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行き過ぎた「円安誘導」を止めよ。もはや輸出依存国ではない日本

これまで長きに渡り「貿易立国」として歩んできた我が国ですが、その産業構造に大きな変化が見られているようです。「日本は輸出経済依存国から海外投資の配当金依存国になってきた」とするのは、メルマガ『国際戦略コラム有料版』著者の津田慶治さん。津田さんは今回の記事中、構造が変わった日本にとっては円高の方が有利であり、日銀等による円安誘導については「必要なし」としています。

NY株価最高値で利下げ?

6月18、19日のFOMC後のパウエル議長は、年内の利下げを容認とも取れる発言があり、S&P500指数は最高値になりNYダウも最高値近くになっている。今後の検討しよう。

日米株価

NYダウは、2018年10月3日26,951ドルで過去最高株価であるが、12月26日21,712ドルと暴落したが、その後は上昇して4月23日26,695ドルになったが、米中貿易戦争激化とメキシコ移民問題が出て6月3日24,680ドルまで下げた。しかし、FRBの今年利下げ容認で6月21日26,719ドルまで戻し6月20日S&P500指数は最高値になった。

日経平均株価も、同様に2018年10月2日24,448円になり、12月26日18,948円と暴落し、4月24日22,362円に上昇したが、対中対墨貿易移民戦争激化で6月4日20,289円まで下落。しかし、米国で今年利下げ観測で6月20日21,462円と上昇。しかし、一時1ドル=107円5銭と円高のために6月21日は21,258円と下落が、出来高は2.7兆円まで回復した。

10年米国債の金利が2%になり、普通、株価と金利水準は相関があるのに、逆相関になり異常な状態になっている。株価が高いと、利上げで金利は高くして、景気が悪いと利下げで金利を下げ、株価も低いことになるはず。それが金利は低く、株価は高いとなり、相関が崩れておかしい状態になっている。

逆イールドにもなって、短期金利を下げる必要になっているというが、景気が悪いからではなく、株価が最高値にあるのに、逆イールドになっている。米国の金融経済はハチャメチャな状態になっている。

株価が高いのに、景気が良くないとFRBは、利下げするというのも、おかしいことである。景気と株価の相関も崩れたことになっている。普通、株価が高いとバブル形成を抑えるために、利上げする方がよいと思えるのに、利下げを容認するとパウエル議長は言っている。中央銀行バブルもここに極まったように感じる。

FRB委員の展望チャートでは、8人が据え置き、1人が利上げ、8人が利下げとなっている。市場は7月利上げ100%である。FRBは微妙なバランスを取っている。

株価が高いのに利下げをトランプ大統領は強制するが、それは、まともな金融政策ではなく金融政策によるバブル形成を意味している。そのバブルが崩壊したら、その衝撃は非常に大きくなると、心配する。あと何年、いや何か月、バブル景気はもつのであろうか?

そして、ECBもドラギ総裁も利下げの方を示唆したことで、利上げに向かっていた中央銀行は、再度、金融緩和の方向に転換したことになる。中央銀行バブルが世界的になってきたようである。

しかし、日本は、米国と欧州金利の下げ観測でドル・ユーロで円高に振れて、株高にならず日本のバブル形成は促進しないのが、せめての救いである。その上に消費税UPを行えば、株価が高騰することはないので、バブル形成を起こさなくて済むことになる。

そして、景気動向が下向きになり、企業の内部留保した資金を投資にも回せずに、とうとう、その資金で自社株買いをおこない始めた。このため、日経平均株価も大きな下落がない

米中首脳会談

米中首脳会談で、何かの合意ができるのであろうか?米国の要求レベルを下げないと、合意は無理であると思う。それなら、米国は、残りの3,000億ドル分の中国からの輸入品に関税20%UPにできるのかという問題になる。

アップルのスマホや他社のノートパソコンの部品などの関税が高くなり、消費者物価を上げてしまうことになる。インフレになる

中央銀行が金融緩和を行える環境はインフレが低いことに起因している。それを潰す方向の政策をすることになる。それと、減税した効果は、関税UPで帳消しになり、多くの米国企業が第4弾の関税に反対しているが、トランプ大統領は、行うのかということである。

もし、行えば、今度こそ、世界景気は大きな影響を受けて、それで米国の景気も下げていくことになると見る。

その米国のジレンマを見ているのが、中国であろう。中国も8月に最高幹部の秘密会である北戴河会議があり、習近平国家主席に対して、歴代の長老たちが、対米貿易問題や香港問題で攻めることは、目に見えている。特に「中国製造2025」の旗を降ろすと、大きな抵抗に会うことになる。「習近平下ろしに発展する可能性もある。

このため、中国のハイテク化推進を米国が止めようとする条件を、中国の習近平は受けることができない。人権問題を米国は出そうとしているが、それも受けることができない。

G20での米中首脳会談で中国は、米朝会談仲介の労をネタに通商問題での譲歩を少なくしたいようである。このため、6月1920日に習近平主席は北朝鮮を訪問した。

ということで、まだ、当分は米中の合意は先のように思うが、米国が大きな譲歩をすれば、部分合意ができるかもしれない。

ペンス副大統領の6月24日の中国の人権問題についての講演会が無期延期になったのも、トランプ大統領からの要請であるが、トランプ大統領も、2020年の後半の選挙期間中に劇的な米中合意にして選挙戦を有利にしたいはずで、今、無理してまで合意をする必要もないが、合意に向けた環境は整える必要がある。

しかし、バイデン民主党候補が、共和党優位州の支持率でトランプ大統領よりも上になっている。このため、中国とどこかの時点で合意する必要にもある。

しかし、この米中首脳会談が不調になると、景気を冷やすということで、FRBは、7月利下げができることになる。もし、部分的な合意になると、FRBは、7月利下げはできなくなる。どちらを市場は好むのであろうか?

