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いじめ問題で学校側を動かすため親が身につけるべき「相談力」

さまざまないじめ問題を取り上げ解決に向けたアドバイスをレクチャーし続けてきた、無料メルマガ『いじめから子どもを守ろう!ネットワーク』。今回は、これまで多くの相談を受けてきた中で感じたという「相談する側の配慮」について論じています。学校に相談する際に効果を発揮するという「心得」とは?

相談力を高めよう

いつもメルマガを見てくださる読者の皆さまに心から感謝申し上げます。読者の方々から時折、感想が寄せられることがあります。「読んで自分の悩みがわかりスッキリした」、「物事の仕組みや問題の解決までの道筋が分かった」、とお礼の言葉をいただくこともあります。

また、ご相談をうけたまわることも多いのですが、少し気になる点があります。それは、話を聞いてもらいたいだけなのか本当に問題を解決したいのか相談する本人自身がわかっていないこともあるということなのです。まずは、自分の気持ちを見極めることが必要です。

さらに、一歩前に進もうという勇気や熱意相談する際のある程度の力量も欠かせないという点です。力量と言っても難しいことではありません。

例えば、いじめ問題ではないのですが、最近、若い女性から進路について相談がありました。26歳の彼女は、地元の短大を卒業後、いったんは就職したのですが、どうしても芸術の道を進みたいと、祖母に数百万円の金を出してもらいアメリカに数か月間、短期留学して、半年前に帰国したそうです。しばらく、ボランティアをしてぶらぶらしていたのですが、今春、通信制大学に入学したということでした。

なんとも恵まれた家庭環境に見えます。しかし、彼女は、本当はお金持ちではないこと、家族からの支援はもう金輪際ないのだということ、父母をはじめ家族とのコミュニケーションがうまくいっていないと打ち明けてくれました。さらに、彼女の入学した大学は、芸術とは関係のない、他の科目の通信制大学というので、ちぐはぐな印象を受けました。

私からは、ひとこと「自分がやりたいこと仕事として成り立つこと社会的に評価されてお金をいただけること」とは違うのだということをお伝えしました。社会人であるならば、まずは経済的に自立することが最優先であること、そのための努力をしているのか、という実務的なことを問いました。

そして、「アメリカ留学に数百万円を投資したならば、それを活かすように履歴書に書いて自分を売り込む努力をして、よい仕事に就いて、投資が無駄にならないようにしなければ、ご家族は納得がいかないのではないですか」と聞いてみました。

彼女ははっとした表情で、「お金や結果で返ってくるのだ」ということは考えたことも無かったこと、家族とそういった、突っ込んだ会話をしたことがなかったこと、実は母と娘である自分との関係性が薄いこと、父母も仲が良くないこと、祖母と母との間の交流もないことを教えてくれました。彼女は、すべての原因はそこにあると言いたげな様子です。

私からは、「あなたの過去や家族の悩みを聞いてほしいならば、他に相談にのってくれる人、話をじっくり聞いてくれる人に相談してください。カウンセラーさんが適任でしょう。私は、今はあなたの将来を支援する友人です。過去の愚痴を聞くためだけに費やす時間が惜しいです」ときっぱり言いました。

「就職先を決めたいなら、今すぐできますよ。ほらスマホでハローワークの求人サイト、インターネット検索だってできます。私はソーシャルワーカーなので過去、数多くの人を支援してきましたからわかります。貴女は必ず就職できます。今聞いた、あなたの条件で、就職情報を探すと、はいっ、大学に近いところで数件、これだけ出てきましたよ。どうですか、明日にでもハローワークの窓口に行って、紹介状を出してもらい、面接の日取りの連絡を取ってもらい、明後日にも面談を受ければ、1週間後には就職が決まっています。さあ、どうですか?」と提示してみました。

最初はあっけにとられていた彼女でしたが、私から

  1. 今の日本は若者人口が少ない、売り手市場
  2. 4月という絶好の就職チャンス
  3. 若いので既卒はハンディにならない
  4. 留学もボランティアも尊いので企業は必ず評価してくれること

など強みになるところをたくさん示して、背中を押しました。彼女は、「1年以上もあれこれ悩んでいたのに、相談したら数分で解決してしまった!」と大笑いしていました。

数日後、ラインで彼女からお礼のお知らせがありました。就職が決まり経済的な悩みが消えてスッキリしたようです。このぶんなら学業も芸術活動も見込みありです、うれしいことです。

