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伊藤忠社員をスパイ容疑で1年拘束する、中国という不可解な地獄

2月14日、伊藤忠商事の日本人男性社員が中国で1年もの間、長期拘束されていることが明らかになりました。繰り返される中国当局による外国人のスパイ容疑での逮捕劇。習近平政権はいったい何を守ろうとしているのでしょうか。台湾出身の評論家・黄文雄さんが自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で分析・考察しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年2月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】中国でまたもや発覚した日本人拘束

中国広州、伊藤忠社員を1年拘束 市国家安全局、スパイ容疑か

伊藤忠の40代の男性社員が中国に1年間もスパイ容疑で拘束されているというニュースです。具体的にどんな行為がきっかけで拘束に至ったのかという詳細は報道されていないのでわからないし、中国の報道官も「詳細は未確認」とのコメントしか出していませんが、拘束は事実です。

伊藤忠側も公式見解は出していません。朝日新聞の報道を以下に一部引用します。

社員は拘束当時、東京本社に在籍し、私的な旅行の最中に拘束されたとみられるという。数年前まで広州市のリニア地下鉄プロジェクトに従事し、その期間に関わる何らかの嫌疑がかけられたとみられるという。

 

別の関係筋によると、社員は中国に出張中、休みをとって旅行している時に拘束されたとの情報もある。具体的にどのような行為が問題にされたかは不明だが、「国家の安全に危害を与えた罪」に問われた可能性がある。広州市の裁判所で初公判が終わっているが、判決は出ていない。

伊藤忠社員を中国が拘束 1年前、私的旅行中か

以前のメルマガでも述べましたが、ここ数年で中国で日本人が逮捕される事件は少なくありません。彼らの容疑は一様にしてスパイ容疑です。

2015年、上海市で日本人女性が逮捕されました。東京都新宿区の日本語学校幹部で中国出身の日本人女性です。彼女はその後、スパイ罪で懲役6年の実刑判決を言い渡され、5万元(約82万円)を没収されました。

そのほか、「中国当局は15年5~6月、日本人をスパイ容疑で相次いで拘束した。17年3月には温泉開発のための地質調査に入った邦人男性6人が山東省と海南省で拘束。うち4人は帰国したが、男性2人は正式に逮捕され、今年6月までに起訴された」

日本人女性に懲役6年 中国「スパイ罪」

朝日新聞によれば、「中国各地で2015年以降、スパイ行為などを疑われた日本人12人が拘束されたことが判明。今回の事例を加えて13人が拘束され、うち9人が起訴された。すでに4人に実刑判決が言い渡されている」

伊藤忠社員を中国が拘束 1年前、私的旅行中か

この背景には、中国の法整備が関係しています。

2014年11月、反スパイ法を施行したのを皮切りに、15年7月に国家安全法、16年1月に反テロリズム法、17年6月にサイバーセキュリティ法と国家情報法を相次いで施行しました。これは、習近平に権力を集中させるためでもありテロ対策や治安維持のためでもあります。

今の中国は、かつての貧しい第三国ではありません。世界を牽引するアメリカと対等な先進国としての地位を確立したつもりでいます。経済を優先させて急成長してきた中国は、国内のあらゆる面での矛盾も抱えています。貧富の差は広がるばかりだし、治安も悪い。なにより力をつけた国には諸外国からのスパイが競ってやってくるものです。

ただでさえ一党独裁の不透明な政治を行っているのですから、公にされては困るものは沢山あるし、スパイが盗むべきものも沢山あるわけです。そもそも、中国は人間不信社会ですから、誰も信用できません。そこで登場したのが反スパイ法などの国家安全法です。

反スパイ法では、日本人のみならず、カナダ人なども逮捕されています。例のファーウェイ幹部逮捕に対する嫌がらせです。中国は、反スパイ法で外国人を捕まえ、相手国にプレッシャーを与えることもよくあります。いわゆる「人質外交」です。

もっとも、建前としては、どの国もスパイなど絶対にいないと言っていますが、映画などにも描かれているように諜報活動はどんな国でもやっていることです。

日本はそうしたスパイへの対応策がないことから、「スパイ天国」と揶揄されていますが、日本にもスパイのような役割を持つ人はいます

ここ数年、中国で逮捕されている日本人が本当にスパイだったのかどうかはわかりませんが、一部報道では、中朝国境で情報収集していた男性は日本のスパイだったという話もあります。

前回もこのメルマガで書いたように、中国においてスパイという存在は非常に歴史が長く、中国はスパイ養成に長けている国です。その一端として、ファーウェイの幹部事件もありました。

日本政府が使っていたファーウェイ製品を分解したら、中から「あってはならないもの」が出てきたとの報道もありました。世界各国に点在する「孔子学院」が相次いで閉鎖されているのも、孔子学院は中国人スパイの巣窟だということが世界でも認知されはじめたからです。

しかし、日本は諜報活動員を保護するノウハウを持っていない、諜報活動員が現地で拘束されたら保護するどころか、見放す傾向にあるという話もあります。まあ、スパイが捕まったときは見捨てるのがセオリーではありますが、逆にきちんと抗議して保護しないとスパイだと言っているようなものです。

もちろん、スパイ行為はどの国でもやっていることであり、日本だけやっていないのでは、国際競争についていけません。

しかし、スパイ活動と命の危険は隣りあわせであり、スパイ活動を推進するなら、諜報員の保護は必須です。今回の報道にある伊藤忠の社員が、本当にスパイだったのかどうかはわかりません。本当はリニアの開発のための仕事の一環としての活動が、諜報活動とみなされたのかもしれません。

日本政府のスパイではなくても、国際企業として他国の情報を探るということは、当たり前のことですし、それが産業スパイとみなされてしまうこともありうるでしょう。とくに中国は、前述したように「人質外交」も盛んですから、細心の注意が必要です。

どちらにしても、日本は海外での邦人保護をもっと積極的に行うべきです。こうした国家間のトラブルはよくあることだし、トラブルに見舞われた国民を保護するのが政府の役割です。日本は国際的にもっと危機管理を徹底するべきだし、もっとずる賢く立ち回るべきでしょう。

中国人でさえ国家機密がどこまでなのかがわかっていません。かつてのジョークで、中国の小学生が教師に「先生、私の名前は国家機密ですか?外国人に自分の名前を教えてはいけませんか?」といったというのがありました。

また、日本の記者が中国で食堂に入り、メニューを取材ノートに記入したら「国家機密窃盗罪」で連行されたという話もあります。食堂のメニューまで国家機密ですから、中国とはじつに不可解な国です。

外国人に限らず、中国人の人権活動家や弁護士が連行されたというニュースは珍しくありません。

これは私が中国人の民主活動家の魏京生から聞いた話ですが、自分が外国人記者に話したことはほとんどが政府のトップが漏らした話で国家機密の話ではないということでした。それでも彼は、「国家機密漏洩罪で逮捕されました。

中国政府の公安組織は、政府各省庁だけでなく党や軍部も、それぞれ別の組織を持っているので、理由もわからず急に誰それが消えたという話はよくあります。それは、政府内の組織の数が多く、どこの組織がどういう動機で誰を連行したかについて、国家指導者すら把握できないのです。そのため、それぞれの組織が疑心暗鬼になり、先手を打って何か行動を起こすこともあります。

台湾から中国に渡ったビジネスマンは約100~200万人ともいわれています。現在、中国から帰ってきた台湾人の間で言われているのは、「もう地獄に帰りたくない」です。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年2月19日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込648円)。

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