ダイエットしている人がよくやっている運動といえば、ウォーキングやジョギング、ダンスエクササイズなどの有酸素運動。食事制限も行いながら、筋トレもプラスしてやっているという人が多いのではないでしょうか? でも、どうせダイエットをするなら、できるだけ無理なく、効果的に行いたいと誰もが思いますよね。メルマガ『届け!ボディメイクのプロ「桑原塾」からの熱きメッセージ』の著者・桑原弘樹さんによると、筋トレのタイミングによって脂肪燃焼効果にある変化が生じるそうです。では、どのように行うのが良いのでしょうか?
有酸素運動と筋トレの順序を変えれば脂肪燃焼率も変わる!?
Q. 有酸素運動をする場合、筋トレの前がいいのでしょうか? それとも後がいいのでしょうか? 色々と説が分かれているようで、悩んでいます。桑原さんは筋トレ後だというように発言していたと記憶しているのですが、何が異なるのでしょうか? (35歳、男性)
桑原塾長からの回答
この質問も最近増えてきたような気がします。これは何を目的としているかによって、少し変わるように思います。有酸素運動をするという場合、一般的には脂肪を燃焼させようという発想だと思うので、その場合は先にレジスタンストレーニング(筋トレ)を行い、後ろに有酸素をもってくる事をお勧めしています。
まず、レジスタンストレーニングによって成長ホルモンが分泌されやすくなること、加えて、アドレナリンがしっかりと分泌されること。これによって脂肪の分解がより容易に進んでいきます。また、その逆をやった場合、レジスタンストレーニング後の成長ホルモンの分泌が抑えられてしまうという報告もあります。
ただし、幾つかの条件も付けたうえでお勧めをしています。まず、有酸素運動として走ることはしないこと。少し強度の高めの早歩き程度の有酸素運動とします。ジムなどのトレッドミルを使う場合は、傾斜をつけたりするといいでしょう。
もう一つは、あまり長時間の有酸素運動をしないこと。厳格な決まりはありませんが、20~30分程度でとどめておくことをお勧めします。その理由は活性酸素などによる蓄積型の疲労が抜けにくくなるという点と、筋肉の分解が進んでしまうからです。
一方、先に有酸素運動をお勧めする場合の理由は、筋肉の分解の問題に着目をしているのだと思います。有酸素運動を後ろにしてしまうと、エネルギーがどんどんと失われていくためAMPKなどの酵素が活性化されて、筋タンパクの合成に関与するm-TORの活性が抑制されてしまう等の報告があります。つまり、筋肥大という点においては、後ろに有酸素運動をもってくるのは好ましくないということになります。
しかし、そもそも有酸素運動をするということは、脂肪の燃焼を第一義に考えているケースが多く、その場合筋肥大と脂肪の燃焼のどちらを優先させるかと言えば、脂肪の燃焼なのではないかと思うのです。まただからこそ、有酸素運動の時間もあまり長くしないような工夫をするのです。
更には、先に有酸素運動を行った場合、ウォームアップ程度であれば問題ないものの、一般的には疲労も溜まるでしょうから、筋トレの強度はどうしても落ちてしまいます。この点に関しては筋肥大という観点に照らし合わせても、あまり好ましくないのではないでしょうか。
トレーニングの原則にプライオリティの原則というのがあります。先に行ったトレーニングの効果がもっとも発揮されるというもので、重要なものから始めなさいという発想です。なるべくフレッシュな状態の時に、より高い強度で行う方が筋トレ効果が高いという、ある意味当たり前の原則とも言えます。こういった条件をトータル的に考えた際には、先に筋トレをしっかりとやって、その後に短めの有酸素運動を行うことをお勧めしているというわけです。
トレーニングに限った話ではありませんが、絶対にこちらというような白と黒の世界ではありません。現実は白よりのグレーだったり、黒よりのグレーだったりするわけで、それぞれに理由や根拠があります。その根拠のどの部分に着目するかによって、白派にも黒派にも変わってしまいます。
また、論文などはひとつの重要な裏付けではありますが、マウスなどの実験結果のものも多く存在します。特にm-TORの活性などはマウスを使ったものが多いので、ある意味において信憑性の高そうな仮説といった見方のほうがいい場合もあります。自分自身で色々と試しながら自分の体をひとつの実験材料として確認をしていくことも、ボディメイクの醍醐味ではないでしょうか。最も身近な反応とも言える筋肥大ですら、まだ100%の解明がされたわけではありません。
まずは、基本に忠実なトレーニングからスタートさせて、その後は自分なりの応用を色々と試しながら、まさに試行錯誤を繰り返していくことがトレーニングの楽しみでもあります。これはサプリメントにも言える事なので、トレーニングとサプリメントの組み合わせも含めて、幾つかの仮説を元に自分なりの応用を作ってみることをお勧めしたいと思います。
ちなみに、私が最近やっているのは、すべての部位の後に必ずチンニングを行うことです。元々、背中が弱いと認識して様々な方法を試してきましたが、これぞというまでの方法には辿り着いていません。そこで、少しトレーニングのセオリーからは外れる側面はありますが、ひたすらトレーニング頻度を高めてみたらどうかという発想でした。ある人が何気なくいっていた、「結局、脚が太い人は脚トレの頻度が高いんだよな」の一言で始めることにしたのです。チンニングはトレーニングギア無しでも出来ますし、アシストチンなどのマシンがなくてもパワーラックがあれば出来ますから、毎回実施するにはうってつけでした。それと、やればやるだけ強くなっていくという不思議な種目でもあり、自重で行うから怪我のリスクも少ないトレーニングです。
どれだけインプルーブ出来ているかはさておき、少なくとも以前よりは進化しているのではないか、とたまにジムのロッカールームで鏡に向かった際に、後ろの鏡に映った自分の背中を見て思ったりするのでした。
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