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楽天モバイルに「いかがなものか」NTTドコモが苦言を呈した理由

DMM.comの格安スマホ事業を買収し、MVNO(格安SIM)事業を拡大しつつ、さらにMNO事業(携帯電話やスマホなどの通信網を自社で設置・運用し通信サービスを提供する事業)にも10月から新規参入することが話題を呼んでいる楽天。しかし、そんな「MNOとMVNOの一体経営」に「いかがなものか」と苦言を呈したのがNTTドコモです。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、楽天の格安スマホ買収戦略を賞賛しつつ、楽天モバイルが抱える「最初の試練」について語っています。

楽天がDMM.comの格安スマホ事業を23億円で買収━━NTTドコモ・吉澤社長「MNOがMVNOをやるのはいかがなものか」

楽天がDMM.comの格安スマホ事業を買収すると発表した。買収額は23億円。総務省の施策により、3大キャリアが値下げを余儀なくされる中、格安スマホ事業者の経営は厳しさを増しており、今後もこうした買収劇や再編が行われる可能性が極めて高い。

DMMは24万件の契約者を抱えており、買収により楽天モバイルの契約者数は220万まで増える。

楽天は2017年にはプラスワン・マーケティングが運営していた「フリーテルも買収している。買収額は5億円だったが、負債の30億円も引き受けた。ただ、流動資産が14億円あり、差し引き16億円の実質的な負担と考えれば、買収額と合わせて21億円規模でフリーテルの43万回線を手に入れたのだった。

フリーテルの場合が1ユーザーあたり約5000円、DMMは約1万円の顧客獲得コストになるというわけだ。昨今、格安スマホでユーザーを獲得するのも楽ではないことを考えると、かなりお買い得な買い物だったのではないだろうか。

ここ最近の総務省の方針により、キャリア間の顧客獲得競争に逆風が吹こうとしている。楽天としては相当、厳しい戦いを余儀なくされるだろう。そんななか、他社から格安スマホ事業をまるごと買収してしまうというのはとても賢い戦略だ。

ただ、一方で、10月からは「MNOがMVNOを一体経営するのはいかがなものか」という批判の声もあがることだろう。

特に、不満を表しているのが回線を貸し出しているNTTドコモだ。

吉澤和弘社長は「MNOとMVNOには明確に線を引かないといけない。KDDIはauとUQモバイルは別会社という扱いだ。(楽天は)会社として、あえて一緒にしている。本来、両方、一緒にやるのはいかがなものか。MNOは自ら設備を構築して、回線管理もやるのが大前提。かたや、もういっぽうでMVNOをやるのは本来おかしい。必ず巻き取ってもらう。(10月に事業が)スタートする際には楽天と交渉しようと思っている」と手厳しい。

楽天としては、MVNO契約者に対して、MNOのSIMカードを送付するとしているが、楽天モバイルユーザーであっても、10月からサービスを開始する楽天自社回線に対応しているスマホを持っているとは限らない。自社回線を使うには対応スマホが必要となってくるが、楽天が端末代金を割り引いて提供するかなどの施策はいまだに見えていない

220万回線まで増えた契約者をいかにスムーズにMNO事業に移行させていくかが、楽天にとっては最初の課題となりそうだ。

ドコモショップでパンプス廃止。スニーカー導入は実験店舗の成果━━NTTドコモ・吉澤社長「ショップは利用促進のために活用」

秋から施行される改正電気通信事業法によって、スマホの販売台数が落ちると予想される。そうなれば、街中のキャリアショップの存在が危うくなる可能性が出てきている。

そんななか、NTTドコモの吉澤和弘社長は「ドコモショップは、販売台数が出ないことには経営が厳しくなる。そのため、販売促進だけでなく、最近では利用促進に手数料を支払っている」と語る。

やはり「いかにスマホを便利に使ってもらうか」が重要であり、NTTドコモとしてはショップを顧客接点の重要な場所として位置付けているようだ。吉澤社長は「利用促進のためにどんどんショップを活用する。スマホ教室にもお金を払っている。ショップを削減するつもりはない」という。

契約手続きや故障対応、料金の支払いなどでは、オンラインでの対応を強化する一方、ショップは体験してもらう場所にしていきたいとのことだ。将来的にはショップをいち早く5Gエリア化させ、5Gも体験できるようにもするようだ。

NTTドコモでは、すでに実験店舗という位置付けで新しい取り組みを始めている。

この4月にドコモショップ五反田店をリニューアルし「d garden 五反田店」として実験店舗をオープンさせていたのだ。

スタッフのユニフォームはカジュアルなものとなっており、靴もスニーカー着用となっている。今週、一部ニュースで「ドコモショップの店員がパンプスを廃止し、スニーカーを履けるようにする」という報道があったが、これもd gardenでの取り組みが好評だったためのようだ。吉澤社長は「ユニフォームも評判がいいので、すべての店舗のユニフォームを変えてしまおうかと検討中」とのことだった。

また、d gardenでは、メルカリの出品用の梱包場所があったり、ドコモ・バイクシェアが設置されていった取り組みも行われているという。また、会員向けにはコーヒーも無料で提供。カフェの利用ユーザーには雑誌読み放題サービス「dマガジン for Biz」がインストールされたタブレットも利用できるとのことだ。

吉澤社長は「将来的には10店舗ほど設置したい。それぐらいあれば、実験としての成果が見えてくるのではないか」と語る。
スマホが売れなくなる中で、キャリアショップの位置付けも変化が求められているようだ。

image by: rafapress / Shutterstock.com

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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