多くの方が関心を寄せる「健康」。食品、サプリ、ヘルシーグッズなど、メディアでは連日様々なものが紹介されていますが、本当に健康を保つためには結局何をすればいいのでしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんがレビューしているのは、「腸のスペシャリスト」を自称する医師による、「健康の正体」を伝えるという一冊。そこでは「健康の定義」が断定されていました。
偏屈BOOK案内:『健康の正体 医師としてどうしても伝えたいことがある』
『健康の正体 医師としてどうしても伝えたいことがある』
小林弘幸 著/セブン&アイ出版
微妙な表紙カバーである。健 康 正 体 の4文字の配置からは、タイポグラフィのお約束としては「康体の健正」としか読めない。妻は一瞬迷って「けんこうのしょうたい」と読んだ。本文は白地が目立つ組版である。改行が多く、行間が広い。文字の密度が小さい。要するにスカスカで情報量が少ない。見出しに1ページを使うのは、贅沢ではない。明らかにページ稼ぎである。情けない。
「だから、今から、始めてほしい」っていうだけで、1ページつかって濃い地に白抜きデカ太のゴシック系なんて。さらに、重要なところは文字のポイントを上げ、ゴシック系で組む。わざわざ大目立ちさせるほどの重要な指摘でもない、ような気もする。例えば「実際にやってみること、そして続けてみることが、大切です。」とか。だから、あっという間に読み終えたのであった。
著者は順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター、自律神経研究の第一人者として、トップアスリートや文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上に携わる。また、日本ではじめて便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」である。……ということを、ご自分でお書きになっている。
この本のスカスカデザインから、たぶん教授のお話を編集者が書き起こしたのだが、分量が少ないのでデザインでページを稼ぐことにしたのであろうと思った。ところが、文章の流れは流暢で、とても読みやすい。おそらくご本人の執筆であろう。いかんせん、分量が足りず、デザインに逃げるしかなかったのだ。
「健康とは、いかに質のよい血液を一つひとつの細胞まで運ぶことができるかによって決定される」と著者は断定する。健康な状態で生命活動を行なっていられるのは、質のよい血液が全身を巡っているからだ。現代人はあまねく未病(発病には至っていないものの健康とは言えない状況)状態だといわれている。血液検査で小さな異常が出ていれば、すでに未病を一歩超えているのだ。
中高年(40~74歳)の男性の60%、女性の45%が高血圧という調査結果もある。ただ単に血圧が高いだけなら、あまり顕著な自覚症状はない。そのため見逃され、放置されることが多く重症化させてしまう。高血圧は動脈硬化を招き、血液の質と流れを悪化させる。脳卒中や心筋梗塞などの、血管性疾患にかかりやすくなる。一方で加齢は動脈硬化を促進し、高血圧が引き起こされる。
体調が悪いのはその臓器に問題が起きているからだと考えがちだが、実際は脳の影響を受けていることが多い。脳の状態が健康そのものを支配しているのだ。最近の研究では、塩分の摂り過ぎは脳にも障害を引き起こすことがわかってきた。また、「脳のために糖分を」という、言い訳じみた言説も間違いである。
血液は筋肉によって運ばれる。心肺機能が向上することで、全身に送り出す血液量が増える。老いるほど筋肉が必要になる。そして筋肉だけは唯一、高齢になっても増やせる。著者は、年齢を重ねた人ほど運動が必要だという。一番手っ取り早く、足腰をはじめとした下半身の筋肉を鍛えられるのは、階段の上り下りである。なるほどねー。スカスカで読みやすいからお年寄り向き。
編集長 柴田忠男
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