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桜を見る会に興味はあるか。「勧誘」を受けた人物が明かす違和感

「桜を見る会」の招待者推薦について、自身が関与していたことを安倍首相と夫人のそれぞれが認めるなど、その数々の「真実」が明らかになってきています。そんな催しにかつて「勧誘」された経験があるというのは、毎日新聞や共同通信にて記者経験のあるジャーナリストの引地達也さん。引地さんは自身のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』で、その際に抱いた偽らざる感情を記すとともに、首相への追及の手を緩ぬ野党に対して批判的なテレビコメンテーターの姿勢を「鈍感」と記しています。

「桜を見る会」から考える権力の扱い方に真摯に向き合う

「桜を見る会」の在り方が国会で取り上げられ、それが社会の問題として大きく取りざたされてからこうして追随するように書くことになってしまうのに気が引けてしまうのだが、ここ数年、「桜を見る会」の様子をニュースで見るのが不愉快だった。

それは特に安倍晋三首相という時の為政者がその輪の中心にいることによるものであるのは間違いないのだが、その不愉快の正体をつかむことをせずに、ただ心の居心地が悪いと、目をそらすようにしていたことを反省している。

時の政権を担うだけの人間が我が物顔で季節の風物詩の中に登場し、芸能人を媒介にした庶民ぶりを演出するのは、権力を使った庶民を掌握する術の1つだから、安倍首相に限らず、「桜」を利用してきた歴代の政治家も含め、手法としては姑息な手段のようにも思える。

春の訪れを桜で感じる私たちのメンタリティに、桜を愛でることはもう少し身近で厳かであってほしいと願うのは、私の個人的な願いだろうか。

招待を受けたであろう方々と時の権力者との見せかけの交流がテレビ画面に出てくるのは、笑いが仕組まれたバラエティ番組と同様に仕組まれた演出の中で、知らずに予算が膨らんでいったのであろう。

時の権力者と写真におさまりたい人の厚顔無恥さと、それを「風物詩」として報じるメディアの浅はかさ

日本国の象徴で政治に不関与の天皇の園遊会であれば、その価値を感じ、恐縮しつつも感謝し出席する人がいるのは理解できるが、桜を見る会は、単なる為政者からの恣意的な評価による招待であることは明らかで、特にこの数年、それが税金で賄われ、予算額をオーバーし続けていることを指摘する声が上がっている中で、疑惑への説明責任を果たしてこなかった現政権からの評価=招待はあまり喜べたものではない。

これを「皮肉れた感情」ともとれてしまうから、桜を見る会のニュースは、自分自身の不寛容さも突き付けられてしまうのが嫌だった。

テレビ報道などでは、桜を前に多くの方が楽しんでいる様子が批判なしに展開されてきていたから、そこに一人こぶし振り上げて反対を叫ぶほどの度胸も据わっておらず、今回の問題化で来年はそのニュースに遭遇することがないだけでもほっとしている。

「桜を見る会」の実態が報道されるにつれ、思い出したことがある。それは数年前、とある保守系の団体とつながりのある、との説明をしていた初対面の方が「桜を見る会の出席に興味ありますか?」と聞いてきたのである。

その時は、その人を私に引き合わせた旧知の知人が「引地さんはおそらく、そういうの好きじゃないよ」と言って、その先の話にはならなかったが、こんな会話は、時の権力に近そうな方では普通に行われ、それに「興味あります」と言って関係構築するケースもあるのだろうと思う。

それは時の権力者を頂点に桜を見る会をちらつかせた追従の強制のようで、やはり気味が悪い。

それにしても国会で共産党を中心にした野党が追及をしはじめたところから、テレのでは一部のコメンテーターは「まだまだ国会では審議する必要なことがある」「たかだか5,000万円」との表現で追及する野党に批判的な声も聞かれる。たかだか5,000万円、という発言には不思議な感覚を覚えてしまう。

これは権力の使い方、政府として国を治める際に、気を付けるべき権力の扱い方の問題である。

予算の執行に関する議論は数字としてわかりやすいから、記号化しているのに過ぎず、本質は桜を愛でる名目で自分の周辺や地元に権力を示し続けてしまい、結果的に国における最大公約数の幸福に向けた取組みの前提が壊れてしまうという話である。

社会の公平性と平等の精神を純粋に追い求めようとする中で、必要な議論であると思う。コメンテーターは権力の使い方に対してこれほど鈍感であることにメディアも敏感になってほしい

私たちの社会にあるべき権力の使い方の公正さについて、真摯にとらえ、それを言葉にしなければいけないと思う。

image by: 首相官邸

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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