ポール・チューダーは、利上げから利下げになる移行期間、株価は上がるが、利下げになった途端、株価は下がると言っている。読者の皆様は、気を付けてください。もし、7月利下げになると7月後半から下落が始まることになる。

英国の合意なきEU離脱

メイ首相辞任で、次の党首を選ぶ国会議員の議員投票で、EUからの強硬離脱派ボリス・ジョンソン前外相と穏健派ジェレミー・ハント外相の2人で保守党党員による決選投票になった。国会議員の投票ではジョンソン前外相が過半数を抑えたので、その方向の結果になる可能性がある。

もし、ジョンソン首相になると、10月にEUとの協議が不成立の場合、合意なき離脱になる。それと、ジョンソン氏は民族差別をする移民反対論者でもあり、トランプ大統領と同じタイプの人間で、民衆迎合の指導者が、世界で、もう1人増えることになる。同じタイプの指導者で、トランプ大統領は、英米経済同盟を提案している。

英国経済は米国経済との一体化で合意なきEU離脱の経済の落ち込みを米国経済と一緒になることで、取り戻せる可能性がある。英国に進出している日本企業は米国への輸出ができるために一息付けることになる。

そして、世界の陣営が中露の独裁主義国家と英米のブロック経済国家群と日本EUなどの自由貿易国家群の3つの陣営に分離することになる。日本は、英米同盟にも参加して、自由国家群とブロック経済国家群をまとめる役割をするしかない。よって、世界が複雑化することになる。

米イラン戦争

イランが米国無人機を撃墜した。そのため、ボルトン補佐官とポンペイオ国務長官は、イランへの爆撃の承認を取ったが、その後、トランプ大統領が、違う政権幹部からの忠告で、攻撃10分前に承認を撤回した。もう少しでイランと米国の戦争になるところであった。

しかし、米国の動向を知ったイラン革命防衛隊は今後、戦争を前提に行動をする。そのため、遅かれ早かれ、米イラン戦争が開始される。

ボルトン補佐官とポンペイオ国務長官は、新しく中東に6,000人増派するとしたが、高々中東では米軍2万人体制である。

このため、戦争時に備えて、イラクの米大使館から米人を退去させている。イラクはイランの味方になり、米大使館を攻撃すると見ているようである。米軍は中東では劣勢である。

そして、突如、国連は、サウジのムハンマド皇太子がカショギ殺害の首謀者として認定して、米国とサウジの共闘は、米国議会の承認を得られないことになった。その上、サウジへの武器売却も米上院は承認せず、トランプ大統領は、拒否権を行使して売却する。

このため、ボルトン補佐官は、イスラエルのネタニエフ首相と会談のために、イスラエルに飛んだ。イスラエルのモサドは、情報網を中東全域に引いている。そして、スンニ派のISやアルカイダにも支援をしている。

もし、米国とイランの戦争になったら、イスラエルの軍事力と情報網が米国には必要になる。劣勢の米軍が戦うためには、援軍が必要であり、このため、戦争時のイスラエルの行動を打ち合わせに行ったと見る。ということで、サウジ抜きの米イラン戦争が間近である。

今後、戦争になれば、ホルムズ海峡封鎖で石油供給をどうするのかの難しい問題が出てくる。当分は石油備蓄で凌げるが、戦争終結には数年かかるために、石油供給先を見つける必要がある。それも早くしないと間に合わない。

ロシアや豪州、米国からのLNGと原油の輸入を増やすことである。中東の原油依存から脱却する施策を打つことだ。

日本の円高

日本の産業構造が変化している。日本が輸出経済依存国から海外投資の配当金依存国になってきた。

輸出が多ければ、円安の方が有利であるが、輸入が多ければ、円高の方が有利になる。5月統計でも貿易赤字になり、円高の方が有利のはず。配当金は円高になると、円表示は少なくなるが、企業は、利益を日本に還流させていない。ドルなど外貨建てで持っているので、価値は変わらない。損にならない。ということで、円安より円高の方が日本経済にとって有利になっている。

しかし、円高になるかというと、日本経済の実力が徐々に下がり、金利もマイナスであり、最先端技術力のある企業も多くなく、海外からの魅力ある投資先がない。このため投資資金が入らないことで、円高にもなりにくくなっているように感じる。

今は経常収支が黒字であり、円の実力もあると思われているので、円高に振れるかもしれないが、日銀がマイナス金利を深堀するなどの無理をしてまでの金利下げで円安にする必要はない

金利を下げると、日本国債に投資している年金資金の損が膨らみ、地方銀行などが立ちいかなくなる。流動性不安を起こす危険性を冒してまで、円高を阻止することはない。財務省高官が口先介入を繰り返すことや、それより強い方法としては日銀が、日銀にある日本国債の永久国債化で、円の信用度を落とすことかもしれない。

ビックリさせて、円高に振れないようにすることであろう。しかし、今後の問題は、経常収支赤字になった時点での行き過ぎた円安への対応方法に移ることになる。

さあ、どうなりますか?

image by: Shutterstock.com

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国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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