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現役アナが教える「残念なプレゼン」が残念になってしまう理由

人前で話すあらゆるシーンに役立つプロの技を伝えてくれるメルマガ『話し方を磨く刺激的なひと言』の著者で、アナウンサー歴30年の熊谷章洋さん。今回は、前回の「寄って見せる」話し方をさらに進めて、関心を持って聞いてもらうための工夫の仕方について伝えてくれます。同時に、関心が向かない、退屈なプレゼンになってしまう気づきにくい原因についてもわかりやすく教えてくれました。

なぜそのプレゼンがつまらないのか?気づきにくい原因

「見せながら話すコツ」として、

というポイントについて解説しています。

前回は、見えていることから感じる疑問に答えること、さらにはもっと能動的に、言いたいことを見た目の特徴に繋げて表現し、そこから生まれる疑問に答える形にもっていく説明の仕方、そしてそのために、聞き手の視線を見た目に集める、「クローズアップする話し方」について、お伝えしましたね。(詳しくは前回記事をご覧ください)

今回はまず、その「クローズアップする話し方」を、より効果的に、聞き手に関心を持って聞いてもらうための工夫についてお話しします。

それは、「見て初めて分かるような言い方」にすること。つまり、見なくちゃわからない表現をすることで、なかば強制的に、聴衆を振り向かせる、ということです。

前回の記事で、スポーツニュースの原稿が、映像を見せること前提の文章になっている、という話をしましたが、その最もわかりやすい例が、「この打球」とか「このプレー」など、指示語が多用されることです。 この打球のことを、一二塁間を破る鋭いライナー性の打球、などと、映像を見せる前に説明したりはしません。映像を見た後に、説明が必要であれば、付け加えるような言い方になります。これが、「見て初めて分かるような言い方」です。完全に映像が主、言葉が従で、言葉は映像の前振りになっていますよね。 このような、言葉の前振りの意味が映像を見て初めて分かる言い方が、スポーツニュースの原稿の基本構造になっていますテレビを見せるための技術といってもいいかもしれません。 バリエーションはいくらでも創作可能ですから、

というキーワードで発想してみてください。 例えば、自分がおススメするものを持ちながら、

と言えば、聞き手は、

と、おのずと話し手の手元に注目しますよね。 以前、話を「謎解き形式」にする、という記事でも解説しましたが、「見て初めて分かるような言い方」では、言葉で問いかけ、見た目が答えになる謎解き形式になっています。

聞き手の聞く意欲を高めるのはもちろん、話が立体的になりますよね。それによって、聞き手の意識を刺激するとともに、視線と体を動かせることで、退屈を感じさせない話をすることができます。 クローズアップする話し方では、全体像から細部へ、さらに視線の焦点が移動しますから、なおさら集中力も増すわけですね。 逆に言うと、聞き手の視線が動かない、あるいは「なになに、どういうこと?」というような意識への刺激の少ない話は、眠くなる、ということです。この点についても、過去記事でお伝えしてきたとおりです。

そしてここでひとつ、大切な「気づきポイント」があります。それは、見せたい見た目(映像や実物)があって、言いたいことと完全に結びついている、そしてそれが話の前提になっている、ということです。 ちょっと精神論みたいになってしまいますが、何を見せたいかが明確なので、見せたい気持ち、言いたい気持ちの情熱が、おのずと高まる、ということです。もっともその情熱は、話を作っていく段階で、意識的にスイッチを入れることが可能です。

論点を考えているうちに、無性に、早くその話をしたくなることはありませんか?それは、何が言いたいか、論点を絞り込んでいくうちに、話したい情熱のスイッチが、自然に入ったせいなんですね。

ちなみに上述のスポーツニュース原稿では、そのあたりはほとんど自動化、方程式化されています。例えば、プロ野球の結果であれば、どちらがどう勝った負けたかは、既に事実として揺るぎないですから、あとは、それを語るうえで必要なプレーの映像を選択し、補足説明と効果的に盛り上げる文言を付け加える作業。 見せたい気持ち、言いたい気持ちの情熱、何を見せたいかの明確化、このあたりがシステムとして出来上がっているわけですね。

いっぽう、たまに見かける「残念なプレゼン」が、残念になってしまう一番の原因も、ここなんです。せっかく見せながら話すことができるのに、ただぼんやり全体像を見せるだけ。どこを見せて、何を語るか?を繋ぎきれていないんですね。 「見せながら話す」話し方において、見せる部分がぼんやりしてしまうと、話の内容もぼんやりと、そして表面的に聞こえてしまうものなんです。あるいは、話す内容が絞り切れてないから、明確に見せられない、と言うこともできるでしょう。

これを逆手にとれば発表、プレゼン、見せながらの説明の時に、どういう話をするか、見せるところを絞りこんでいくことから発想する、という考え方もできると思います。いずれにせよ、残念なプレゼンが、残念になってしまう一番の原因は、見せたいところと、本質が結び付けられていないから、なんですよね。

具体的には、「これは何だと思います?これは、〇〇なんです」。ここ止まりでは、そのものの存在と見た目の全体像を繋げただけですよね。聞き手は、「へー」でおしまい。 あとは見た目から、もっと詳細な疑問を抱いてもらえるかどうかの、相手任せの状態になってしまいます。よほど前のめりで話を拾おうとしてくれる人以外には、通用しないでしょう。

その点、伝える使命を背負った話し手ならば、「この部分、どうしてこうなっているかと言いますと?この部分がこうなっていることによって、こうすることが可能になったんです。これがどういう意味を持つかと言うと!(ここが言いたいことの本質)」。 とか、「これがすごくいいんですよ、お勧めです~」止まりではなく、「これが、こんなふうに良かったんです、ほかのものでは味わえないその良さの、理由はこの部分なんです…(ここが言いたいことの本質)」。 と、見せながら、自分が言いたいことの核心に迫っていくような話の進め方を、心がけたいところ。これは残念なプレゼンだけではなく、プロが製作するテレビショッピングなどでも、面白みに欠けるコンテンツでは、この点が演出しきれていないものをよく見かけます。しかも、このポイントは、なぜそのプレゼンやコンテンツが面白くないのか?いっぽうで、そこを上手にやれる人はどこが違うのか?見ている人はほとんど気づきにくい点でもあります。
当メールマガジンの読者さんは、ぜひ、こっそり実践してみてくださいね。

image by: Shutterstock.com

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アナウンサー歴30年、極限の環境で話し続ける著者が、実体験から会得した「話し方のコツ」を理論化。人前で話す必要がある人の「もっと〇〇したい」に、お答えしています。一般的な「話し方本」には無い情報満載。

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【著者】 熊谷章洋 【月額】 ¥346/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 月曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

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