国外に目を向ければこじれにこじれた対日関係、国内では法相に「強行指名」したチョ・グク氏を巡る問題と、窮地に立たされているかのようにも見える韓国の文在寅大統領。しかしまだこの先、文大統領を大きな試練が待ち受けているようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、来たるべき世界的バブル崩壊時に韓国が襲われる「惨劇」を記しています。
米国は再度バブル拡大期に
米国経済の先行指標は上向いてきた。FRBは、短期レポ金利の金利管理をしっかりをする方向であり、利下げと債券の買取で景気を維持する方向にシフトするようだ。この政策の検討をする。
日米株価
NYダウは、利下げ期待で、7月16日27,398ドルと最高値を更新したが、その後下落して、弾劾調査入りと中国企業のNY市場上場廃止を検討という情報で、下落して9月27日に26,820ドルになっている。株価の横バイが続いている。
米中通商交渉を楽観視していたが、トランプ・ツイートで、またひっくり返された。しかし、トランプ・ツイートの下落幅は、小さくなってきた。10月の閣僚級通商交渉の行方で株価も決まる。弾劾調査は、トランプ大統領と共にバイデン候補も傷つくことになる。
日経平均株価は、2018年10月2日24,448円になったが、以後低調で、12月26日18,948円と暴落し、8月26日20,173円になってしたが、その後、売り残の買戻しで9月20日22,079円になり、そして160円の9月末権利落ち分と10円下落で9月27日21,878円と22,000円を割り込んだ。
空売り残の買戻しで上げてきたが、そろそろ、その買いも止まるようである。しかし、大型株は上昇して株価が戻り、塩漬けから循環の買いが出てきている。このため、小型株も上がってきた。しかし10月の消費税増税での消費低迷と企業決算発表で業績がどこまで行くのか注目点になっている。10月下落の可能性も高い。
弾劾調査
トランプ大統領は、ウクライナ大統領との首脳会談で、軍事支援との見返りで、民主党バイデン大統領候補の息子の調査を依頼したと内部告発があり、民主党ナンシー・ペロシ米国下院議長は、この件でトランプ大統領への弾劾調査を行うとした。
民主党の元副大統領バイデン氏が副大統領時代にウクライナのガス会社に勤める次男を守るためにそのガス会社を調査しようとしていた検事総長を解任しようと画策した、という疑惑が生まれた。トランプ大統領は、これをウクライナ大統領に270億円相当の軍事支援金を出し渋って調査させたのではないか、という二つの疑惑が、からまった話である。
民主党大統領候補の争いは、バイデン氏、ウォーレン氏、サンダース氏の3人が有力候補となっている。この戦いで、バイデン候補が不利になる可能性が出てきた。バイデン候補は穏健で親中的であり、ウォール街やGAFAの味方であるが、ウォーレン候補とサンダース候補は、反ウォール街、反富裕階級であり、反GAFAである。
バイデン候補も、この弾劾調査で疑惑を受けることになるので、民主党候補は、反ウォール街の2候補になり、トランプ大統領も影では反ウォール街ではあるが、ウォーレン候補やサンダース候補よりましで、有利になると見ているようだ。
そして、弾劾裁判になっても、上院は共和党が過半数を占めているので、弾劾裁判で負けることはないと踏んでいる。これ以上の支持率の低下もないと見ている。農家の支持率が落ちているので、その支持率を回復することが優先課題になっている。
米中通商交渉
米中通商交渉では、10月第2週に閣僚級協議を実施するとムニューシン財務長官は述べた。この協議に向けて、中国は、ウクライナ疑惑でバイデン候補不利と見て、米国との関係をトランプ大統領中に解決しようと、大豆と豚肉を大量に買うことで、協議を進展させるようだ。中国の景況感も大幅な減速になり、これ以上の景気減速を避けたいようである。
しかし、米国のトランプ大統領は、ハイテク戦争で負ける訳にもいかず、中国企業の米株式市場での上場廃止や、政府年金基金を通じ米国民の中国市場へのエクスポージャーを制限することを検討するという。貿易戦争から資本戦争に拡大することになる。
中国は、貿易では譲れるが、ハイテク競争では譲れないし、政府の産業育成資金問題では、絶対に譲れない。この部分に米国が踏み込むと、交渉は暗礁に乗り上げることになる。どこで、暫定合意ができるかが、焦点のようである。
