店主として思いつく対策は実行しいるのに、売上げが伸びない…。そんなときには「普段と違った視点で店舗や従業員を再確認」してみてはいかがでしょうか。経営コンサルタントとして活躍中の梅本泰則さんは今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』で、店主や従業員が抱える業務上の疑問や不満などを可視化する「3つのアイデア」を紹介しています。
強み弱み発見会議
私はコンサル先のスポーツ店さんには「お店の強み弱み発見会議」をしていただくように提案しています。社員の人たちが集まって、お店の強みと弱みを出し合うという会議です。
会議の進め方は先方にお任せしていますが、方法はお伝えしてあります。全員に白紙の用紙を配り、それぞれ、まずお店の「強み」を箇条書きで出していきます。一人につき30個から50個です。
それが終わったら、次はお店の「弱み」です。これも各30個から50個書き出してもらいます。
社員が10人のお店ならば、強みも弱みもそれぞれ300個から500個が出ることになります。この会議は結構ハードですが、社員の皆さんがお店の強みや弱みを真剣に考える機会になりますので、とても意味のある時間です。
各自が書き出した「強み」「弱み」は、内容をグループ分けします。例えば、接客、スタッフ、運営、組織、商品力、サービス、価格、経営陣、情報発信、店舗、歴史、立地、地域支援、福利厚生、外商、ネットなどといった項目です。
その後、グループ分けした強み弱みの内容を皆さんに知らせます。ここで、「そうだ、こんな強みもあった!」と気がつく人もいます。「弱みは、自分たちの姿勢にも問題がある」と反省する人もいます。経営者にとっても、社員の考え方がよく分かるきっかけにもなりますので、今後の運営に大きな参考となるのです。
そして、この「強み・弱み発見会議」を行うと、皆さんのやるべきことがはっきりとします。お店の方向性も共有できますので、ちょっと大変ですが、実に効果的な会議です。
日報を書く
町の小さなスポーツ店さんで、従業員が日報を書いているところは少ないです。そのお店もそうでした。どうも、社員の皆さんに覇気が感じられません。店主とのコミュニケーションも、それほどうまくいっていない様子です。
そこで、このお店の販売スタッフの皆さんに「日報」を書いていただくことにしました。初めてのことですので、どんな書式が良いのか、どんな内容を書いたらいいのか分かりません。
私は、一人A4用紙1枚で1日の報告を書いてもらうようにお願いしました。内容は、まずその日に行った仕事を午前、午後、夕方以降に分けて箇条書きにしてもらいます。その下に、仕事を通じて気付いたことを、「商品」「売場」「お客様」「その他」に分けて、これも箇条書きです。
これだけですので、慣れればそんなにむつかしい作業ではありません。ところが、日報など書いたことのない人ばかりですから、皆さん戸惑います。それでも、必ず毎日書いてもらうことを徹底しました。
提出された日報は、全部1冊のファイルにして事務所に置いておきます。従業員の誰もが読むことが出来るのが目的です。提出された日報には、毎日店主が赤ペンでコメントを書くことも義務付けていただきました。すると、だんだん皆さんどんな内容を書けばいいのか、他の人の日報を参考にするようになります。店主のコメントを見ながら、仕事のポイントも押さえていくようになりました。朝礼では、ときどき日報に書かれた内容が話題になります。
やがて、従業員の皆さんはメーカーさん、問屋さん、お客様と話をするとき、日報に書くことを意識するようになっていくのです。他のスタッフの日報に書いてあったことも情報として会話に差し込まれます。
半年を過ぎたころ、日報はお店にとってはなくてはならないものになっていきました。お店の中の風通しが良くなったようです。ですから、今でも「日報」は多くのお店に提案をしています。
1平方メートルの掃除
近頃は、スポーツ店さんの売場も綺麗に商品陳列がされて、掃除も行き届いているお店が多くなりました。大型店の売場の影響でしょうか。とはいえ、まだまだ売場の清掃が不十分なお店があります。何十年も同じ環境で商売を続けていると、それに慣れてしまうのでしょう。
本当ならば、数年に一度は売場の改装をして欲しいところですが、必ずしもそうはいきません。費用的に無理なお店もあります。そこで私は、そんなお店には売場の整理整頓だけでなく、掃除をしっかりしていただくようにお願いをしています。
ただし、掃除には一つのルールがあります。それは、開店前の30分間、毎日一人が自分の持ち場を1平方メートルだけ徹底的に綺麗に掃除をする、というものです。それ以上の範囲を掃除してはいけません。次の日は隣の1平方メートルを掃除。これを続けるだけで、売場は見違えるように綺麗になります。しかも、従業員の皆さんの意識が変わっていくのです。
このお店が、今まで掃除をしていなかったのではありません。自分たちはきちんと掃除をしていたつもりですが、1平方メートルの掃除をし始めると、いかに大ざっぱにしか行っていなかったかということに気が付きます。
まず、床の汚れです。拭けば拭くほど汚れが落ちていきます。次に気になるのが、商品陳列棚やハンガーの汚れです。徹底的に磨きます。プライスカードがついていなかったり、POPが古くなっていることにも気がつくようになります。
1ヶ月も続ければ、自分の持ち場の掃除がひと通り終わるでしょう。その頃には、従業員の皆さんに変化が現れてきました。例えば、少しでも床にゴミが落ちていると、すぐに拾うようになります。商品が歪んで陳列されていると、すぐに直します。汚れていたり、整理整頓がされていないと、気持ちが悪いのです。
売場だけでなく、トイレやお店の周りも熱心に掃除をするようになりました。1平方メートルの掃除を始めてから、お客様は以前より気持ちが良さそうです。売場の掃除が行き届くと、売上に良い影響が出るのは間違いありません。そんな習慣をつけていただくこともコンサルタントの仕事です。
■今日のツボ■
- 強み弱み発見会議で、お店の方向性と課題を明確にする
- 全員が日報を書くことで、情報の共有と意識づけができる
- 1平方メートルの掃除を徹底的すると、従業員の意識が変わる
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