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徳田医師が語る。大気汚染、気候変動、生活習慣病がリンクする世界的脅威とは?

WHOが世界でより健康な人を今後5年間で10億人増やすという目標を発表。そのために改善しなければならない10の課題を掲げました。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で現役医師の徳田先生が、今回、課題の1番目に上げられた「大気汚染と気候変動」、2番目の「生活習慣病」について詳しく解説。それぞれが相互にリンクし、事態を深刻化させていると警告しています。

人類への健康脅威とは?

2019年に世界保健機関は人類の健康増進のための五か年戦略計画を発表しました。その計画には3大目標があります。1つ目は地球上でさらに10億人の人々に基本的な医療保険を与えることです。世界中には医療アクセス権を持たない人が大勢いるのです。その意味では日本人は恵まれています。

次の目標は、急病や怪我などの時に緊急の医療を受けることができる人を地球上で10億人増やすことです。救急医療に受診することができない人々が世界中にはたくさんいるのです。ここでも日本人はフリーアクセスの恩恵を受けていますね。そして、3つの目標の中の最後の1つは、今よりもより健康的でウェルネスの高い人々を地球上でさらに10億人増やすことです。

これらの3大目標のうち、最後の10億人の健康増進を達成するためには、多くのグローバルな健康問題を改善していく必要があります。今回、世界保健機関は、そのようなグローバル問題について10の課題を発表したのです。今回は、これらについてそれぞれ細かくみていきましょう。

大気汚染、気候変動、生活習慣病

まず、大気汚染と気候変動です。大気汚染は、肺、心臓血管そして脳に深刻な障害をもたらします。大気汚染が原因で、がんや心臓病、慢性閉塞性肺疾患になります。そしてなんと、大気汚染で死亡する人類の数は1年間で7百万人です。これはタバコによる死亡数を超えるともいわれています。しかも死亡する人々のうち90%は途上国の人々です。

大気汚染の主な原因は、工業、農業、運送、そして家庭での燃焼です。これらの大気汚染の要因は、主に石油や石炭などの化石燃料の燃焼であり、同時に気候変動を引き起こしています。気候変動は、栄養失調、下痢、マラリア、熱中症、そして災害の患者を増やしています。パリ議定書での合意レベルの緩やかな温暖化でさえも、今世紀末には地球全体で産業革命以前と比べて平均3度以上も気温を上昇させてしまう恐れがあります。

次に生活習慣病です。がん、心臓病、そして糖尿病などです。これらは人類の死亡原因の70%以上を占めるほどになりました。年間で約4000万人です。このうち、30から70歳までの早期死亡者が約1500万人も含まれています。さらにはまた、生活習慣病が原因で死亡するのも85%以上は途上国の人々です。

精神疾患も増やす生活習慣

生活習慣病の5大原因は、タバコ、酒、不健康な食事、運動不足、大気汚染です。これらの生活習慣は子供の頃に定着し、人々の体を蝕んでいきます。不健康な食事の代表的な内容は、塩分、砂糖、加工肉、赤肉です。赤肉は哺乳類の肉のことを指し、牛肉と豚肉が代表です。牛肉と豚肉を消費するために畜産業を拡大させると地球温暖化が加速します。家畜が大量の温室効果ガスを排出するからです。

不健康な食事を子供の頃から食べさせて、運動しないでいると、早期死亡の原因となります。子供の頃から太っていると大人になっても肥満のままでいることが多いです。世界保健機関は、2030年までに運動不足を15%を減らす、との目標を推進していますが、日本でも地域社会での取り組みがもっと必要ですね。

不健康な生活習慣は精神疾患のリスクともなります。10歳代後半の若い人の死亡原因の2位は自殺ですが、その多くはうつ病などの精神疾患が原因なのです。日本人母親での、妊娠中や出産後のうつ病による自殺や小児虐待も深刻です。産後ノイローゼなどと言われて社会的に放置されていることも多いのでこれに対して認識をもっと深めることが重要です。

文献WHO. Ten threats to global health in 2019.

image by: Hung Chung Chih, shutterstock.com

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