昨年末はNHK紅白歌合戦にも初出場を果たすなど、米津玄師と並び、いま最も勢いに乗っていると言われる女性シンガーソングライター・あいみょん。そんな彼女が『映画クレヨンしんちゃん新婚旅行ハリケーン〜失われたひろし〜』の主題歌「ハルノヒ」をリリースするということでMAG2 NEWSが早速直撃取材してきました。独特の世界観を持つあいみょんがなぜ「クレヨンしんちゃん」?と思ったのもつかの間、実は彼女、インタビュー中も想像を超える『クレヨンしんちゃん』愛…いや、オタクっぷりを惜しげもなく発揮、周りが軽く引くぐらいのマニアックなネタに取材陣もタジタジに!?
彼女の楽曲が一日中、脳内から離れないという方もいるぐらいだ。メロディアスなサウンドに乗せられた独特な歌詞が耳に残り、曲を聞いていないふとした時でも、一度自分の中で「脳内再生」がかかるとしばらくずっと曲がグルグルとかけまわる。これがとてつもなくエモく、そして心地よい。10代20代のみならず幅広い層から「まるで自分のことを歌っている」と共感させる彼女の才能はまたたく間に日本に浸透していった。
そんな彼女が新曲として書き下ろしたのが、4月19日より公開となる『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 〜失われたひろし〜』の主題歌「ハルノヒ」。今作がしんちゃんの両親である野原ひろしとみさえの“いまさらの新婚旅行”を描いていることから、原作の中で描かれたひろしのみさえへのプロポーズに着想を得て、主題歌は“ひろし目線”で制作したという。子どもの頃から『クレヨンしんちゃん』の大ファンだというあいみょんに、楽曲制作の舞台裏を聞いてきました。
弟に紅白に出るよりすごいと言われた(笑)
──オファーを受けたときの感想は?
「純粋に嬉しかったです。私の家族が喜ぶなって思ったので、やらないってことはまずないなって思いました」
──小さい頃からずっと『クレヨンしんちゃん』が好きなんですよね。
「物心ついたときから好きです。しんちゃんの映画に自分が携われるなんてすごいことだって思いました」
──どういうところが好きですか?
「しんちゃんは映画だとはちゃめちゃで面白いところもありつつ、家族愛とかカスカベ防衛隊の絆だったり、非現実な世界なんですけど、現実をすごく描いていて、普段、自分が日常の生活をしている中でもリンクするようなシーンがあります。ふとした瞬間、共感できるところでもあり、グッとくるところでもあって、そういうところがいいなって思います。絶対ないやんっていうところと、あるあるっていうところの絶妙なバランスがあるんでしょうね。35年ローンを抱えているところなんて、すごくリアルですよね(笑)」
──映画もかなりご覧になっているんですか?
「そうですね。妹と弟もすごく好きで一緒に観たりします」
──今回の主題歌の件、妹さんと弟さんの反応は?
「めっちゃ喜んでました。弟が特に喜んでましたね。紅白よりもすごいって言っていました(笑)」
──楽曲に込めた思いを教えてください。
「テーマが家族ということで、今更だけど新婚旅行に行くと聞いたので、野原一家のことを書けたらいいなって思いました。今までにないくらい『クレヨンしんちゃん』に寄り添った主題歌にしたかったですし、私自身がこれだけ好きなんやっていうのもあって、プロポーズを描きたいと思いました。野原一家の始まりの物語ですね」
──ひろし目線ですよね。
「そうですね。台本はもちろん読み込ませていただきましたが、私なりに『クレヨンしんちゃん』を知っている部分があるので、そこを書きました。プロポーズした場所は描かれているんですけど、その後は描かれていなくて、ここは自分の妄想を盛り込みました」
春日部なのに、なぜ「北千住」なのか?
──自分が知っているクレヨンしんちゃんでここは絶対書きたいというところは?
「北千住の駅はテーマでした。でも、チャレンジングでした。クレヨンしんちゃんの舞台は春日部であって、今回の映画はオーストラリアが舞台なので、北千住ってどこからの情報かわからないようなワードを入れることへの不安はあったんですけど、北千住は私の中で絶対的なテーマだったので、それを受け入れてくださったスタッフのみなさんにありがとうございますって」
──ひろしがみさえにプロポーズしたのが、〈北千住駅〉なんですよね。
「そうなんです。これは絶対コアなファンじゃないと知らない事実であって、映画を観たときに北千住ってなんでやろ?ってひっかかりになってくれたらいいなって」
──北千住にどんなイメージがありますか?
「なんも考えてないです。実は行ったことないんです。ひろしとみさえのプロポーズの場所という認識です。だから、すごくキラキラしていて、木漏れ日って感じなんです。缶とか落ちていたら嫌だなって(笑)。いずれは見に行きたいです」
──あいみょんさんといえば、物語性がある楽曲が特徴的ですが、今回意識したことは?
