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現役アナが解説。珍しい経験をしても面白く話せないのはなぜか?

経験したことを話すときに、楽しく興味を引く話し方ができる人と、「ふーん」という感想しか持てないような話し方をする人がいます。メルマガ『話し方を磨く刺激的なひと言』の著者で、現役アナウンサーの熊谷章洋さんは、話し上手な人とそうでない人の違いは、話している最中の頭の使い方ではなく、経験した正にそのときに、そのネタをどのように保存するかに違いがあると解説。経験したことを上手に伝えるコツを教えてくれます。

経験を話ネタにするコツ

「使う言葉の主観性、客観性を意識するだけで、簡単に話を構成する方法」その方程式は、

 1. 主観による大結論=「感動」を表明する

 2. 客観的な説明をする

  2-1.「ひとことまとめ」で簡潔に言い表す

  2-2.客観性の度合いの高いほうから順番に説明していく

  2-3.徐々に主観性の度合いを高めていく

 3. 主観論を語る(←いまココ)

 4. 1の大結論+αで念押し

この論法を、自分(私)なりの「導入の言葉」に置き換えると、

 1. 「いやー!(〇〇でしたよ!)」

  2-1.「要するに、(××だったんですけどね)」

  2-2.「Aという人(物、こと)が…どうした(どうだった)。」

  2-3.「それがまるで…」

そして、主観論として、

 3. 「それで(そこで、その時)思った(感じた、考えた)のは…」

   「ポイントは…

   「重要なのは」

   「大事だなと思ったのは」

このような、ものごとの核心へと導く言葉を前に置くことで、私の考え、感想、その「切り口」「視点」が自然な流れで言えるようになります。これが「持論」です。

逆に言うと、こう思った、重要なのは、というような主観論が無い話は、持論にはならない、とも言えるでしょう。この「持論」はいつ、どの段階で生まれるのか?それは、そのものごとを見聞きしている、まさにその時。

世の中の全ての事象とまではいいませんが、せめて自分の興味の守備範囲にかかることがらについては、それを体験している段階で、「自分が思うに、この話のポイントは…」と考える習慣を持ち、そうして形成された考えを、持論という形で記憶に蓄積していくのです。

体験や事実を話の引き出しから取り出しやすく整理する

話題豊富で雄弁な人のことを「話の引き出し」が多い人、などと表現することもありますが、この表現で注意しなくてはいけないのは、引き出しの中にしまってある、情報の状態です。

いい経験はしているのに面白く話せない人は、引き出しにしまってある情報が、持論の形でまとめられていないのではないでしょうか?当メルマガの以前の記事でも、脳内に「自分アーカイブ」を作ることで、話が芋づる式につながる話し方について解説したことがありました。

このときの「自分アーカイブ」は、情報を感情と紐づけしておくこと、でしたね。あれこれ見聞きしたという体験や事実は、どう感じた、という感情と一緒にまとめておかないと、必ず風化してしまうのです。経験した事実自体は変わらなくても、どうだった、という印象は、薄れていくものです。

なおかつ、感情と紐づけておくことで、引き出しから取り出しやすくなります。つまり、披露する準備ができている=「持ちネタ」になっている、ということです。

ごく簡単な例でいうと、遊園地に行った、という事実だけでなく、家族で過ごして最高に楽しかった、というような感情と合わせて記憶しておくことで、家族で過ごした経験を語るときに、このエピソードが素早く引き出せるようになるわけです。逆に感情と紐づいていないと、「遊園地…。あぁーそこ、行ったことあるー」など、経験した事実の話ぐらいしかできないわけですね。

ここでは具体例が遊園地ですので、いかにも些末な、取るに足らないことのように聞こえますけど、「あー、それ知ってる」「行ったことある」だけで終わってしまう話、ありがちですよね。物足りないと思いませんか?ネタになってませんよね。

そういう話し手は、そもそも経験を記憶にとどめる回路がそうなっている=経験をネタ化して引き出しにしまっていないので、話すことのほとんどが、そこ止まりになってしまうのです。「そういえばあんなことがあったなぁ」なんて後から思い出すことはできるでしょうが、初めから経験談として語りだすには、いささか心もとないですよね。

それ、知ってる。行ったことある。そこ止まりの話は、聞く人にとっては意外にやっかいです。まず第一に、単なる自慢と受け取られかねない。自慢話にしないためには、何らかの「話の切り口」が必要です。
第二に、他の人の話を阻害する可能性があること。知っている人を前にしては、他の人は話しにくいですよね。
第三に、聞く人がインタビュアー役をやらされる恐れがあること。持論はないけど、聞かれれば答えられる状態は、相手に質問してもらわないと話せない状態でもあります。めんどくさい人ですね。

その点、感情との紐づけ状態でアーカイブされている人は、もう話す準備が整っているのです。だから、よくできた話をアドリブで話せるわけですが、これは話している最中の頭の使い方の問題ではなく、情報のまとめ方、保存法という点で、話す準備が一歩先を行っているのだ、という点を、誤解しないようにしなくてはなりません。

そしてここでご紹介している「持論の準備」も、それにおける大事なポイントは?という切り口を経験と一緒に紐づけておくことで、自分アーカイブ=ネタ化された話の引き出しを整えよう、ということです。

簡単な例でいうと、本を読んだ経験に、そのポイントは?を紐づけておくと、本を紹介するネタとして話しやすい、ということです。

雑談がラクになる簡単会話術

ちなみに念のため、ですが、持論を展開するとか窮屈な話ではなく、それ知ってる、行ったことある、だけの状態で、気楽に話に参加する方法もあります。それは、他の話し手の話に乗っかるという方法です。

実はこれに慣れると会話、雑談がすごくラクチンで、自らはほとんど思考停止してしまうほど。会話が辛い人、雑談力を高めたいと思いながら踏み込めない方の取っ掛かりにはいいと思います。

コツは、会話の中で自分が知っている話題について、「そうそう」「私も!」と自分もそれについて経験知識があることを表明した後は、ねー。そう。いいよね。それ言える。好きー…etc.。順接の相槌を入れて、にこにこ笑顔で、うんうんうなづいて、あとは聞くだけ。

真の実力は、会話以外で発揮すればいいのですから、会話で侮られまい、と考えすぎて、無駄な話ができなくなってしまうのも、マイナスだと思います。「私も知ってる」と言うのは、経験知識を共有していることであり、肯定的に話を聞くのは、価値観を同じくしている、ということになります。

会話でリラックスしたいのに、なかなかうまく話せない方におすすめ。ムスッとして黙っているよりは、こちらのほうが断然、好感が持たれるはずですよ。

image by: Dmytro Zinkevych, shutterstock.com

熊谷章洋この著者の記事一覧

アナウンサー歴30年、極限の環境で話し続ける著者が、実体験から会得した「話し方のコツ」を理論化。人前で話す必要がある人の「もっと〇〇したい」に、お答えしています。一般的な「話し方本」には無い情報満載。

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【著者】 熊谷章洋 【月額】 ¥346/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 月曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

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