年末から年始にかけて続いた炎上騒ぎの中で、「ヤレる女子大学生ランキング」という記事を掲載し批判の対象となった『週刊SPA!』。この騒動に関して健康社会学者の河合薫さんは、メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、憤りと嘆きを表明し、さらには何でも単純化してしまう現代の風潮について分析しています。
ヤレる?ランキング?って何?怒
年明け早々、炎上騒ぎが続いています。
- 2018年12月末に公開された西武・そごうのメッセージ広告「わたしは、私。オリジナルムービー」
- 自民党の平沢勝栄議員の「性的少数者(LGBT)ばかりになったら国はつぶれる」発言
- 週刊誌『SPA!』の「ヤレる女子大学生ランキング」
個人的な見解を先に述べておきますと、
- 西武・そごうについては「別に」
- 平沢議員については「呆れる」
- SPA!に関しては「バカだね~」
といった感じでしょうか。平沢議員に関する意見は、1月11日公開のITmediaで取り上げましたので、今回の「裏返しメガネ」では、SPA!問題を取り上げようと思います。まずはこれまでの経緯を振り返っておきましょう。
『週刊SPA!』が18年12月25日号で、「ヤレる『ギャラ飲み』実況中継」と題した特集を掲載。内容は男性が女性の飲食代を負担し小遣いも渡す「ギャラ飲み」の実態を紹介したもので、ギャラ飲み後に性交渉に発展しやすい大学を「ヤレる女子大学生RANKING」として紹介しました。
ランキングは男女のマッチングサービスを運営する「ハイパーエイト」の社長の意見をもとに作成されたもので、都内の大学を1~5位までそれぞれ「男ウケの良さを磨いている」「横浜方面に住んでいて終電が早い」などと理由も掲載。これに対して批判が殺到し、署名サイト「change.org」で「女性を軽視した出版を取り下げて謝って下さい」との呼びかけがスタート。1月7日時点で2万4000筆も集まりました。SPA!編集部はその後、謝罪コメントを発表。
「『より親密になれる』『親密になりやすい』と表記すべき点を読者に訴求したいがために扇情的な表現を行ってしまった」とのこと。
一方、ランキングの対象となった実践女子大学は、「このような女性蔑視につながる内容を掲載されたことについて呆れるとともに、本学及び本学学生の名誉と尊厳が傷つけられたことは、大変遺憾」と扶桑社に「厳重抗議」すべく検討していると報じられました。大妻女子大学やフェリス女学院大学も「抗議を検討中」としています。
…なんとも。これだけセクハラが問題になっているご時世で、具体的な大学名を挙げているのは「感度が鈍すぎる」としか言いようがありません。「訴求したいがために扇情的な表現」というコメントの背景には雑誌の売り上げの減少傾向が続いている現状があるのでしょうが、それでもやはり、ランキングはいただけません。
で、思うわけです。だんだんと言葉も発想も単純化しているな、と。以前、言語学者の金田一秀穂先生と対談したときに、「ここ20年で、難しいことをわかりやすく伝えるのが当たり前、という風潮が定着した」と嘆いていました。「複雑なものを複雑なまま、あいまいなものをあいまいなままにしておくのも時には必要なのに、それを我慢できない人が増えている」と。
言葉を紡ぐことは考えることなので、言葉が単純化されれば思考も表面的になります。「ヤレる」とか、「ランキング」はまさにそれ。ひと昔前であれば「くどく」という言葉が使われていたし、なんでもかんでもランキングする傾向もSNSの発達と連動し広がってきました。「人」に関わる問題は全て複雑です。だけれども、今の時代は「複雑」すぎる。そこで、単純な「解」を見つけ出し「私だけは知っている」と思うことが、人々に倒錯した優越感をもたらしているのではないでしょうか。
とどのつまり「炎上」も、ものごとの「良い」「悪い」を乱暴に言い切るのがなにか良いことように思われているという節が垣間見え、「正義」とか「人権」といった美しい言葉が、ものごとの複雑性を攻撃に変換している。そう思えてなりません。みなさまのご意見、お聞かせください。
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