メディアでは昨今、都市部から地方への移住者が取り上げられることも多い傾向にありますが、やはり東京圏への人の流れはいまだ増加傾向にあるようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが、国交省発表の資料を分析しつつ、そこから読み取れる今後の人の流れについて持論を記しています。
東京への人口集中、鍵を握るのは女性と外国人
こんにちは!廣田信子です。
国土交通省の国土審議会計画推進部会の企画・モニタリング専門委員会が、日本人の人口の流れについてまとめた資料を公開しています。
それによると、
1.市区町村別・都市圏別の日本人の転入超過(転入の方が転出より多い)の状況
2013年から2017年の5年間を平均して転入超過の市区町村は全体の約25%でした。
全体としては、人口規模の大きい都市が転入超過となっており、東京圏以外で転入超過となっている市区町村の約77%は他の都市への通勤率が10%を超えるいわゆる都市の「郊外」の市区町村ですから、人口の偏在化は進行しています。
2.東京圏、政令市への人の流れ
東京圏の転入超過は増加傾向にあります。
全国の都道府県間移動者数は20-24歳が最も多いのですが、長期的には減少傾向にあり、20-24歳が転入超過となっている市区町村は東京圏、政令市など全体の2割以下です。
東京圏への20-24歳の転入超過は、最近は、女性が男性を大きく上回っています。17年の東京圏への転入超過は、男性が約3万人、女性が約4万人でした。
東京都区部は他の政令市と比較して、大企業が集中し、正規職員割合が高く、事務従事者、学術研究、専門・技術サービス業等に占める女性の大学・大学院卒業者の割合が高いという特徴があります。
学歴が高い女性の就職先が、東京都心部に多いことが、就職期の女性の転入に繋がっているのでしょうか。
3.都市から地方への人の流れ
2012年から2017年の6か年間に三大都市圏からの転入超過が4回以上の市町村は86存在していて、「田園回帰」の傾向は継続して見られますが、そうではない市町村がほとんどで、過疎と呼ばれる地域の中でも格差が広がっています。
自治体の努力で、田舎への移住が成功している事例が取り上げられますが、数の上では限定的だということでしょう。
4.人の集まっている市町村
一人当たり課税対象所得が高い市区町村には、転入超過となっている市区町村が多い傾向があります。
移動の全体に占める外国人等の割合は2013年から2017年の平均で、約13%で、人口に占める外国人等の影響は年々上昇しています。総数で社会減少(移動による転入を転出が上回る)となっている1,340市区町村のうち、外国人が社会増加(移動による転出を転入が上回る)となっている市区町村が約82%です。
外国人の増加によって、人口減少がカバーしている市町村が多数あることが分かります。高い収入を得やすいところに人が移動し、それによって人口が減少し、人手不足に困る市区町村を外国人労働者が支えている…という状況が見えます。
在留外国人の増加は13年以降続いており、18年6月末時点で263万7,000人となり、さらなる増加が見込まれますが、外国人労働者も、より多くの収入を求めて、都心部に居住するという傾向があります。
外国人労働者に支えられている人口減の市区町村から、今後、外国人が大都市に移動するという傾向は、ますます進むことと思われます。
この資料から、「大都市圏、特に東京圏への人口集中は、ますます進むだろう。で、やはり集中の理由の一番は、収入の多い仕事があるということ」が確認できました。
さらに、高学歴で大企業等に就職した女性は都心部に住み、結婚しても子育てしながらも仕事を続けるためにやはり都心部に住居を求める。それが、都心部のタワーマンション需要を支えてきたことが分かります。
一方、外国人は、時給が高く長時間働けるところで働くことを望み、大都市、その近郊に居住する傾向があります。したがって、比較的家賃が低い都心部の高経年マンションに、外国人居住が増えている状況は必然と言えます。今後も増えることはあっても減ることはないでしょう。
「働き続ける女性」と「外国人労働者」は、どちらも、国の方針に合致した存在ですから、今後、ますます増えるでしょう。都心への人口集中はまだまだ進む…。その鍵を握るのは、「働き続ける女性」と「外国人」のようです。
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