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あらゆる場合を想定せよ。断水時にマンション設備の何が使えるのか

台風によるタワーマンションの断水報道をきっかけとして、自宅マンションの給水方式について再確認の必要性を感じられた方も多いのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、給水方式で異なる断水対処方法を紹介するとともに、注意すべき点についても記しています。

マンションの非常用給水栓には2種類がある

こんにちは!廣田信子です。

昨年(2018年)、関西地区を直撃した台風21号では停電が発生しマンションでも停電に伴う断水が多数発生しました。停電でポンプが動かないことによって受水槽から各住戸に水を送ることができないための断水です。

これを踏まえ、大阪市は、「受水槽方式」の建物において、停電時等に建物全体が断水とならないように、非常用給水栓の直圧部への設置を認めることとした…とニュースになりました。

同じく、昨年発生した北海道胆振東部地震ではブラックアウトによる停電が広範囲に及び、マンションも大きく影響を受けました。やはり、多くのマンションで、停電で水が出ない体験をしましたから、先日セミナーで伺った北海道でも、停電時の水の確保が話題になっていました。

今さらですが…マンションの給水方式には、「受水槽方式」「直結増圧方式」「直結直圧方式」があります。

受水槽方式」には、地下や1階にある受水槽からポンプで直接各戸に送る場合と、一旦、屋上の高置水槽まで水を上げて落下圧力で各戸に送る方式がありますが、どちらも停電でポンプ動かなくなったら水を送ることができなくなります

直結増圧方式」は、受水槽はありませんが、水道本管からの水の水圧を上げるためにポンプを使うので、やはり、停電の影響を受けます(3階ぐらいまでは、増圧がなくてもあがります)。

直結直圧方式」は、水道本管の圧力で、各住戸まで直接水を送る方式ですから、停電でも水が各住戸に届きます

大阪市が発表したのは、「受水槽方式」の建物において、本管から受水槽への配管の途中に、非常用給水栓を設置することを認めるというものです。改めて認めるといるということは、これまでは、制限があったということですね。水圧、衛生管理の問題や使用料金の徴収の問題があったのでしょう。

大坂市が提示した条件は下記です。

では、これまでは、この非常用給水栓が設けられなかったかというとそうではなく、「受水槽方式」、「直結増圧方式」でも、1階に、受水槽やポンプに行く配管とは別に、直結で非常用水栓が設けられていて停電になってもそこだけは水が出るようになっているマンションもあります。普段は散水栓として使っているケースも。普段から、基本料金+使用料を払っているということです。

北海道では、停電になっても使える水栓がマンションにあることをマンション住民が知らずにそれを活かせなかったという話を聞きました。反省点ですね。

また、これと紛らわしいのですが、災害時に受水槽内の水道水を有効活用できるように、受水槽に非常用給水栓を設置するのを条件付きで認める自治体が出てきました。受水槽に直接水栓をつけて、そこから、受水槽内の水を取り出し飲料水等に使えるようにするものです。これは、実は、すでに実施しているマンションもあると思います。

私の浦安市でも、緊急遮断弁で災害時には受水槽内の水を各住戸に送るのをストップし、受水槽に取り付けた水栓から水を配給するという仕組みをつくっています。これも、正式には認められない等の話が出ていましたが、やっているマンションは多いと思います。

自治体によって対応がかなり違うようですが、成田市(ネットで一番に出ましたので)の場合は、成田市から水が供給されなくなった場合に限り利用できる受水槽に取り付けた水栓を下記の条件下で認めるとしています。

さて…大阪市の話は、停電でポンプがとまったために水が各戸に送れなくなった場合の対策。成田市の話は、そもそも何らかの事情でマンションへの水の供給がされなくなった場合の対策。どうも、関係者と話をしているとき、この2つがごっちゃになっているように感じたので、ちょっと書いておきたいと思いました。

それぞれ自身の体験が一番強烈ですから、停電で水が出ない経験をしたマンションでは、マンションまでは水が来ていることを前提に、ポンプが動かなくても水が確保できるように…と考えます。でも、私たちが東日本大震災で体験したように、公共の水道管がやられてマンションまでの水が来ないという経験をしていると、受水槽の水を確保するのはもちろん、とにかく飲料水は自宅で各自が備蓄しなくちゃという思いになります。

改めて…ご自身の自治体の対応、マンションの給水方式、非常用水栓の有無等を確認した上で、あらゆる場合を想定していただきたいと思いました。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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