「野原家の始まりが北千住の駅で2人は家族になって、最後の歌詞に住み慣れた駅の、って書いて、それは春日部駅なんですけど、そこはあえて春日部とは歌わなかったというのがオチとしてはあって。もちろんクレヨンしんちゃんの主題歌としてリリースされますが、私の曲としてもリリースされますし、野原一家のことを歌っていますが、そこを飛び越えていろんな家族や恋人に聴いてもらえるなったらいいなって。最後の駅だけは指定しないほうが、みなさんも住んでる駅があるので、その駅は人それぞれかなって思いました。ただ私の中ではしんちゃんが好きすぎるので(笑)、タイトルで春日部を少し意識して「ハルノヒ」ってしました」
──今回の映画で楽しみにしているシーンは?
「レコーディング中に映画の資料があったので、ちらっと観たら、本編に出てくるイラストがあって、それを見たら涙が出てしまって。この絵が出てくるシーンがすごい楽しみです。すごくいいイラストなんです。一家のすべてを物語っているなって思います」
──印象に残っている作品はなんですか?
「2001年公開の『オトナ帝国の逆襲』ですね。これを観て、太陽の塔に出会い、今では岡本太郎の虜です。また、吉田拓郎さんやベッツィ&クリスに出会わせてもらって、ベッツイ&クリスは私が生まれて初めて買ったレコードなんです。あの映画自体に影響をもらっていて、しんちゃんのセリフで「ハロー、ハロー、岡本太郎」っていうのがあるんですけど、それもすごく好きです。それぞれの映画に名シーンがありますし、どれも好きです。『栄光のヤキニクロード』もやばいですもん。みさえが熱海まで泳ぐシーンが好きです。すごいです。この映画でセグウェイを知ったんですよ。しんちゃんはいつもあたしに新しいことを教えてくれる!って。どれも題材が新しいんですよね。今回なんて「失われたひろし」ですからね(笑)。毎回ワクワクさせてくれますね」
もし息子が生まれたら「しんのすけ」と名付けたい(笑)
──もし、しんちゃんみたいな息子がいたら?
「最高ですね。私、姉と妹がいるんですけど、姉が子ども3人、妹が4人いるんです。妹は女の子3姉妹なんです。4人目妊娠中に男の子だったら絶対「しんのすけ」って名付けるって言っていました。うちの家族、しんちゃんが好きすぎて、次男の子生まれたら「しんのすけ」って言い合うんです(笑)。お姉ちゃんは変なこだわりがあるから、別の名前にしたんですけど、妹は絶対ひらがなで「しんのすけ」って決めていて。結局また女の子だったのでつけられなくて、「しんのすけ」は私にチャンスがあるんです。というぐらい、しんちゃんが大好きだし、こんな息子がいたら絶対いい。楽しいですよね」
──いたずらしても構わない?
「もちろん、いいです。しんちゃんは根っこは優しいですし、妹思いなんです。『嵐を呼ぶジャングル』を観てほしい。しんちゃんがすごいお兄ちゃんというのがわかる映画なんですよね。あと、しんちゃんが涙流すときとか、たまらないですね。涙のシーンは、『嵐を呼ぶ歌うケツだけ爆弾!』を観てほしいです。シロが連れていかれるんですけど、そのときしんちゃんが泣くんです。『歌うケツだけ爆弾!』ってタイトルがやばいですけど、泣けるんですよ。5歳児ならではのアホっぽさもありつつ、5歳って大人のことも理解しつつ、感情がしっかりしているなって思います」
──こういう家族って憧れますか?
「憧れはどうかな(笑)。でも、近所にいてほしいです。横にいてほしい。いや、横の横がいいかな。家とか急にどーんって崩れたりするので(笑)、横の横ですね」
──ひろしとみさえの関係についてどう思いますか?
「アニメではけなしあう感じですけど、映画とかになると家族の愛が描かれるのでいいですよね。ひろしとみさえがいなかったら、野原しんのすけもいないので、いい夫婦だなって。でも、夫婦っぽくないですよね」
──でも、急に恋人っぽくなることもありますよね。
「特に漫画で恋人っぽくなって、結構、際どいところまで描いているんです」
──ひろしについてはどう思いますか?
「めちゃめちゃいい男ですよ。『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』という映画があるんですけど、これは号泣ものですよ。ひろしがマッサージに行ったら、ロボットに改造されちゃうんです。辛いですよ。『ロボとーちゃん』最高ですよ。もうね、スタンディングオベーション。ひろしを描く映画も多くて、ひろしって大黒柱なんだなって。映画とかでも、たいていお前が先に行けっていうようなシーンはひろしなんです。『オトナ帝国の逆襲』もエレベーターのシーンで行け!って、家族を守る人で人間味あふれる人だなあって」
──ひろしみたいな人と結婚したいなって思いますか?
「うーんと、知り合いの知り合いの旦那ぐらいにいてほしいですね。すごい人がいるなって(笑)」
──しんちゃんとあいみょんさんに共通点はありますか?
