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英語の用例で判明「クリエイティブ」に生きるのは割と難しくない

やがて来るAI時代を生き抜くには、クリエイティブな発想が必要であるという言説を耳にすることがあります。ところで「クリエイティブ」の意味について確認したことはあるでしょうか?メルマガ『8人ばなし』の著者・山崎勝義さんは、日本語訳として当てられる「創造的な」や「創作力のある」は日本人にはピンとこないと指摘。英語での用法用例からしっくりくる日本語を導きだしています。

クリエイティブということ

社会の生産力の総和が安定している現代においては、個人として「自分はクリエイティブでありたい」と思うことは決して贅沢な願いではない。では、そのクリエイティブとは一体何なのだろうか。あるいは、どんな状態なのだろうか。

一応確認だが、辞書的には英語「creative」の和訳として「創造的な」「創作的な」とあり、それを若干散文的に言い換えた「創造力のある」「創作力のある」というのも併せて記載されている。「創造する力」に「創作する力」である。日本語になると、猶分からなくなる語の典型例である。

そのため日常会話において使われることは滅多にない。「君は創造力があるね」、「創作的なやり方だ」。このような例文も、日本語として決して不適格文ではないが、一般口語としては極めて不自然な言い回しであるということが分かる。

その代わりと言っては何だが、「創造」と音韻的に同じである「想像」の方はよく使われる。「君は想像力が豊かだね」。また、似たような意味合いで「独創的」というのもよく聞く。「独創的な方法だね」。興味深いのは「想像」も「独創」も、勿論状況次第ではあるが、何となく皮肉っぽく聞こえてしまうところである。

日本には、少なくとも日本語には、「クリエイティブ」は定着していないのである。

では「creative」の動詞形である「create」はどうであろう。例えば、海外ドラマなどを見ていると「created by 何某」といったタイトル画面がよく出て来る。これはそのドラマの第1話、所謂パイロット版を書いた脚本家に与えられるクレジットである。

日本にはこの「created by」に相当するものがない。似た表現として「原作」というのがあるが、これは少し意味が違う。「原作」というのは原則的に別形態の先行メディア(例えば、小説や漫画など)がある場合にのみ使われるものだからである。

そのため日本ではオリジナルドラマなど原作者を持たない作品の場合、第1話とその他の話数の別なく、とにかく当該話のシナリオを書いた人を一様に「脚本」としてクレジットしている。

勿論これは一人の脚本家によって全話が書き下ろされる場合が多いという日本特有の製作事情が反映されてのことだと思う。とは言え、長寿シリーズともなればさすがにそうもいかないから数人のスタッフライターで回すことになる。その場合でも、やはり第1話の脚本家が格別の存在としてクレジットされることはない。

ごく稀に「企画」というクレジットを見ることもあるがこれはこれでピンと来ない。敢えてこの「created by」に似た例を探すなら、演劇などで見られる「作 何某」「何某 作」の「作」が最も近い気がするのだがどうか。

話がここまで来ると、日本人は意図的に「create」系の言葉を避けて来たようにも思える。そうかもしれない。絶対的な創造主「the Creator」を持たない文化にある民族にとって「創造」という概念自体に抵抗があってもそれはそれで自然なことだからである。

では、我々日本人はクリエイティブになれないのだろうか。

ここで英語圏において「creative」が使われる状況を考えてみる。例えば、手元にある既成の道具Aと道具Bを組み合わせて新たな機能を持つ道具Cをその場で咄嗟に思いついた時など「How creative!」などと言う。あるいは、病院などで医師が安価な薬の副作用を逆に利用して当該症状を抑えようとしたりした場合にも「Creative!」と言う。

こういった事例から考えるに、再構築力や多面的理解といった能力、ざっくり言えば応用力があればどうやら「creative」なようである。では、上記のような場合に臨んだ際、日本人ならどう言うだろうか。「頭いい!」おそらく、こんなふうに言うのではないだろうか。これならずっと分かり易いし、「creative」であることよりは語感的にもかなりハードルが低いような気がする。

ここに何らかの解を見出したいのである。毎日の生活の中にある「頭いい!」をたくさん見つけること、それこそが実はクリエイティブということなのである。そう思えば「クリエイティブ」なことは今までもこれからも特別なことじゃなく当たり前にある筈のものなのである。

という訳で、明日からは別段肩肘張ることなく「クリエイティブ」に生きて行きたいものである。

image by: metamorworks, shutterstock.com

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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