になりました。仕事量の標準化にも役立ちました。新規商品を続々生み出しています」 - プロトン凍結機搭載テスト実践トラック「プロトン号」で全国各地へ食材のテストに伺っている
→自社の食材サンプルを持参すれば、その場でプロトン凍結を体感できる
■売り場
- 本店は奈良にあり、東京に支店、東北に営業所がある
※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
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