「小さい子って無知であるからこそ、すごいことができるじゃないですか。野原しんのすけって好奇心が旺盛かつ可能性に満ちた5歳児で、そういうところは、私も忘れたくないなって感覚ですね。小さい子ってなにもわからないから、砂とか食べるじゃないですか。私が今、それをやっていたらやばいんですけど(笑)、5歳児ならではの可能性を秘めていて、そこは面白いなと思ってみています。自分としんちゃんが似ているというよりかは、私もこういうときがあったんやろうなって。実際、甥っ子とか生まれると、しんちゃんぽいなって思うときがあるし」
──あいみょんさんが5歳のときはどんな子どもだったんですか?
「ピアニカ極めていたかもです(笑)。あと、泥団子作ってました。ピカピカの。一つのことに夢中になっていました。それこそ、5歳のころはしんちゃんを観ていたと思います。当時のアニメの主題歌も覚えていますね。だから、自分が主題歌を歌うってすごいことですよね」
──主題歌はカラオケで歌いますか?
「主題歌ではないんですけど、よしだたくろう(現・吉田拓郎)さんの『今日までそして明日から』はすごい好きなので、歌いますね。あと、『ダメダメのうた』とか、いかに噛まないで歌えるかってチャレンジではありますね(笑)。私の先輩方も曲を提供していて、きゃりーちゃん(きゃりーぱみゅぱみゅ)や(高橋)優さんもなんです。優さんには、決まりましたって報告しました。「おっ!」て言ってました(笑)。毎回毎回、主題歌とかほんと、楽しみですよね」
姪っ子が映画館で曲を聞いた時、私の本名を叫ばないか心配(笑)
──『クレヨンしんちゃん』が家族がテーマということで、あいみょんさんの家族の思い出を教えてください。
「うちは兄弟が多いので、家族旅行になかなか行けなかったんです。旅行って田舎に帰るぐらいしかなくて、すごく思い出に残っているのが、ユニバーサルジャパンに行きたいけど、兄弟が多いから行かれへんってなって、ユニバーサルジャパンの門の前で写真を撮って帰ってきました(笑)。切なかったです。今はもう笑い話ですけど(笑)。家族とどこか遠くに行ったことがないので、これから連れていってあげたいですね」
──どこに行きたいですか?
「東京に来てもらいたいです。うちの家族、新幹線にあまり乗ったことがないので、弟を新幹線に乗せたいです。ディズニーランドに行きたいです」
──『クレヨンしんちゃん』を家族みんなで映画館で観るのはいかがですか?
「それいいですね。家族の話ですしね。でも、怖いのが、観に行ったら、曲が流れたとき、姪っ子とかが私の本名を叫ばないかなと思って。すごく怖いんですよ(笑)」
──あいみょんさんの『クレヨンしんちゃん』愛というかオタクっぷりにびっくりしました。
「いやー、もう本当に大好きなんです。「SHIN-MEN(シン-メン)」ってご存知ですか?『クレヨンしんちゃん』内で放送されていたコーナーアニメなんですけど、オープニングの曲が好きすぎて。シリーズ化してほしいぐらい好きなんです。(突然、歌い出し)僕らのシンメン。でも、私の中ではまだ詳しくないと思っています」
──まだ!?
「好きになったらとことん極めたいタイプなので、今回をきっかけにしんちゃんをもっともっと極めたいと思いました。しんちゃんはほんと奥深いです」
インタビュー・文/杉嶋未来
撮影/能美潤一郎
あいみょん
1995年3月6日生まれ、兵庫県西宮市出身。2016年11月にシングル『生きていたんだよな』(ワーナーミュージック・ジャパン)でメジャーデビュー。2017年5月に2ndシングル『愛を伝えたいだとか』、8月に3rdシングル『君はロックを聴かない』を発表し、9月に1stフルアルバム『青春のエキサイトメント』をリリース。2018年8月に発売した『マリーゴールド』が大ヒット、紅白歌合戦への出演も果たした。2019年2月には2ndアルバム『瞬間的シックスセンス』をリリース。5月からは対バンツアー『AIMYON vs TOUR 2019 “ラブ・コール”』、10月からは自身最大規模のワンマンツアー『AIMYON TOUR 2019 -SIXTH SENSE STORY-』を開催する。
Information
映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~
原作:臼井儀人(らくだ社)/「月刊まんがタウン」(双葉社)連載中/テレビ朝日系列で放送中
監督:橋本昌和
脚本:うえのきみこ、水野宗徳
製作:シンエイ動画・テレビ朝日・ADK・双葉社
声の出演:小林由美子、ならはしみき、森川智之、こおろぎさとみ 他
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2019
ヘアメイク:宮下侑子
スタイリスト:服部昌孝
4月17日(水)CD発売
7thシングル「ハルノヒ」MUSIC VIDEO
※記事内の一部人名に誤りがありましたので修正いたしました。関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。