たとえお値段が高くてもあの店だったら行く価値あり、とお客様に思ってもらえるのはなかなか難しいものですが、そんなハードルを軽々と超えてしまっているファミリーレストランがあります。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、地元民に愛され、親子3世代で来店する顧客を多く抱える和食ファミリーレストラン「ばんどう太郎」の戦略と戦術を分析しています。
価格が高くても来店する理由を創る
今号は、地元に愛されている和食レストランチェーンを分析します。
● 株式会社坂東太郎が展開している和食ファミリーレストラン「ばんどう太郎」
戦略ショートストーリー
3世代家族の方をターゲットに「効率よりも従業員満足・顧客満足を重視する文化」に支えられた「接客が丁寧」「お祝い事ができる」等の強みで差別化しています。
子どもから、おじいちゃん、おばあちゃんまで3世代が満足するメニュー・サービスを提供することで、顧客(特に地元の茨城県民)からの支持を得ています。
■分析のポイント
「ばんどう太郎」はファミリーレストランとしては高単価の商品が多く、実際に「客単価」も他社と比較すると高いようです。
- 売上=客数×客単価
で表されるように「客単価」は店舗にとって重要な要素です。
インバウンド集客などを図り、客数を増やすことに取り組んでいる企業もありますが、人口減少のトレンドのなかで、「客数」を増やすのは容易ではありません。かと言って、「客単価」を上げようとしても、いままでの価格帯から単純に価格を上げただけでは、客離れにもつながってしまいますので、各社はメニューに付加価値をつけるべく奮闘しているわけです。
今回は、そのような中で、「ばんどう太郎」が他社よりも「客単価」が高い理由について考えてみたいと思います。
まずあげられるのが、慶事プランの存在です。「祝い鯛付お食い初め膳」は4,200円と高単価ですし、その他の慶事プランも同様に高単価メニューとなっています。「ばんどう太郎」はファミリーレストランでありながら、お祝い事ができることを強みにしているからこそ、客単価アップにつながっていると言えます。
そして、3世代で来店できることも「客単価アップ」につながります。おじいちゃん、おばあちゃんは、孫と過ごす団らんの場にお金を惜しまないでしょうし、食事にこだわるシニアの方は、多いですからね。
3世代が満足できる料理を提供することはもちろん、お座敷には、子供向けと高齢の方向けの椅子が用意するなど3世代が安心して来店できる環境を整えることが「客単価アップ」につながる打ち手になっているということです。ちなみに、3世代で来店いただけると「客数アップ」にも貢献しますね。
また、店舗に女将さんがいること、真心を大切にしたサービスを受けられることも「客単価アップ」のポイントになります。丁寧な接客により顧客の満足度も高まるでしょうし、このことが他社よりも高くても支払う価値があると顧客が思うことにつながるためです。
上記のように「客単価」が高い理由を考えてみましたがこれらの理由は顧客にとって、価格が高くても来店する理由でもあるわけです。つまり、慶事プランや3世代での来店しやすさ、丁寧な接客が他社との差別化につながっているということです。
茨城県民御用達の「ばんどう太郎」が今後どのような存在のなっていくのか注目していきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):和食ファミリーレストラン
- 競合(お客様の選択肢):ファミリーレストラン など
- 状況:国内の外食(ファミリーレストラン)の市場規模は横ばいのようです。
■強み
1.接客が丁寧
- 女将さんがいる
- 子連れで入りやすい雰囲気
- お祝い事の仕方を教えてくれる
2.お祝い事ができる
- 「お食い初め」、「還暦のお祝い」などの慶事プランを用意
- 3世代で来店できる(安心できる)
3.料理のコスパが高い
- 本格的な和食を味わえる
- ぜいたくな気分が味わえる
- メニューが豊富(3世代が満足)
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
「効率よりも従業員満足・顧客満足を重視する文化、料理へのこだわり」
- 従業員の負担軽減及び料理の質を高めるために、他社よりも従業員数が多い(厨房人数は他社の倍)
- 茨城県の地元の農家・畜産業者と取引き
- 江戸時代初期から十八代伝わる「カクキュー」の味噌を使用。
- 厨房では手作りにこだわる
- 月に一度の従業員研修を実施
- 女将制度
- 責任者制度
- 顧客との関係性(茨城県民御用達)
- 真心を大切にしたサービス
上記のような、文化やこだわりなどが強みを支えています。
■顧客ターゲット
- 3世代家族の方
- お祝い事を検討している方
- 3世代で食事をしたい方
- 贅沢な気分を味わいたい方
◆戦術分析
■売り物、売り値
「和食」
- そば、うどん、寿司、丼、刺身、揚げ物、スイーツなど豊富なメニューを提供し、セットも充実。
→「そば」は、そばの実の中心部分の「一番粉」を贅沢に使用した逸品。「ごはん」は、炊き上がる分量を毎日精米しています。
<主なメニュー>
- 坂東みそ煮込みうどん:1,050円
→ここでしか味わえない1番人気のメニュー。「カクキュー」の蔵の中で足掛け3年も熟成させた特別仕込の八丁味噌を使用 - レディース御膳:1,690円
→いろいろな料理を少しづつ味わえる御膳。
<慶事メニュー>
- 祝い鯛付お食い初め膳:4,200円
- 祝い福来紅白一升餅と福来袋セット:4,500円
■売り方
- TVなど様々なメディアで紹介されています
- 飲食預金通帳というポイントカード
→食事代1,000円ごとにスタンプ1つ、スタンプ15個ごとに500円分の食事券と交換できます。合計105個に達すると2,000円分の金券がもらえます。 - 子ども向けのポイントカードもあり、誕生日前後1週間に店舗に行けば、定価1,400円のお誕生日セットが無料
■売り場
- 茨城を中心に隣接する県にも店舗を展開(ばんどう太郎は茨城県内に26店舗)
- お座敷には、子供向けと高齢の方向けの椅子が用意されています
※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
image by: MAG2 NEWS