私の推理では、中国が雑貨の関税UPを元に戻すことを条件に米国産大豆と豚肉など農畜産物の輸入を行うという暫定合意は可能と見る。ハイテク分野での合意はできないはず。
このため、米中の経済分離が起きる可能性もあるが、ここまでの状況を見るに、あまり米国株価に影響しない。農家の支持率回復には有効であり、トランプ大統領は、応じると見る。
北朝鮮とイランとの交渉
もう1つ、トランプ大統領は、ブラフによる交渉を進めるが、徐々に手の内を知られ始めている。トランプ大統領のブラフを用いた交渉は、日本や韓国には通じるが、イラン、北朝鮮には効果がない。中国も一線の越えた交渉は、拒否する可能性が高い。
イランや北朝鮮では、トランプ大統領が戦争を嫌うことを知り、余裕を持ち、「制裁を解除」や「短距離ミサイル開発の容認」「核大国の承認」などと対話条件を引き上げて、交渉を開始しないようである。米国も条件を引き上げられたことで、対話できない状況になっている。
北朝鮮との実務者協議もできないので、トランプ大統領は、韓国の文大統領が何か情報を持っていないかと、国連総会に来た文大統領と首脳会談したが、北朝鮮から相手にされていないことを知り、安倍首相に、韓国の駄目さ加減の愚痴をこぼしている。
しかし、北朝鮮との平和協定を締結して、トランプ大統領はノーベル平和賞を狙っているが、足元を見られて金正恩委員長は、対話条件をドンドン引き上げている。北朝鮮は、短距離ミサイル実験を認めさせて、次にはボルトン補佐官を辞任に追い込み、次には核大国として認めよという条件を出してくることになる。このため、トランプ大統領も、北朝鮮との交渉を諦めかけている。
イランも米国との交渉に「制裁緩和」という条件を付けているが、トランプ大統領は弱虫という評判を恐れて、イランの条件を飲むことはない。
中東では、イスラエルのタカ派ネタニエフ首相が選挙で負けて、穏健派ガンツ氏が首相になる。ガンツ氏は、アラブ系政党と連合して政権を構成することも検討している。このため、イランとの敵対関係を修正する可能性がある。このため、米国も中東で戦争を仕掛ける意味が完全になくなっている。
サウジに200人の防空部隊を送ったが、米国はイランとの戦争をする気がないことを、サウジも知りイエメン・フーシ派と部分停戦することになった。中東ではイラン優勢で、情勢が変化している。
FRBの金融政策
FRBの0.25%の2回の利下げで、金利が2%以下になり、米国の8月新築住宅販売件数が年71.3万件で前月比+7.1%と高い伸びになっている。8月の住宅は新築と中古の販売が強めで、新築着工は大幅増加。金利低下の効果が一気に出ている。製造業ISM指数は、50割れであり低いままである。また、消費者信頼感指数も8月までは高かったが、関税UPの影響から9月は低くなっている。というように景気指数はまちまちであるが、景気後退とも言えない。むしろ、景気の先行指数は良いことになっている。
しかし、短期レポ金利が、上昇して一時10%になり短期資金の調達コストが上がり、FRBは、緊急的な処置として、国債や社債などを買い取り、資金提供した。この短期レポ市場での資金提供は、QE4と同じ効果を持つ処置であり、FRBは、短期市場でステルスQE4をすることができる。今まで、短期金利は準備預金金利であったが、短期レポ金利を含めるとすることで、これを継続的に行えるようにして、株価の維持を行うようにトランプ政権から要求され、FRBは検討に入ったという。
トランプ大統領としても、これで実質的な株価維持ができるし、FRBの独立性を疑われる要求をしなくて済む。
景気の先行指標は良く、10月も0.25%利下げして、資金を潤沢に提供することで、バブル相場を2020年11月まで維持するようである。バブル相場延命の方向に、舵を切ったようだ。
しかし、10月の米中通商交渉が不調なら下落もあるが、それほどには大きくない。トランプ・ツイートでもあまり下落しない。もう1つが、製造業は米国経済における割合が大きくないので、製造業の景気指数が低くても、景気には大きく響かないことによる。
バブル拡大の推進力
GAFAの成長も縮小してきた。唯一拡大するアマゾンの拡大は、1万店もの店舗を廃業に追い込んで、結果的に米国経済の規模を縮小させているし、WeWorkのようにイノベーションになっていない企業をもてはやすしかない状態になっている。AIなども経済規模を縮小化する技術であり、拡大には寄与しない。