大事なことは、「問題の見切り判断力の速さ」、そして、「だれに相談したら自分の悩みが解決するのか」よく考えて行動することです。

いじめ問題についても、同じように堂々巡りをして何年も解決していない方々がいます。どうしよう、どうしようと、あれこれ考え、悩みのふちにはまってしまうと、何も進まないまま時間が過ぎ去り、学校の先生も転勤してしまうということも起きます。加害者の記憶も消えます。不登校を続けると学力が身に付かず、損をするのはわが子ばかり、というつらい状況になります。

一時の感情で学校に乗り込んでも、校長や教頭先生は静かに聞いてくれますが、答えが出ません。何度か通っているうちに、カウンセラーさんを紹介されて、定期的に話をしているだけということになります。しかも、子どもの不登校は変わりません

お父さんに相談しようとしても、「仕事が忙しい」と会話になりません。お母さんはウツになって心療内科に通い始める、そういったご家庭は多いのではないでしょうか。

相談する側も問題の見切りをしなくてはなりません。「いじめを解決したい」とただ漠然と思っているだけではダメなのです。学校ができることと、できないことを見切らないといけません。より具体的に学校が対応できることをお願いしてみることです。

「わが子が再登校して、イジメに遭わないよう、イジメっ子とその仲間とクラスを変えてください」
「トイレで鉢合わせしないように、別の階のクラスにしてください」
「同じクラスには幼稚園時代から仲良しの〇〇さんを入れてください」

このようにお願いしてみたところ、学年が変わったとたん、イジメに遭うことは無くなり、明るく通学できるようになった、という事例もあります。

また「素早い判断力で行動し相手方を謝罪させた」例もあります。我が子が精神的に病むまでイジメがあったのに、加害者側もその親も認めない、そのことを学校に依頼しても解決しないことを悟った、あるお母さんは、どうしても加害者側に謝罪をさせたいと思っていました。

その気持ちを汲んで応援していたところ、そのお母さんは、ある時、公園で偶然、わが子がイジメられているのを発見し、駆けつけてイジメ集団おおかたは逃げたの一人の子を捕まえることに成功しました。

その場ですぐにその子の保護者に電話し、来ていただき、事情を話し、ともに自家用車で素早く逃げた加害者たちの家を訪問して、それぞれ加害者側の保護者に、「この子とイジメを一緒にやっていた」、「被害者の母親も目撃した」、と証拠を突き付けたそうです。

結果は、加害者側リーダーの母親が自分の子をビンタしその母親が土下座をして謝罪するという、被害者側のお母さんがおののくような結果となったこともあります。また、学校にも伝えたところ、あらためて子ども達に教育的指導をしていただいたということでした。

ですから、最初に述べたように、「相談したら、誰かが何とかしてくれるだろう」ではなくて、自らが主体となってできることをやろうという気持ちが必要です。勇気を出して相談してみたら、そして頭がスッキリして、やるべきことが見えてきて、あっという間に解決できたというケースが多々あります。

そして、もうひとつ腑に落としていただきたいことがあります。先の校長や教頭先生も貴方様のお話を聞いて何とか力になりたいと思っているのです。しかし、何をしてもらいたいのか聞く側が理解できないということがあります。相談する側にも、「具体性」と相手方を説得する努力が必要です。「説得力」をアップさせなければなりません。ただただ、待っているだけでは何も起こりません。時代劇の水戸黄門は永遠に現れません。

多くの学校の校長先生、教頭先生は経験も豊富です。しかし、具体的なこうしてほしいという要望を受けないとどうしてよいのか悩む先生も多いのです。「できることとできないことをよく見極めて具体的にここまでしてほしい」と相談してみてください。

子ども達が大好きで先生になった方々です。学校としても、子ども達が明るく再出発できるよう手立てを高じたいのです。多くの先生は時間切れを狙っているわけではないのです。具体策を思いつかないだけの場合が多いのだ、と知っておくことで交渉もスムーズにいきます。

これまで学校や教育委員会、第三者委員会に厳しいことを言いましたが、彼らは税金で成り立っている公的機関です。アカウンタビリティと言って、オーナー様である国民に対する説明責任があります。私からの厳しい言葉は改善への期待です。

保護者の皆さまは、わが子のことだけを見つめてください。子どもの未来のために、冷静に頭を働かせて、相談してください。私たち、いじめから子どもを守ろうネットワークは、相談する皆様をお待ちしております。

前名古屋市教育委員会 子ども応援委員 スクールソーシャルワーカー
現福祉系大学講師 堀田利恵

image by: Shutterstock.com

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【著者】 いじめから子供を守ろう!ネットワーク 【発行周期】 週刊

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