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大きく動く前兆か。東京市場とNY市場に偶然生じた「奇妙な調和」

ひたすら利益を追求する「合理経済」ですが、その行き過ぎが世界で歪みを生んでいます。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、日本は江戸時代の精神文化を再度見直し、お金中心の過度な論理社会から適切な倫理社会へ転換すべしとの大胆な提言を記しています。

欧米論理社会から日中倫理社会への転換点

NY株も日経平均も三尊天井形成かと思われたが、MMTにより暴落もしないで膠着相場化してきた。今後を検討しよう。

日米株価

NYダウは、2019年2月24日26,241ドルで、3月11日25,208ドルと下落したが、その後3月15日25,709ドルになり、三角持ち合い的な上下の値幅が徐々に小さくなり膠着相場になってきたようだ。

日経平均株価も、同様に2019年3月4日21,860円、3月11日20,987円となり、三角持ち合い的な上下の値幅が小さくなり膠着相場になっている。

日本の株価は、予想とは違い上下動をしながら、日経平均は21,500円付近で煮詰まってきた感じがする。このため、そろそろ上下のどちらかに大きく動く気配がする。

日本は、中国経済減速の影響で景況感が下がっている所を、日銀が量的緩和を維持し、農協や地銀が、大量の円売りドル買いして米国CLO(ジャンク債を集めた債権)を買い、このため日米金利差がないのに円高にならず、そのため海外投資家も現物売り、先物買いというように、地銀などがCLOを買わなくなった時点での円高を待って、株価を動かさないし、値下がりでは日銀が買うので、下がりもしない。しかし、21,500円を超えると上値が重い展開になっている。

NYダウもFRBの利上げなしと日本の地銀がジャンク債を買うことと、米中通商交渉を合意近しとトランプ大統領のツイートで好感して、下がらないし、景気減速感もまだ、大きくは出ていないので、ゴルディロックス相場になっている。このため、先端企業の株価は上昇しているが、しかし、ボーイングの欠陥飛行機やGEの赤字決算などで、株価全体では上下動している。

東京市場もNY市場も、奇妙な調和をして大きな材料もないので、膠着相場になっている。

ジャンク債投資を規制

そして、米国からジャンク債を買いすぎていると日本へクレームがあり、金融庁はジャンク債買入を規制する。地銀や農協が持つ大量のジャンク債相場が崩れたら大損になるが、長短金利ともにゼロなので仕方なく金利があるジャンク債を買っているのにだ。

これは1989年の大蔵省金融局が出した不動産への貸出規制と同じような危険がある。CLOを売ると同時に、ドル売り円買いになるので円高になり海外投資家は、待ってましたとばかりに株を売り、東京市場の株価は大きく下落することになる。

ジャンク債を日本の地銀が売ったら、その途端にジャンク債は大暴落して、農協と地銀各行は大損を被り、倒産の危険が迫ることになる。そして、また金融危機を引き起こす可能性が出る。

日本の金融機関を潰しているのは、日銀の長短金利をゼロしていることであり、この日銀の金融政策の失敗が大きいのに、これを改めないで、責任を地銀や農協に押し付けている

しかし、自民党政権は、参議院選挙対策で、景気後退させることはできずに、効果が出るのに遅い規制緩和などの成長政策ではなく、今後も日銀に量的緩和の拡大をさせて食い止めるようである。

そして、財務省から出た黒田総裁と財務省も、10月の消費税増税を実現させるために景気後退を食い止める必要から、量的緩和を拡大するのであろう。しかし、大規模量的緩和を現時点でしている日銀が追加の量的緩和をしても、それほどには効果がない

MMT(現代金融理論)で、国家が膨大な借金をしても大丈夫という理論が間違いであることを、またもや日本が証明することになりそうである。現金を市中にばら撒けば、景気が良くなるというクルーグマンのリフレ理論は、日本のような人口減少社会では有効ではないことを6年掛けて証明した。というように、日本は金融理論の実験場であり、そして、誤りを証明している。このため、日本は、有効な政策を打たずに、益々衰退を加速している。

金融経済からポイント経済圏と倫理社会へ

政府と日銀で、イスラム教社会と同様な金利ゼロを続けると、日本の金融機関は存続できないことになる。もう1つ、お札を無限にばら撒く量的緩和が続く金融相場を未来永劫続けると、株価が動かなくなり、取引妙味もなくなり、市場参加者もいなくなる可能性も高い。この頃の取引が低調なのも、官製相場になっているからで、統制経済を強化すると、自由主義経済の中心である金融経済を破壊することになる。

今のような日銀や政府の政策は、どこかで止めることが重要だ。

しかし、米国もEU諸国も、その日本のようになってきた。長期停滞時代に入り、日本のような金利ゼロのMMTを実行するようである。しかし、それは金融機関を潰していくことになる

事実、日本と中国では通貨経済からポイント経済圏ができつつあり、金融機能が銀行から携帯電話会社や流通企業に移り始めているともいえる。資金の貸し出し機能はクラウドファンディングなどに置き換わり大きな金融経済の転換点になってしまった。ポイント経済圏の次は、このクラウドファンディングもポイントで行うことになり、金融機能自体を国家や中央銀行が管理できないことになり、統制経済の限界も見えてくることになる。

ポイント経済圏が拡大する方向になり、メルペイのように収入から支出までを一括管理する通貨と同じような機能を持ち、その上に信頼性指数を入れるという。

この信頼性指数とは、人の人格で価格が変わる機能で通貨経済圏とは違う(人格+通貨)ができることになる。お金中心のコスパ社会から倫理社会への変化点に来ている。中国が最初に信頼性指数を始めたが、論語教育とは整合性が高い。その中国に日本も追従するようである。