このため、米国の経済成長は、中央銀行がお札をばら撒いて、維持する構造になっている。GAFAを真似した世界企業が各地で起こり、徐々に平均的になってきている。
どちらにしても中央銀行バブルは、ここ当分は継続して、よりバブルを拡大していく。バブル崩壊時には、その分崩壊も大きくなることを覚悟するしかない。そして、米国のバブルはドルを通じて、世界に波及する。
ITバブルを作り、そのバブル崩壊を埋めるために、住宅バブルを作り、そのバブル崩壊を埋めるために、中央銀行バブルを作っている。しかし、中央銀行バブル崩壊を埋めることができるのかという疑問が出る。このため、バブル崩壊時は、米国経済覇権の終わりになると見ている。そこまで米国はいくしかない。
日銀の対応
日銀は、現在、ステルス・テパーリングを行っている。長期国債の買取額を減らして、長期金利をプラス圏に維持したいようである。短期金利は、マイナスのままにすることで、金融緩和をしていることになり、ETF買いで、株価を維持させている。
皮肉にも、ドイツ国債と違って、長期金利がプラス圏になり、日本国債を欧州勢が買い、魅力ある国債になっている。
欧米中央銀行が金融緩和に再度、戻ってきたことで、円高を心配したが、そうにはなっていない。欧米投資家が日本から投資を引き上げているので、円への実需がないことによる。日本への投資は、10月に緩和とは逆方向の消費税増税をすることで、日本の景気は下がると見ているからであり、特に投資家ジム・ロジャーズ氏が、日本衰退論を述べているので、海外投資は日本株には投資しない。
今まで、日本株を空売りして、日本衰退で儲けようとしたが、それも失敗して空売りの買戻しを行い、株価が上昇している。このため、日本からの完全撤退である。このため、日本国債を買うか、引き上げの円売りになるので円高になっていない。
今後も、円高にはならないように感じる。日本の投資家も日本株より、海外の株を買う方向であり、円売りになる。ベトナムやケニアなど経済成長が7%以上の国に投資した方が儲けが大きい。
しかし、この対応で、日本に魅力がなく、バブル拡大を抑えることになる。バブル崩壊の危険性も、その分抑えて、米国のようなバブル崩壊がなく、世界的なバブル崩壊時に、被害が小さくできることになる。
バブル崩壊時の韓国経済
バブル崩壊で一番心配なのが、韓国経済である。米国や世界は、バブル拡大期になるが、日本との経済的な関係を縮小したことで、現時点でも、韓国は経済苦境にある。
しかし、バブル崩壊時には、資金が世界的に不足して、新興国から資金が先進国に戻り、新興国通貨の暴落が予想できるが、現時点で暴落しているウォンは、真っ先に資金の引き上げ場所になる。
この状況で、資金不足を解消する通貨スワップ協定を日本や米国などと結んでいないことで、ウォン為替介入ができずに、一層の暴落になる。今度は、日本も米国も韓国を助けない。
一方、韓国財閥改革と日本との関係で、韓国企業は現時点でも韓国国内から世界的に工場を移している。日本からの戦略的な資材が輸入できないので、LGのように韓国産フッ化水素利用か日本や欧米などの海外に工場を移して、そこで生産することで資材を手に入れるしかない。
恐らく、LGの半導体生産での歩留まりは大きく棄損していることが想像できる。それほど簡単には、純粋なフッ化水素を作ることは、できないので当分赤字化する可能性がある。このため、韓国での生産量を減らす分、海外生産を増やすことになる。
ウォン暴落では、鉄鋼などの基礎資材の競争力は上がるが、農産物などの価格が上昇してハイパーインフレになる。韓国国民は、塗炭の苦しみを味わうことになる。文政権への批判も限界を超すことになる。
そこまで行くが、日本が再度支援をしても、後で、韓国では憎しみに代わるので、米国や中国などが中心になって援助し、日本は目立たないように支援するしかない。しかし、米中はバブル崩壊の影響を一番受けているので、韓国支援をできない可能性もある。その時での日本が目立った支援をしてはいけない。
IMFなどの国際機関中心の支援を行い、日本は目立ってはいけない。日本の行動は何をしても憎しみに変化するので、将来を見通して、何もしないことである。
さあ、どうなりますか?
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