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現役医師が危機感。生命を脅かす地球温暖化に言及せぬニッポン

世界で頻発する巨大な台風やハリケーン、サイクロンによる被害。さらにはつい先日も与那国島を襲った「50年に一度の記録的豪雨」など、極端な気象現象が、世界の人々の生活や生命を脅かしています。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で現役医師の徳田先生は、かねてから二酸化炭素排出量世界第5位であるわが国の責任と行動の必要性を訴えていますが、今回、テレビの討論番組でエネルギー問題がテーマにも関わらず、温暖化を意識した発言がなかったことに失望と危機感を抱いています。

もっと必要な気候変動議論。サイクロンによる被害は人災

2019年3月、アフリカ南東部のモザンビークに非常に強大なサイクロンが襲いました。暴風雨、洪水、そして土砂崩れによって1000人以上の死者が出ています。数万戸の家が破壊されました。数十万人もの人々が避難生活を余儀なくされています。今後は、食料難とコレラの流行による死亡者数の増加が危惧されています。

このような巨大なサイクロンの襲撃は、日本からみて地球の反対側の国で起きましたが、同じ程度の台風が日本を襲う可能性があります。気象学者たちは、今回の巨大サイクロン襲撃の根本原因として地球温暖化を挙げています。

実際、最近数年間でも頻繁に、強力で非常に大きい台風が日本を襲っています。暴風雨、洪水、そして土砂崩れによる被害は深刻でした。台風以外にも、熱帯地域で見られるような突然の激しい大雨や突風、竜巻に襲われることが多くなりました。これらによる事故、住宅破壊、交通事故、航空機事故がよくみられるようになりました。猛暑による熱中症被害も年々深刻化しています。

地球温暖化対策の責任

地球温暖化による気候変動は人災です。二酸化炭素を始めとする温室効果ガスを排出しているのは人間です。化石燃料の燃焼、畜産、農業、化学工業、軍事などの人間活動です。

国別で見ると、日本は二酸化炭素排出量で総量で世界第5位、国民一人当たりで世界第4位です。地球規模の大規模災害を引き起こす原因のかなりの部分を作っている日本には、温室効果ガス排出を最小限に抑える行動をする責任があるのです。

2018年にスウェーデンの女子高校生が1人で始めた気候変動ストライキが世界中に広がっています。世界中の子供達が、大人たちに向ける大規模なメッセージです。大人たちが十分な対策を行っていない、と抗議の声を上げているのです。日本の子供たちも抗議活動に参加していますが日本の大人たちはその声を聞いているのでしょうか。

日本のエネルギー政策論議で欠けていること

2019年3月、ある夜中に3時間以上にわたる民放の討論番組で、日本のエネルギー政策についての議論が生中継で行われました。久しぶりに私はその番組を最後まで見ていましたが、多数の論客からは、地球温暖化による健康被害についての言及はゼロでした。話題が原子力発電についての是非に集中したためにそうなったとは思いますが、論客達ももっと勉強をして視野を広げてほしいと思います。

日本での原子力発電は、事故の可能性が決して低くなく、また事故が起こった場合の被害の甚大さを考えると、選択されるべきではないと思います。だからといって火力発電中心に戻るべきではないでしょう。中国やドイツでは、再生エネルギーの導入を加速させています。一方で、日本政府は、相変わらず石炭や石油などの化石燃料の燃焼による火力発電に頼る政策を発表しています。

電力会社とそれを規制する担当省庁の利権が、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入を阻んでいることを、国民に広く知らせる役割ではこの番組の価値はありました。しかし、3時間もエネルギーに対して討論していたのに、地球温暖化で世界中の人々が健康被害を受けていることについての言及はなかったのです。スウェーデンの女子高校生が見たらどう感じるでしょうか。二酸化炭素排出量の多い日本にその行動をとる責任が問われているのです。

文献:Tara John. ‘Tragic showcase’ of how climate change could affect world’s poorest. CNN. March 31, 2019.

image by: aapsky, shutterstock.com

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