上司から部下、親から子供など、人を褒める行為はお互いの関係性にプラスに働くことが多いと言われますが、褒められたことによるプラス効果が次の成長に繋がる場合と、その場限りの場合とがあるようです。今回の無料メルマガ『起業教育のススメ~子供たちに起業スピリッツを! 』では著者の石丸智信さんが、あるシーンを例に取り、褒め方のコツについて考察しています。
褒め方をちょっと工夫してみよう
これまでに経営者や管理者、職場のリーダーなどといった企業の中で部下、メンバーを持つ方々を対象とした研修を聴講する中で、「部下を褒めること、認めること」の重要性についての講義がよくありました。そして、その受講者の方々のお話しを聴くと、部下やメンバーに対して怒ったり、叱ったりよりも褒めること、認めることを苦手にしている、という声がありました。
褒めること、認めることは重要だと言れますが、ただ褒めればいいかと言うとそうではないようです。そこで、本号では、褒め方のちょっとした工夫について考察していきたいと思います。
「褒めること、認めることが大切、重要だ」と言われる中で、なぜ大切、重要だと言われるのでしょうか。
諸説色々あると思いますが、私自身が思うのは、褒める、認めることによって、その人自身が自信を持って、自らの可能性を信じて、主体的に伸びていくことを促すためには、褒めること、認めることが、重要になるのではないかと考えます。褒めることによって、その人を自分の都合の良いように誘導したり、相手を依存させたりするために、褒めてはいけないと思います。
よくやってしまいがちな褒め方として、このような褒め方があります。例えば、子どもが、皿洗いのお手伝いをしてくれました。そこで、その子に
「皿洗いをやってくれるなんて、とっても良い子だね」
と褒めました。この褒め方は、一見、その子を褒めているように見えますね。しかし、実は、褒める方の基準に基づいて、その子ども自身を評価、査定しているとも言えます。いわゆる「ヒト」に焦点を当てています。
また、「○○をやってくれたから」などと言ったように、何かをした時にだけ与えられる条件付きの褒め言葉にもなっているので、何かをしなかったら、「良い子ではない」と解釈することもできます。
では、褒め方をちょっと工夫してみましょう。
子どもが皿洗いのお手伝いをしてくれた時に、その子に対して
「お皿を洗ってくれてありがとう。とってもうれしいよ」
と褒め言葉をかけたとします。褒め方をすこし変えてみましたが、どのように思われるでしょうか。
この褒め方だと、お手伝いをやってくれたという行為を、褒めて(認めて)いるので、自分の基準でその子自身を評価や査定をしていません。
先ほどの「とっても良い子だね」という褒め方は、「ヒト」に焦点を当てていましたが、この褒め方は、子どもが皿を洗うという行為自体に焦点を当てているので、ヒトから「コト」へ焦点を移していることになります。
また、「ありがとう。とってもうれしい」というのは、相手に共感し寄り添う姿勢を示しています。「あなたは、良い子」というような「あなた」を主語とした褒め言葉ではなく、「私は、とってもうれしい」などというように、「私」を主語とした褒め言葉は、相手を認めていることになります。皿洗いのお手伝いという事実を客観的に捉えて、子どもたちを認めていることになります。
褒めることと認めることを別にする考え方もありますが、ここでは、褒めることとしてまとめて考えてみました。
手段が目的化してしまうことがありますが、褒めること自体が目的にならないようにしていくことが必要だと思います。子どもたちの自信を育み、主体的に行動していくことができるようにしていくことが目的になるでしょうし、その目的のための1つの手段、手法として褒めることが重要になるのではないでしょうか。
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