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「人民あっての権力者」の発想がない金正恩がミサイルで守るもの

7月25日から8月16日までの3週間余りで6回もミサイルを発射した北朝鮮。困窮する人民を顧みることなくミサイル発射を繰り返す金正恩の意図はどこにあるのか、メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』の著者で、北朝鮮研究の第一人者、宮塚利雄さんが解説します。宮塚さんは、米韓を舐めきってのミサイル連発ではあるものの、トランプ大統領の狙いにハマっている部分もあるという見方を示しています。

金王朝の護持と我が身の保身のため黄金を使う金正恩

「そこのけ、そこのけ、金様のお通りだ」と言わんばかり、北朝鮮の金様(朝鮮労働党委員長)の威勢がいい。「そこ」とは「韓国の文在寅大統領と安倍晋三首相」である。

それにしても狂気か威嚇か、それとも「イタチの最後っ屁」か、日本海側に向けてミサイルをよく飛ばすものである。3週間余りで6回もの発射である。ミサイルを飛ばす金があったら、人民に食べさす食糧をいくらでも輸入できるではないか、という話はこの国の金様には通じない。

北海道の山奥の小さな中学校に通っていたとき、私を可愛がってくれた国語の先生が、ある日「宮塚、君はこのような話を知っているかね?」と言って、「日本昔話」に出てくる一説を話した。それは「長者の宝競べ」という話で、「あるとき、2人の長者が“宝物くらべ”をした。1人は、自分の住むところから3里という長い道のりに“黄金の飛び石”を敷き、それを踏んで歩いてきた。もう1人の長者は、何も物を持たない代わりに24人という大勢のわが子とともにやってきた。大量の黄金を誇った前者は、その子どもたちを見て、“羨ましい”と言った」というのである。

聞いたときは、なかなか理解できなかったが、今にして思えば、いつも「貧しい、希望のない生活を送っている私に、人間の価値とは何か、ということを教えてくれたもの」と思っているが、北朝鮮の金様は「24人の子どもを連れてきた長者」とは異なり、たった1つ「2000万人近くの人民ではなく、金王朝の護持と我が身の保身」のために、なけなしの黄金をミサイル発射に使っているのである(なけなしの黄金、と言ったが、これには以下の説明が必要だが、ここでは“なけなし”とだけ言っておく)。

さらに、後年になって、この「長者の宝競べ」にさらに「銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむに 勝れる宝 子に及(し)かめやも」(山上憶良)という歌を知ったが、「子」=「人民」があっての権力者であるが、北朝鮮の長者の金様にはそのような発想はまったくない。それどころか、日・米・韓の放任をいいことに、まさにやりたい、言いたい放題である。

金正恩は、米韓が「防御的」とする演習に対抗し、「我々も防衛に必須の威力ある手段を開発、実験、配備せざるを得ない」とし、発射場所や飛距離、高度を変えながら「いつどこでもミサイル防衛網を避け、韓国全域を攻撃できるとの脅迫だ」と言ってはばからない。

今の金正恩は、米韓を舐め切っているようにしか思えない。一方の日本と言えば、「ミサイルが発射されるたびに、会議だけを開いている」が実情である。茶坊主の役割を果たした文在寅は、もはや蚊帳の外である。「拉致問題の解決のためには無条件で会談に応じる」と言う安倍晋三も、もはや金正恩にとっては眼中にはないだろう(まったくとは言わないが)。今の金正恩はまさに「そこのけ、そこのけ、金様のお通りだい」という状況かもしれないが、商売人のトランプ大統領は「北朝鮮が湯水のように黄金を使い、やがてそれが枯渇する日を虎視眈々と狙っている」のである。

「黄金(ミサイル)よりも子(人民の生活・人権向上など)が大事であることを誰よりも金正恩は知っているはず」だが、「金王朝の護持と我が身の保身」しか考えていない(それしかないのだが)今の体制では、無理なことかもしれない。商売人トランプ大統領は崖っぷちに立っている金正恩に「さらなるミサイル発射をそそのかす」だろう。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

image by: motttive / Shutterstock.com

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元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

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