米中通商交渉

NYダウも膠着相場になっているが、中国経済減速の影響を受けない米国の景況感は悪くないので、上にもう少し伸びる可能性がある。米朝交渉は失敗したが、米国経済には大きな影響はないが、米中通商交渉は大きく中国の経済を左右するので、世界景気に影響を与え、引いては米国経済に影響するので注目されている。英国のEU離脱は6月末まで延期になり、予想通りであるので織り込み済みで動かない

米中通商交渉は、ライトハイザー通商代表が中心に動いているが、トランプ大統領の合意近しというツイートとは違う様相のようである。

貿易均衡の問題は、中国が大豆や航空機、石油を大量に買うことで一応の合意を得たが、中国の構造改革問題では、その検証方法で、中国は合意しないようである。今まで中国の得意な口先だけの合意で、何もしないということが多発していたので、ライトハイザーは、検証を行い、もし、達成していないときには、一方的に関税をUPするという条項を入れるようである。このことで中国は了承しないことになっている。というように、合意までの距離は、まだ長いようである。しかし、トランプ大統領は、大豆に目が眩み、合意を焦っている。

しかし、2020年の選挙前に合意すればよいので、まだ時間がある。ということで、米中首脳会談も4月ではなく5月になる可能性も出てきた。徐々に後ろ倒しになっている。部分合意はすると思うが、いつになるのか、わからないようだ。

中国の現状と今後

3月15日まで、全人代が開催されて、今年1年の方針が発表された。李克強首相の演説で、無暗な量的緩和をしないとした。この理由を周小川中国人民銀行前総裁が述べて、「失われた20年の日本と同じになるので株価を維持するために政府が株を買うことはしない」とした。日本の失敗を中国は研究しているが、株買い支えは、株式市場を殺すことになると否定している。

このため、中国は減税やインフラ投資に33兆円もの景気対策を行うことにして、この政策で年後半には景気が戻ると見ているようだ。

しかし、現在、中国は、地方と企業の債務残高が9,600兆円と大量に積み上がり、それを追い貸しで支える状態になっている。特に国営企業を潰す訳にもいかず、経済は停滞し始めていたところに、米国の関税UPで輸出企業の生産が減速した。このため、米国と交渉して関税UPを止めて、その上で33兆円の景気対策が打たれれば、景気は回復する可能性もあるが、債務危機の問題は残り、その影響から景気回復できるかどうかという意見もある。

米中デカップリング論

しかし、中国経済の発展で、年収400万円以上の人口は、12億人の10%もいるので1.2億人と日本の総人口以上もいるし、年収1,000万円以上は1%になり、1,200万人もいる。一方、米国の人口は3億人で、中産階級以上は、多く見積り30%程度としても1億人程度上流階級1%とすると、300万人しかいない。そして、今後も中産階級は減少するので、市場規模は米国より中国の方が大きいことになる。

これにより、日本企業は、米国以上に中国が重要市場になっている。このため、日本企業は米中デカップリングをし始めている。米国と中国を分けて生産体制や製品設計をする方向にして、米中のハイテク戦争になって、輸出入ができなくなるとか、インターネットなどが繋がらなくなっても、大丈夫な環境を作るようである。このため、トヨタは米国に1兆300億円の投資をして、米国で製造を完結させるようである。同時に中国にも投資して、中国で完結する体系にする。

中国経済の高度化、大規模化により、米国市場を諦めても中国市場を取りに行くという選択をする国が増えてくる。その1つがイタリアで、中国の一帯一路提携国になった。ドイツも中国寄りで米国との関係をどうするか考慮している。韓国も中国寄りになっている。日本も一帯一路に協力すると米国べったりから中国寄りにシフトしている。

その上にトランプ大統領は、駐留経費の2倍を韓国やドイツ日本などに要求するというので、益々米国から距離を置くことになる。米国から中国に経済覇権は確実に移り軍事覇権も米国は放棄するので中国に傾くことになりそうである。

トランプ大統領の無謀な同盟国への要求と、米中通商交渉が決裂して、米中の選択を迫られたら、世界の多くの国は米国から中国へシフトする可能性も出ている。

という意味でも米国は中国との通商交渉を合意する必要があるし、今回の経緯から世界は、米国時代の終わりを意識し始めたようである。トランプ大統領の意図とは関係なく、米国が戦後初めて負ける事態になってきたとも言える。

欧米論理社会から日中倫理社会への転換点

このように、お金中心の合理経済の行き過ぎから倫理社会に世界は立ち返る時期を迎えたように思える。お金中心のコスパ社会から、共感や倫理などを重要視した社会に変化する兆しが出てきている。特に、日本と欧米の違いを欧米の日本研究で明らかになってきたようである。日本の精神文化が、縄文時代の自然観・精神文化を色濃く残していることがわかる。

このコラムでは何回も述べているが、村山節『文明の研究』(歴史の法則と未来予測)で800年で精神文明と物質文明が交代する波動を描いていると紹介した。その説によると2000年に文明交代になり、欧米論理文明から日中倫理文明に徐々に交代すると予見されている。それが2019年に、次の精神文明の姿を見せ始めてきたようだ。変化点としての信頼性指数は大きい。

日本の明治期に西洋文明を本格的に導入してきたが、もう一度、江戸時代までの日本の精神文化を取り戻す時代になってきたように感じている。江戸時代の体制に戻るのはなく、江戸時代の精神文化を再度見直して、日本を過度な論理社会から適切な倫理社会に変える必要になってきたと見る。それが次の日本の指導原理であるとも見える。

さあ、どうなりますか?

image by: Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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